Reborn Ishl and the Magic Fixture of God
Melilla and Isaac
イシュルは家に帰ってくると、母屋の裏にある井戸で上半身を裸になり、首に巻いていた布を濡らし、からだを拭った。
そして裏から家の中に入り、釣り竿と籠をしまい、服を着替えた。
血痕はついてないと思うが。
練習ではいつもからだの周りに気圧を高めたり、風を流した空気の層をつくったりして自身に被害が及ばないようにしていたが、それが狼を攻撃した時は完全にはできなかった。
何食わぬ顔で裏から外に出て母屋の横に回ると、ルセルがひとり地面にしゃがんで、読み書きの練習をしていた。木の枝で地面に文字らしきものを書いている。
「ルセル、やってるな。えらいえらい」
少し無理をしてでも、明るい声を出した。
「おかえり。兄ちゃん」
ルセルが顔を上げた。彼の表情も明るい。そしてその明るさは本物だ。勉強がうまくいっているのだろう。
弟の素直な笑顔には癒される。
「じゃあ、『ぼくの名前はルセルです。』を書いてみな」
「うん」
ルセルは元気よく返事をすると、先を尖らした木の枝を地面に当てて、勢いよく書きはじめた。
「イシュル」
ふたりで地面に座り込み勉強を続けていると、女の声がした。顔を向けると低い視線の先にはサンダルに幾分くすんだ茶色とえんじ色のスカート、小さな女の子と少し大きい女の子が二人。
顔を上げるとメリリャとメリリャの妹、エメリ、だったか——が並んで立っていた。
エメリは五歳くらい、メリリャほどではないがなかなか可愛い顔をにこにこさせている。対してメリリャは何か緊張してる感じだ。
「やあ」
地面から立ってふたりに笑いかける。
メリリヤが、しかも妹を連れて家に来るなんて。めずらしいな。
村では男女がいっしょに遊ぶのはせいぜい五、六歳くらいまでだ。その後は男の子どうし、女の子どうしで遊ぶようになる。家の手伝いも畑仕事はともかく、その他のことは男女別々になる。男は農具の手入れや薪の管理、たまに狩りや木の切り出し、鍛冶をやる家ならもちろん鍛冶仕事を、女は料理や裁縫、織機のある家なら機織りなどである。
家の近いメリリヤも、畑仕事でよく顔を会わすものの、言葉をかわすことはあまりなくなっていた。ただ、草むしりや水やりなど作業をしている間も遠くから近くから、彼女からの視線を感じることはたびたびあった。自意識過剰、だっただけかもしれないが。
「どうしたの」
メリリャに語りかけると彼女は少し顔を俯かせて恥ずかしそうに答えた。
「あのね、エメリとわたしに、字の読み書きと数の計算の仕方を教えて欲しいの」
「エメリもだけど、わたしも自分の名前くらいしかわからないから、おばあちゃんに、イシュルに教えてもらえって」
「ああ、そう…」
それは良いんだが…頬をそめて俯き、目を合わせてこない彼女を見てると、こちらも少しどぎまぎしてしまい、あいまいな返事になってしまう。
「うん、いいよ。ぼく、もうけっこう読み書きできるから、教えてあげる」
ふたりで変な感じになっていると、横からルセルが言ってきた。
元気いっぱい、なんの屈託もない明るい口調で。
「でね、これが『私』って意味で、これが『です』って意味」
ルセルが主にエメリに教えている。
最初にアルファベットに相当する二十八の文字を書いてみせ、今は主語と述語など文章の基本的な構成を教えはじめたところだ。
メリリャはすぐ横にかがんで、ルセルの話を聞いている。
俯き加減の横顔に、長い睫毛がもう大人の女のような美しさを醸し出している。
女の子も十二歳になれば、男より成長が早い分、どきっとするような大人の女の色気を時々見せるようになるのだ…などとはとても言えないだろう、ふつうの女の子なら。
