説教は終わり、僕達はブリッジへと向かった。

其処に浮かぶスクリーンには『廃都』が映し出されていた。

「お主が少し歩きまわっている間に状況が変わったぞ。使い魔からの報告だと攻め込んだ神聖王国軍は半壊状態。最早、軍としての形を成していないとの事じゃ」

ロゼティータ姉様がスクリーンを見乍ら説明してくれた。

「じゃあ、撤退するのかな?」

軍としての役割を持っていないのだ。撤退するだろうなと思ったが。

「いや、どうやら撤退する素振りはないようじゃ」

「えっ⁉」

そんな馬鹿な事があるのだろうか?

「陣地に潜入した者の報告だと、司令官が増援を要請して、増援が来るまで待機するそうじゃ」

「援軍を要請した所で勝てるとは思えないけどね」

あんな魔法を使うのなら、援軍を要請しても被害が増すだけだろうに。

と僕が思っている事が分かったのか、イザドラ姉上が僕の頭を撫でる。

「司令官以下の将官達はどうやら撤退を進言しているようですが、司令官が却下している様ですね」

「ああ、成程。どうやら、司令官は功績が欲しいんだね」

「それに付き合わされる部下達って、可哀そうね~」

「哀れだな」

「無能が上に居ると大変だね」

僕の意見に同意する様に他の姉達も他人事の様に言う。

「でも、困ったな。これじゃあ何時まで経っても『廃都』に入る事が出来ないという事になるな」

困ったな。ハノヴァンザ王国の方もその内に片が付くだろうな。そうなったら姉上達の事だから、問答無用とばかりに王国に帰るだろうな。

そんな事になれば、此処まで来た苦労が水の泡だ。

さて、どうしたものか。

「面倒ですから、このままその神聖王国軍と『廃都』を攻撃しますか?」

「いやいや、姉上。それは流石に駄目だから」

何と言う過激な事を言うんだ。この人は、しかも面倒だからって。

「むぅ。あの者、セリーヌみたいな事を言うな。あれも、普段は猫を被っているが、時々わたしでもしない過激な事をしたからな」

王女様? 貴方は何を言っているのですか?

姉上がセリーヌ王女の転生なんて、そんな事ないだろう。多分。

転生した自分が言うのもなんだけど。

「馬鹿者。それでは死人を増やすだけであろうが。そんな事よりも、もっと簡単な方法があるであろうに」

「おお、流石は姉様だ。それで、その方法とは?」

「神聖王国軍の司令官を討ち取り、撤退させる。しかる後に『廃都』に向かう。これが一番簡単な方法じゃ」

「何処がっ⁉ むしろ、混乱が増して余計に面倒になるじゃん」

この人、こんなに過激だったかな? もっと穏健な考えを持っていると思ったんだけど。

「……あの、だったら良い方法がある」

ヘルミーネ姉さんが手を挙げる。

「ヘル姉が良い方法。これは、嵐がくるね」

「それも血の嵐ね」

ミリア姉ちゃんとフェル姉があまり発言しないヘルミーネ姉さんを茶化しだした。

「はい。そこ茶化さない。それで、ヘルミーネ姉さんっはどんな方法を使うの?」

「リウイのペットを使う」

「「「ペット?」」」

それってバォバロンの事? 何をするつもりなのやら。