Reincarnation into the Barrier Master

Episode 26: Oh, my God. That was tough.

俺は再び子狐の下に向かう。

「大丈夫だったかー?お前もえらい災難だったなー」

「助かったのでありますー」

子狐が喋った。何だコイツは?

「お前さん、喋れんの?」

「こう見えても200年は生きているのでありますー。狐は200年生きると、妖狐に転生して、人語があつかえるようになるのでありますー。転生する時に、功徳を積みながら生きた狐は白狐に、悪行を重ねた狐は妖狐に転身するのでありますー。先ほどいたピャオランは、有名な妖狐で、我々の仲間が行方を追っていたのでありますー」

「へぇ~。そんな功徳を積んだ白狐が、なんでこんな森の中に?」

「はいー。もともとはジュカ王国に神の眷属として派遣されていたのでありますー。我々白狐は、派遣された国々で信仰を集めて、そこで神として祀られるのが仕事なのでありますー。頑張って信仰を集めようと色々なご利益を授けていた時に大魔王が現れたので、王国を捨ててこの森に避難したのでありますー」

「国を捨てて避難したって、それ、大丈夫なの?」

「・・・大丈夫ではないのでありますー。しかし、本当に怖かったのでありますー。かなり奥の方まで逃げたのですが、まさかそこに大魔王がやってくるとは思いもよらなかったのでありますー。」

「あっ、ああ。ごめんなさい」

「見つかっては殺されると思ったので、気配を完全に断って、木の上から様子を観察していたのでありますー。しかし、いきなり立ち上がって怒りの呪文を唱えられたので、驚いた拍子に、落ちてしまったのでありますー」

あ、「蝋人形」か。あれは忘れてほしい。

「これは殺されると覚悟したのでありますが、まさか大魔王が吾輩に、あんなに美味しいお供え物をして、崇めるとは思わなかったのでありますー。しかも、行方を追っていたピャオランまでがわざわざやってくるとは幸運でありました。ヤツの能力の大半は奪ったので、もうヤツは何もできないのでありますー」

「やっぱりピャオランはそんなにあくどい妖狐なの?」

「傾国、と呼ばれる妖狐でありますー。人をたぶらかし、災いを振りまき、国を亡ぼすようなことを何度もしてきたのでありますー」

・・・妲己みたいだな。

「吾輩にお供えをし、ピャオランを討伐したので、貴方は呪いのステータスを下げることに成功しているのでありますー。もしよければお礼に、呪いのステータスを消すこともできるのでありますが、いかがでありますか?」

「おおそれはうれしい!ただその前に、この呪いのステータスってのを教えてくれ」

「呪いのステータスは、同族を殺してしまうとついてしまうのでありますー。貴方であれば人間でありますー。殺した時の状況や怨念にもよるのでありますが、罪悪感がなく、楽しみながら殺人を犯すようなものは、ステータスの上昇が早いと言われているのでありますー。大体・・・」

呪い

LV1 人殺し(1人以上の殺人)

LV2 殺人鬼(10人以上の殺人)

LV3 悪魔(100人以上の殺人)

LV4 魔王(500人以上の殺人)

LV5 大魔王(10000人以上の殺人)

「この呪いのステータスを下げたり、除去したりするのが、神官でありますなー。戦争が終わった後などで、神官が兵士たちに祈りを捧げているのをよく見るでありますが、あれが呪いのステータスを除去している姿でありますー。あと、教会で洗礼を受けると、呪いのレベルがあがりにくくなるでありますなー。ただし、人間がどうにかできるのは、LV3まででありますー。たとえ神官の最高位である教皇でも、LV3が限界でありますので、大抵の神官はLV2くらいまでが精いっぱいでありますなー」

「では俺の呪いスキルは・・・LV4か。お前さんにお供えしたから、LV下がってるな。お供えパワーすげぇな・・・。確かに、大魔王がお供えするなんざとんでもない行為になるんだろうな。なるほど、お前さんなら、今の俺の呪いを消せると?」

「妖狐になると、加護がつけられるので、LV4まででしたら、消すことは可能でありますー」

「では、お願いしたい。ぜひ、お願いします」

「ただし、一度、貴方の記憶を辿らせてほしいのでありますー。その年齢で大魔王に至るまでの殺人を犯すなどは、聞いたことがないのでありますー。邪な者であれば、呪いの除去はできないでありますからー。」

「わかった。それで結構だ」

「それでは、見るでありますー。・・・結界の解除をお願いするでありますー」

おおう、忘れていました。

「うーん。ほう、そんなお生まれで。ほぉ~奴隷とは・・・。え?そんな!?ええ?ほうほう、何とまぁ!あらあら、うふふっ。へぇ~うわぁ~。うんうんそれは・・・。は?え?え?いや、八万??そんな、ええ?ちょっ・・・うぇぇぇー」

ふぅぅぅーとゆっくり息を吐く子狐。

「それは大魔王が付いてもおかしくないでありますなー。これだけのスキルの上昇、称号も納得でありますー。よくわかったでありますー。最後に、貴方が、これからやろうとしていること、また、やりたいことは何でありますかー?」

「願わくば、平穏な日々を送りたい。理想を言えば、ハーレムに囲まれながら、平和な暮らしをしてみたい」

「・・・正直な方でありますなー。よろしい。呪いの除去、行うでありますー」

呪いの除去は、一瞬で済んだ。何が変わったのかは自分では全く分からないが、子狐曰く、全く別人の雰囲気になったそうである。

「そういえば、お前さんの名前を聞いてなかったな。私は、リノスだ」

「ええ、記憶を辿った時にお名前は把握しましたでありますー。我々白狐は、基本的に名前はないのでありますー」

「じゃあ何て呼べばいいだろう?お前さん、じゃちょっとね」

「基本的には、信仰を集めて神として祀られ場所が呼び名になることが多いでありますなー。○○国の神様とか、○○のおキツネ様とかでありますー。よかったら、吾輩の名前を付けて欲しいのでありますー。名前を付けられると、神の眷属としての地位が少し上がるのでありますー」

名前ねぇ・・・。キツネ、キツネだったら・・・。

「では、「ゴン」で」

「・・・再考はないのでありますかー?」

・ゴン

・ゴン太郎

・ゴン兵衛

「三つのうちのどれか一つ選べ」

「・・・ゴンで結構でありますー」

そんな残念そうな顔をするな、ゴン。またお供えするからさ。そういえば、ピャオランは人間に化けていたけれど、ゴンも人間に化けられるのだろうか?

「できるのでありますー問題ないのでありますー」

人化してもらったゴンなのだが、その、何というか・・・

「顔が狐のまんまじゃねぇか!却下!」

実際ゴンは人化はあまり得意ではないようだ。白狐になりたての頃、子供たちの遊びがあまりにも面白そうだったので、仲間に入ろうとしたら袋叩きにあったらしい。理由は簡単で、単に人化するのを忘れて、キツネの姿で飛び出したからなのであるが、これはゴンの黒歴史の一つであるため、リノスにはナイショの話である。

「ところで、神の眷属といっていたけれど、ゴンの神様というのは誰だい?」

「我々の神は「九尾の狐」でありますー」

やっぱりか!万年を生きる妖狐だったよな?それじゃ、ゴンももしかしたら九尾の狐に至る可能性があるかもしれないってことか。

「まあ、吾輩は落ちこぼれでありますからなー。たとえ神階に達するとしても、あと10000年は最低かかるでありますから、どうぞ気長にお待ちいただきたいでありますー」

そんな先まで、俺が生きてるわけねぇだろ。