だが小さな頃からとびきり可愛かったメリリャは、そろそろ年頃になって、早くも可愛いだけでない、大人の女としての美しさもその面に表わすようになっていた。
そして、彼女は小さな頃からの幼なじみで、自分に好意を寄せてきている。
こちらの視線に気づいたのか、彼女が顔を向けてきた。にっこり笑いかけてくる。
「これからも時々、来ていい? 今日だけじゃ、覚えきれないし」
「ああ。いいよ」
こちらも笑顔で頷いてみせる。
だがしかし、彼女にはまだ言えないことがある。
今年の収穫が終わる秋には、いよいよ村を出ていこうかと考えている。両親に打ち明ける前に、ベルシュ家やポーロさんあたりにそろそろ根回しを始めようかと考えていたところだ。
彼女らに勉強を教えられる時間もそんなに長くはない。
いや、メリリャが自分にどれほどの好意を抱いてくれているのかわからないが、その彼女の想いには応えられない。
彼女を連れてなど行けないだろうし、元からその気もなかった。
もし、自分に前世の記録などなく、村の子どもとしてふつうに生まれてきていたらどうだったろう。
これからもますます美しくなるだろう、メリリャ。村一番の、どころかおそらく他の村でも滅多に見かけないような美貌の少女。そんな少女から好意を寄せられて、完全にのぼせ上がっていたろう。
同じように村を出ようとしていたら、たとえ駆け落ち同然になっても、彼女を無理矢理連れて行ったかもしれない。
自分が村を出ていこうとしてる事を彼女が知ったらどう思うだろう。俺の気持ちを知ったらどう思うだろう。
「じゃあ、どうしよう。今度はいつがいいかな?」
視線をあらぬ方へ漂わせ、メリリャがさらに頬を赤く染めて聞いてきた。
「この時間だったらいつでもいいよ。山狩りは明後日だっけ?あとは種まきが始まるまで毎日でも大丈夫」
せめて村を出るまでは彼女にできるだけやさしくしよう。その時、別れがより辛いものになったとしても。
「うん」
うれしそうに、メリリヤは今日何度目かの花のような笑みを浮かべた。
「何を読んでおる。それはだいぶ前に読み終わっていたろうが」
ファーロが不機嫌そうな顔で言ってきた。
「ちょっと確かめたいことがあって」
久しぶりにファーロの書斎で書物を漁って見つけ出した本、今読んでいるのは昔に読んだラデイス東方の地誌だ。タイトルはそのままんま「ラディス東方史」、マリユス王書庫室編纂、とある。マリユスとは何代か前のラディス国王の名だ。
「何をだ。今さら」
「レーネが見つけたという風の神の遺跡のことだよ。この本の書かれた時期には王都でも知られていたはずだから」
レーネが宮廷魔導師になってからは、王都からその遺跡を調べに来た者もいたという。ならこの本にその記述がないのはおかしい。
「…」
ファーロは今まで何度も見せてきた呆れ顔で絶句すると、
「おまえというやつは…いいか、魔法具はもちろん、魔法に関することはいざ、という時以外はささいな事でも世には出さず、できるだけ秘密にするのがふつうなんじゃ。村の者も街の者も、多くの者は魔法のことなんかよく知らん。儂らはたまたまレーネの事があったから他の者より少し詳しく知っておっただけじゃ」
それでも教え諭すように解説してくれた。そして手に持っていた巻物を差し出し、
「エリスタールに行っても、こそこそ嗅ぎ回ったりするなよ。ほら、これが紹介状じゃ」
と言った。
紹介状とはエリスタールで商いをしている、セヴィルという商人宛だ。ポーロの息子さんもそこで働いていた。
風の魔法具の力を得てから、どうすべきかいろいろ考えたが、結局、初心を変えず、エリスタールに出て商人見習いになることにしたのだ。初心を変えず、とは言え、しばらくの間のつもりだが。
