Reincarnation Monarch

Episode 153: Leader

しばらくすると生徒たちは徐々に落ち着きを取り戻し始めた。

そうなったのには理由がある。

それというのも自然と各クラスごとにリーダー格の者たちが現れ、生徒たちをクラスごとに分けて座らせては、泣きじゃくる者やパニックを起こして怒鳴り続ける者たちを、じっくりと説得して落ち着かせたからであった。

そして完全に生徒たちが落ち着きを取り戻し、静かになったところで各クラスのリーダーたちが一同に会した。

彼らは四つあるクラスを四角形を形成するように座らせ、その中央に各クラス二人づつ、計八人のリーダーが集まって話し合いを始めようとした。

そしてまず、その先鞭をつけたのはガイウスであった。

「先生たちがいない以上、俺たちでみんなを統率するしかないと思う」

このガイウスの提案に、皆大きくうなづいた。

「まず自己紹介からしよう。俺は三組のガイウス、こいつは同じ三組のマックスだ」

するとガイウスの真正面にいた精悍な顔つきの男子生徒が笑顔で言った。

「ああ知ってるよ。いや俺だけじゃなくこの学校の人間でガイウス・シュナイダーを知らない者はいないさ。おっと申し遅れたな、俺はアルベルト。一組の者だ。こいつは同じく一組のベッケル。皆よろしく」

アルベルトの挨拶に傍らのベッケルが人懐っこそうな笑みを零しながらペコリと頭を下げた。

「そうだね。まあガイウス・シュナイダーを知らない奴はいないだろうね。ちなみにあたしは二組のジョディー。こいつは子分のサルコーだよ」

リーダーたちの中の紅一点、ジョディーの自己紹介に『子分』のサルコーが不服を申し立てた。

「子分だなんて、ちょっとひどいなジョディー。恋人と言ってくれてもいいじゃないか?」

ずいぶんとキザな言い回しのサルコーに、勝気なジョディーは首を横に振り、フンッと鼻を鳴らした。

ところがマックスがそれに茶々を入れた。

「二組はずいぶんと変わったコンビだね~というか恋人同士か」

すると先ほどは鼻を鳴らすだけで無視を決め込んだジョディーが、たまらず声を荒げた。

「違うに決まってるだろ!サルコーの言うことなんかに耳を傾けるんじゃないよ!」

「ひどいじゃないかジョディー。まったく君は連れない人だねえ」

サルコーの言い回しに今度こそは完全に頭に来たらしいジョディーは、左足を大きく膝を曲げて上に振り上げると、そのままの勢いで振り下ろしてサルコーの右足を強烈に踏みつけた。

するとサルコーは恍惚の表情を満面に浮かべ、愉悦の吐息を長々と漏らした。

「……そういう趣味の人なんだね……」

マックスは呆れ顔でそう呟いた。

すると一組のアルベルトが一つ咳払いをして空気を換えようとした。

「えーと、最後は四組だね。自己紹介よろしく」

アルベルトの促しに、バランスが一歩前に進み出た。

「わたしが今回四組のリーダーとなったバランスだ。そしてこの者は……お前、名前は何と言うのだ?」

バランスは颯爽と前に出たはいいが、自分のサポート役のクラスメイトの名前を知らなかった。

だが彼は予想でもしていたのか、特に意外そうな顔もせず、自ら自己紹介を始めた。

「ああどうも、四組のセランです。なんというか……成り行きでバランスがリーダーになっちゃったので、僕が補佐役って形になりました。よろしく」

するとマックスが突っ込みを入れた。

「バランスがリーダーって、一体どんな成り行きでそうなるんだよ?」

するとバランスがマックスの突っ込みに対して声を荒げた。

「なんだと~!貴っ様~!」

だがそれをガイウスが冷静にとどめた。

「待ってくれバランス。マックスもだ。というか今のはマックスが悪いぞ。さっきのバランスの対応を見ただろう。彼は真っ先に冷静にクラスを指導しようとしたじゃないか。なあセラン、だからバランスをリーダーと四組は認めたんだろう?」

するとそれにセランは大きくうなづいた。

「ああ、ガイウスの言う通りだ。俺たちも意外だったよ。バランスがこんなとんでもない事態に冷静に対処できるような奴だとは思ってなかったからな。まあつまりは見直したってことさ」

「ということだ!わかったかマックス!」

バランスは鬼の首を取ったような顔つきでマックスに迫った。

するとそれをセランが苦笑交じりに制した。

「おいおいバランス。褒めたそばからその態度はないぞ。俺たち四組はお前をリーダーと認めたが、だからといって好き勝手していいってわけじゃないんだぜ?リーダーとなった以上はそれにふさわしい態度を取ってもらわなければ困るぞ」

するとバランスは意外にもセランの言葉に素直に従った。

「うむ、確かにセランの言う通りだな。リーダーにはリーダーにふさわしい態度、威厳が必要だな。ここはわたしが引くとしよう」

ガイウスはバランスの変わり様に頼もしくも、可笑(おか)しみを感じるのであった。