●ゴルドウルフ・スラムドッグ

世界を支配する勇者一族『ゴージャスティス』を滅ぼすため、密かに、時には大胆に活動をしている40代のオッサン。

聖女プリムラの勧めによって立ち上げた冒険者たちの店、『スラムドッグマート』を軸に、勇者たちに対抗している。

導勇者(どうゆうしゃ)ダイヤモンドリッチネルを失墜させ、ハールバリー小国のアントレアの街を征服した同店は、さらに隣接する地域へと出店を開始する。

目標は、スラムドッグマートを全域に展開し、勇者たちの店である『ゴージャスマート』を国内から駆逐することあった。

そこに新たなる敵となる、『皆殺し(ジェノサイド)一家』が立ち塞がる。

ハールバリー小国のゴージャスマートの本部長であり、家長のジェノサイドダディ。

一家の三男であり、ルタンベスタ領の支部長であるジェノサイドナックル。

一家の次男であり、トルクルム領の支部長であるジェノサイドファング。

一家の長男である、ハールバリー領の支部長であるのジェノサイドロアー。

ゴルドウルフは、ジェノサイドダディのかつての部下であり、さんざんパワハラを受けてきた。

因縁の対決が、今まさに始まろうとしていたのだ。

ゴルドウルフはまず、スラムドッグマートがあるルタンベスタ領への侵攻を開始する。

その地域の支部長であるジェノサイドナックルは、父親ゆずりの豪腕で部下である店員たちに暴行を加え、力によってスラムドッグマートに対抗する。

しかし商売において、腕力は何の意味も持たなかった。

売上を落としていく三男は、スラムドッグマート全店に放火を行なう。

それは三男の父親であるジェノサイドダディからの入れ知恵だったのだが、かつてダディの部下であったゴルドウルフは、そのやり方を見越して対策を打っていた。

『耐火の布』で商品を守り、『炎の精霊に愛された武器』として盛大に売り出す。

さらには焼けてしまって店舗のかわりにテントでの営業を行ない、顧客の心をガッチリと掴んだ。

スラムドッグマートが全焼したにもかかわらず、売上が回復しないジェノサイドナックルは焦った。

そこに、ひとりの謎の紳士がナックルの元を訪れる。

紳士が売りつけてきたのは、『耐火の布』と偽った『加熱の布』。

ジェノサイドナックルはスラムドッグマートと同じように、ゴージャスマートの商品をその布に包んで、今後は自分の店に火を放ってしまう。

耐火ではなくさらに火勢を強めてしまう『加熱の布』だったので商品は燃え残らず、燃え尽きてしまう。

店と商品は全滅、しかも放火していた店員たちは憲兵に捕まってしまい、店員たちはジェノサイドナックルの指示だと白状する。

だが勇者は決定的な証拠がなければ逮捕はされない。

ジェノサイドナックルはひたすらシラを切り通し、難を逃れる。

しかしいずれにせよゴージャスマートの復旧は困難となり、ルタンベスタ領の覇権はゴルドウルフによって奪われてしまった。

ゴルドウルフは次に、トルクルム領にスラムドッグマートを展開する。

その地域の支部長であるジェノサイドファングは、不動産屋に根回しし、スラムドッグマートには店舗を貸さないように指示する。

店舗が借りられなければ、出店はできない。

しかしオッサンはすでにある冒険者向けの個人商店と交渉し、フランチャイズという形で乗り込んできたのだ。

いちど領内にスラムドッグマートの看板が掲げられた以上、不動産屋への制限も意味はない。

トルクルムに乗り込まれてしまった次男は、次なる対抗策として『クレーム作戦』を展開する。

これはスラムドッグマートの商品を使ってケガをしたなどの、ありもしないクレームをつけて評判を落とすというやり方である。

ゴルドウルフは店に訪れるクレーマーたちに毅然と対応していたのだが、彼らはしつこかった。

そしてついに、クレーマーたちはトルクルムにあるホーンマックの街に集結する。

この領内でいちばん売上のあるスラムドッグマートに、集団クレームを付け、評判を一気に落とす作戦であった。

作戦にはジェノサイドファング自らも『ライオンマスク』に変装して参戦、数の力でゴルドウルフを圧倒する。

しかし密かに呼び寄せられたリインカーネーションによって、クレーム騒動は鎮火させられてしまう。