オルスト聖王国の東部にでも行き、ハンターや賞金稼ぎになっていずれ世界中を見て回ろうとか、本当はそうしたかったのだが、十二歳くらいでは世間ではまだ子ども扱いで、現地にある組合、ギルドに行っても相手にしてもらえそうにないし、まず先立つもの、金がなかった。
聖王国に行くにしても、隣接する国内の辺境伯領の東南部に行くにしても、村からではひと月近くかかる。旅費は相当な額になるだろうし、途中で金を稼ぐあてもない。
それにいきなりハンターになります、では両親に心配をかけるだろう。もちろん風の魔法具のことを打ち明けるわけにはいかない。
それで結局、しばらくエリスタールで働き金を貯めようと思ったのだ。村に出入りする行商人や護衛として雇われた用心棒から、エリスタールにも傭兵ギルド、というか実質何でも屋、請負組合というのがあり、手紙や物品の配達など子どもでもできる仕事も斡旋しているという話を聞いている。暇をみて、そこでこずかい稼ぎくらいはできるだろう。
「レーネのことは蒸し返したくない。魔法のことを嗅ぎ回って、男爵に目をつけられたら大変じゃぞ」
子どもがひとりちょっと調べたりするくらいでそんな事になるだろうか。
ただレーネのことを蒸し返したくない、というのはわからないでもない。森の魔女との一件、あれから半年ほどして冬が明けた後、ブリガールにレーネの死を知らせたが、すぐに男爵家の家令がベルシュ家にやってきて事情を聞かれたのだ。ベルシュ家ではレーネの遺骨を見せ、魔女の家の焼け跡に案内し、なんとか相手を納得させて帰した。
レーネの貴重な魔法具や魔術書類もすべて燃えてしまった。だからベルシュ家の者も、村の者も、誰ひとりとしてレーネの魔法具や魔術書をかすめ取ったりした者はいませんよ、ということだ。
その後は辺境伯家にも報告がいった筈だが特に詰問などもなく、無事、事なきを得たのだ。相手に動きがなく、そう確信できるようになったのもここ一、二年ほどのことである。
「ポーロの倅が働いているところじゃ。ポーロにもひと言いっておけよ」
次は廊下を挟んで斜め向かいのエクトルの部屋、書斎兼執務室だ。ここも何度も出入りしてきた部屋だ。かるくノックをして返事を待たずにドアを開け、中へ入る。
エクトルは何か書き物をしていたのか机に向かい、俯いてしきりに羽ペンを動かしていたが、イルシュが入って来ると、すぐに顔を上げ、にっこり笑ってみせた。
「父さんからお目当てのものはもらえた?」
エクトルは父ゆずりか背は高いが、線が細く、村ではめずらしく貴公子然としたところがある。
「うん」
「で、ぼくにもエルスが反対したら口添えしてほしいと」
根回しは以前からしてある。今日わざわざここに来たのは違う用件があったからだ。
イシュルは頷くといきなり本題に入った。
「今日はおじさんにいろいろ聞きたいことがあって。もう村から出るから、エリスタールに行っても調べられないと思うし。疑問に思ってたことをいろいろと聞きたいんだ」
エクトルの笑みの質が変わったような気がする。
「いいとも。何なりと」
「ぼくがレーネに殺されそうになった時、いろいろ魔法のこと教えてくれたよね?あれからふと気づいたことがあって」
「ご執心の魔術書のことかい? 家には何もないよ。これは断言しよう」
「魔術書はいいんだ。それより大伯父さんのところには昔のベルシュ家の書類とか、王都の役人の手紙とかあるよね? でもレーネに関するものはひとつもない。時期的には森に住み始めた頃くらいのものがあってもおかしくないと思うんだけど。おじさんのところにもないでしょ?」
エクトルの笑みが深くなった。
「ふふ。そうだね。そういうことはよく気づくよねぇ、イシュルは。でもちょっと考えてごらん。ぼくの祖父の代にラディス王国では王位の継承問題があって、国がふたつに割れる大騒動になった。そして我が家は負けた方に組したので爵位や領地を取り上げられた…」
そうか。
「わかったよ。おじさん」
エクトルは微笑んだまま頷いた。
「危ない書類は処分してしまわないとね。レーネに関するものもそう判断したんだろう。当時辺境伯家とは関係が深かったから、一部は辺境伯に渡したかもしれないけど」
いくら探しても見つからない筈だ。考えてみれば、王位の継承争いに関する書簡などが一切なかったことからして、そもそもおかしかった。
当時の手紙や日記などには、いろいろときな臭いことが書かれていた筈なのだ。
「もういいかな?」
「あともうひとつ」
エクトルは澄ました顔で両手を広げ、すべてを受け止めてみせましょう、といった感じの芝居がかった身振りをしてみせた。
「魔法使いのことに関してなんだけど」
一旦言葉を切ってエクトルの目をしっかり見つめる。
「魔法具を持てばその魔法が誰でも使えるようになるのなら、魔法具を持ってる人はみな魔法使いだよね。魔法具を持ってる王様や貴族はみな魔法使いだ。そこがわからないんだ。魔法使いとか魔導師とか呼ばれてる人はなんなの?魔法を専門に研究してる、ってこと?」
もうすぐ麦の刈り取りが始まる。出立はセウタ村に税を納める日に合わせようかと考えている。もう何かを勘ぐられたり、疑われてもかまわない。時間がない。とにかくエクトルがわかることならすべて聞き出してしまうくらいでないと。
ファーロはエリスタールでいろいろと調べまわることを心配していたが、これも行商人から聞いたことだが、エリスタールには魔法使いなどは住んでいないし、魔術書を売っているような本屋もない。というか、魔法使いの件はともかく、本屋があるかと聞いたら思いっきり変な顔をされた。書物を売るような商人は王都くらいにしかいないんじゃないか、と言っていた。魔術書どころの話ではない。おそらく図書館なんかもないだろう。ベルシュ家にいくらか書物があったのは、過去に騎士爵を持っていた、ということよりはレーネのような高名な宮廷魔導師を輩出したことが大きいのだろう。
「ああ、なるほど。あの事件があった晩、話さなかったかな? 魔法使いってのは確かに魔法を専門に学び、研究してる人たち、で合ってると思うよ。自分の持ってない魔法具や、いろんな魔法の種類や呪文のことも知っている筈だ」
なるほど。でもまだ今ひとつしっくりこない。
「魔法具は呪文を唱えなくても動くんでしょ?」
なら、そもそも呪文など必要ないではないか。
それなのになぜ魔法使いは呪文を覚えたり研究しているのか。なぜ呪文に関して記された魔術書があるのか。
そう、これが一番聞きたかったことだ。
魔法具はそれに適した専門の呪文を唱えることで…
「そうきたか…ほとんどの魔法具は確かに呪文なしで動く。でも、なかには呪文を唱えないと発動しないものもあるだろうし、呪文を唱えることでより強力な魔法を発動するものもあるだろう。同じ系統なら、それぞれの呪文に応じていろんな魔法が使えるものもあるだろう。王家や魔法使いが持つ強力な魔道具とかは、そういうのが多いんじゃないかな」
エクトルはそこで言葉を切り、窓の方へ視線をやった。
「若きレーネは本当に、風の女神と会ったのかな。会って何を話たんだろう…」
そしてイシュルに視線をもどした。
「レーネが風の神の神殿跡で魔法具を得た後、王都の魔導師の弟子になりたい、と言ったのはそういうことなんだろうね。彼女は魔法具の力はわかったとしても、使い方は知らなかったんだろう」
イシュルがエクトルの部屋を辞する時、エクトルは少し寂しそうに微笑んで言った。
「イシュルには本当は村に残ってイザークを支えてもらいたかったんだけどな。仕方がない」