仲間にも裏切られたジェノサイドファングは遁走、しかし捕まってリンチにあう。

あと少しで正体がバレてしまうところで、ゴルドウルフの眷獣である『空の骸』によって助けられた。

ジェノサイドファングはそれでもあきらめない。

クレーム騒動の首謀者として憲兵に追われている身でありながらも、最後の手として、変装して骨董品詐欺をゴルドウルフに持ちかける。

だがこれすらもゴルドウルフはお見通しであった。

ジェノサイドファングを逆詐欺にかけ、価値ある骨董武器と多額の金と引き換えに、パインパックの絵を売り渡す。

有名画家の絵だと思っていたジェノサイドファングは、ただの子供の落書きを掴まされたと怒り狂う。

油絵を別荘の暖炉にくべ、発火させてしまい、大やけどを負ってしまった。

満身創痍のジェノサイドファングは、父親であるジェノサイドダディに泣きつく。

そこでダディは、ジェノサイドファングのクレーム騒動を逆利用し、憲兵局を訴えることを思いつく。

憲兵局の不祥事として憲兵局大臣を失墜させ、かわりに懇意としている衛兵局大臣であるポップコーンチェイサーを筆頭大臣に据えようとしていたのだ。

ポップコーンチェイサーが筆頭大臣になれば、難癖をつけてスラムドッグマートを潰すことができる。

しかし訴え出た法廷で、意外な証拠を突きつけられる。

血のついたマスクと証拠の真写。憲兵局側はマスクと現場の血痕を照合すればクレーム騒動の首謀者がはっきりすると、ジェノサイドファングを逆告訴してきたのだ。

ジェノサイドダディは勇者の人権問題にすりかえ、血液検査を断固拒否。

しかしトルクルムでのゴージャスマートの評判は最悪になり、結局、スラムドッグマートに覇権を奪われてしまった。

ハールバリー小国のふたつの領地を制覇したスラムドッグマート。

いよいよ最後の、王都ハールバリー領に侵攻を開始する。

最後の相手は、皆殺し一家いちばんのインテリジェンス、ジェノサイドロアー。

長男はスラムドッグマートを出店させたあと、懇意であった衛兵局大臣の力を利用して営業許可を取り消すという手に出る。

いくら店舗があっても、営業許可が無ければ意味はない。

このピンチにゴルドウルフは、営業許可のいらない屋台での商売を開始する。

そして移動販売では前代未聞の納税を行ない、筆頭大臣の注意を引く。

大臣たちのトップである筆頭大臣に問い詰められ、衛兵局大臣であるポップコーンチェイサーはスラムドッグマートの営業停止を取り消さざるを得なくなってしまう。

ポップコーンチェイサーはゴージャスマートから売上の一部を上納金として受け取って、ジェノサイド一家に協力していた。

しかし大臣としての立場が悪くなったうえに、最近は上納金も下がってきたので不機嫌であった。

それをゴルドウルフに利用され、ポップコーンチェイサーはゴージャスマートに商品を卸すようになる。

送りつけられてくる商品はどれも不人気商品であったので、ジェノサイドロアーは父親であるジェノサイドダディに『伝説の販売員』としての復帰を要請する。

最初は難色を示していたダディであったが、息子に説得され、かつて『伝説の販売員』としての地位を確立した、『最果て支店』での現役復帰を果たす。

不良在庫を父親に処理させている間に、ジェノサイドロアーは女性向けの装備ブランドを立ち上げる。

そのイメージキャラクターとして、人気アイドルグループである『ライクボーイズ』のリーダーである『ライドボーイ・ゼピュロス』に依頼。

複数買いを促す商法で、スラムドッグマートを圧倒していった。

トドメを刺すべく、スラムドッグマートの開催した『不死王の国』探索ツアーに合わせ、ゴージャスマートもゼピュロスと同行できるツアーを開催。

ツアーの場所どころか開催日も一緒にし、スラムドッグマートを陥れる策を展開する。

ツアーは万全の体制であったものの、仕掛けはすべて不発。

逆に追い詰められてしまったゼピュロスは、スケコマシとして、殺人鬼として……そしてヘタレとしての本性を暴かれていく。

最後は打ち上げ花火として、ヘタレっぷりを国じゅうに晒し、王都でのゴージャスマートの評判を最悪のものとしてしまった。

ツアーの大失敗のあと、ジェノサイドロアーはゴージャスマート全店の閉店を発表。

最後の秘策に打って出る。