エクトルの部屋を出て玄関の方へ向かうと、イザークの母が所在なげに佇んでいた。
「今日はもうお帰り? イシュル」
「うん」
「ほんとに村を出ることにしたの?」
もう、ベルシュ家の者には話が広まっているらしい。今晩あたり両親にも話さないといけないだろう。まずはファーロに書いてもらった紹介状を叩きつけて…
「じゃあこれ、ちょっと早いけど、お餞別」
イザークの母はそう言って小さな布袋を差し出してきた。銅貨か何かが入っているのだろう。
「ありがとう」
彼女は頷くと言った。
「お父さんお母さんには言っちゃだめよ。それから、イザークがあなたを捜していたわ」
外に出、人気のないベルシュ家の敷地を出入り口の方へ歩いていく。
家の前の道に出たところで後ろから声をかけられた。
「イシュル」
イザークがいた。
イザークはひとつ年上、十三歳たが、祖父に似たのか、もうだいぶ背が伸びからだも骨格ががっしりして、外見は大人と変わらない感じに成長していた。
少し逆光気味で顔の表情はわからないが彼にはめずらしく、少し緊張感が漂っている。
「おう、久しぶり。なんか俺に用事があるのか」
「うん」
「何?」
イザークは少し怯んだ様子を見せて、
「ここじゃあ、ちょっと」
「なんだよ。いいよここで。誰もいないだろ?」
辺りに目をやって、少しからかうように言ってやる。何の話か、だいたい予想はついている。
「おまえ、村を出るんだってな」
イザークはこちらの軽い挑発にすぐに乗ってきた。声に少し怒気がある。
こういう単純なところがな。だが一面ではそこが憎めない、彼の美質であるのかもしれない。
「ああ、秋に税を納める時に同行させてもらおうと思ってる」
「そ、そうか」
「で?」
「あの」
イザークはより緊張して、息を吸うと決意を漲らせて言った。
「メリリャのことだ。おまえ、メ、メリリャを連れていくのか?」
「おまえ、俺がどこに行こうとしてるか、知ってるの?」
「いや」
「エリスタールだよ。大伯父さんに、エリスタールの知り合いの商人に紹介状を書いてもらった。見習いで住み込みで働くんだ」
「そうか。紹介状って、何?」
「まぁ、それはいい」
メリリャにとって一番の幸せ、それは平和な村で、イザークのような村で一番裕福な家の惣領の嫁になることだろう。彼女はイザークに特に恋心など抱いてはいないだろう、好きな人といっしょになりたい、とだけ、それしか考えていないかもしれない。
だが、その対象が自分なら、その願いはかなえてやれない。エリスタールでずっと商人としてやっていくのならまだしも。
年老いてからもどん欲に力を欲し、あるいは魔法のことを知ろうとしていた森の魔女レーネ、まだ知らないことだらけの風の魔法、あの時出てきた蛇と剣。
ただ単に、自ら手にした力で魔物と、ドラゴンと戦ってみたい、冒険がしたい、この世界の珍しいものを見てまわりたい、ということだけを考えていたわけではない。
「住み込みで働くんだ。誰かを連れてなんてとても行けないだろう?」
逆光なのにイザークの顔がほころび、上気してくるのがわかる。
イザークがメリリャに好意を寄せていることは村の十代の男女の間で知らぬ者はおそらくいない。彼がメリリャに好意を持っていなかったなら、村の若い男たちの間で彼女をめぐって熾烈な争奪戦が巻き起こっていたかもしれない。
あとはおまえがメリリャを振り向かせられるかどうかだ。俺は退場するしかないのだから。
「イザーク、がんばれよ」
イザークの言を待たずに背を向けた。家の方へと歩き出す。
ベルシュ家の館の周りに茂る木々を抜けると、傾いてきた陽の光に麦畑が黄金色に輝いて見えた。
麦畑の先には我が家が見える。
次はあそこだ。