それはゴルドウルフを、ジェノサイドダディ殺しの犯人に仕立て上げることであった。

ジェノサイドロアーは『最果て支店』にいるダディに痺れ薬入りのポーションを飲ませ、火を放とうとする。

しかしゴルドウルフにそそのかされたジェノサイドナックルが、山に火を放っていた。

ジェノサイドダディは命からがら逃げ出したものの、屋敷の地下でジェノサイドファングに命を狙われる。

結局……。

ジェノサイド一家は決定的な現場を押さえられて逮捕。

『伝説の販売員』は虚像であったこともバレてしまい、ハールバリー小国のゴージャスマートの評判は地に堕ちてしまった。

『伝説の販売員』の地位を取り戻したゴルドウルフに、もはや敵はいない。

スラムドッグマートはハールバリー小国において、その地位を確固たるものとしたのだ。

●ルク

煉獄でゴルドウルフが従えた『人ならざる者』。

絶大なる力を、主であるゴルドウルフに貸し与え、手助けする少女。

今章では目立った活躍はないが、『不死王の国』が罠で閉ざされた際、密かに穴を空けて、ゴルドウルフ一行の脱出を手助けした。

ちなみに次章ではプルとともに活躍予定なので、お楽しみに!

●プル

ルクと同じく煉獄で従えた『人ならざる者』。

性質は異なるが、ルクと比肩するほどの力を持っており、ゴルドウルフに協力している。

今章では目立った活躍はない。

グラスパリーンとはいつも腹を空かせている者どうしとして、気が合うようで、食べ物を売る露店の匂いでご飯が食べられるかどうか試したりしている。

●錆びた風

ゴルドウルフが『煉獄』で従えた、『魔界の冥馬(めいば)』と呼ばれる芦毛の馬。

子供が10人乗っても大丈夫なほどの巨躯と、疾風のような速さと砦のような強健さを誇る。

ホーリードール家では「サビちゃん」と呼ばれ親しまれている。

今章では屋台を引いたり、『不死王の国』の観客に弁当を届けるなど、雑用をこなす役割として活躍している。

●雲の骸

ゴルドウルフが『煉獄』で従えた、『死を運ぶ冥鳥(めんどり)』と呼ばれるフクロウ。

魔界では悪魔王(サタン)の魂を運べるのは彼のみ、といわれるほどの偉大なる魔物。

ホーリードール家では「ムクちゃん」と呼ばれ親しまれている。

主に手紙の運び役として大活躍。

憲兵局にいるガンハウンドにタレコミの手紙を届けるのはいつも彼の役割である。

その他にもスラムドッグマートが火事になった時には緊急連絡役を担ったりと、その機動力でゴルドウルフ陣営には欠かせない存在となりつつある。

●バルルミンテ

ゴルドウルフが『煉獄』で従えた、不死王リッチと呼ばれる最上級のアンデッドモンスター。

今章では『不死王の国』ツアーのもうひとりのMCとして大活躍。

ライドボーイ・ゼピュロスに容赦ない裁きを下し、勇者を発狂寸前にまで追い詰めた。

--------------------ホーリードール家の人々

●プリムラ・ホーリードール

アントレアの街にある聖女の名門、『ホーリードール家』の次女。

今章ではスラムドッグマートの決裁権限も与えられ、実質同店のナンバー2となった。

しかし偉ぶることは一切なく、むしろ店員の中では誰よりも働き、接客や雑用も積極的にこなしている。

ゴルドウルフへの密かな思いを胸に秘めているが、最近は妄想が暴走し、歯止めがかからなくなっている。

●リインカーネーション・ホーリードール

ホーリードール家の長女にして家長。

聖女一家の家長は『マザー』と呼ばれる決まりがあるので、皆はマザーと呼んでいる。

今章での活躍はやはり、クレーム騒動を鎮火させた『ふきふき無双』であろう。

悪質なクレーマーでも、彼女にかかれば一気に浄化されてしまうのだ。

そして彼女はついに、ゴルドウルフのハーレム設立を決意する。

この世界でハーレムというのは勇者以外には許されていないが、不羈奔放な彼女にそんなことは関係ない。

しかも所属する側の女性のほうから設立を促されるのは、この世界でも類を見ないことである。

●パインパック・ホーリードール

ホーリードール家の三女。一家のマスコット的存在。

今章では未来の芸術家としての才能を開花させ、50億¥(エンダー)もの多大なる利益をスラムドッグマートにもたらした。