Reincarnation Monarch

Episode 214: Rooftop

ガイウスの指示により全校生徒が校庭に集められ、帰り道が同じ者同士で固まって班を形成した。

「よし!それじゃあこれからしばらくの間は、このように班でもって登下校することにする。いいね?」

ガイウスが朝礼台の上から、全校生徒に向け大声で言った。

すると生徒たちは元気よく皆一斉に「はいっ!」と返事をした。

ガイウスは、快活な生徒たちの返事を聞いて満足げにうなずいた。

「それでは、それぞれ順に出発してくれ」

ガイウスはそう言うと朝礼台の上からゆっくりと降り、自分が所属する班へと加わった。

「じゃあ僕たちも行こうか」

ガイウスはアベルを含む下級生たち六人に向かって優しく声をかけた。

するとアベルが校舎をふと校舎を見上げて、いぶかしげな表情でつぶやいた。

「あれ?ボロネズ先生、あんなところでなにしてるんだろう?」

アベルのつぶやきを聞き、ガイウスも校舎を見上げた。

すると校舎の屋上でなにやら不可思議な動きをしている人が見えた。

「ボロネズ先生?」

「うん。僕のクラスの担任の先生で、美術が専門の先生だよ」

「そうか。それにしても一体屋上でなにをしているのか……」

するとアベルは、首をななめに傾けながら言った。

「なんか製作しているのかなあ?彫刻とか……う~ん、でもよくわからないや」

すると突然ガイウスの脳裏に電流が走った。

「アベル、みんなも少しここで待っててくれ」

ガイウスはアベルたち下級生に優しく微笑みながらそう言い残すと、おもむろに振り返って校舎の中へと入っていった。

「ボロネズ先生、そこでなにをされているのですか?」

ガイウスは屋上の一角で一心不乱に何かをしているボロネズの背中に、静かに語りかけた。

するとボロネズはその声にビクリと激しく反応し、凄い勢いで振り向いた。

「なっ!?き、君は……ガイウス・シュナイダーか……驚かさないでくれよ。いきなり後ろから声をかけるなんて……」

ボロネズは声の主がガイウスであると確認すると、安心したようにホッと息を吐き出し、足元に置かれた画材道具などが入ったかなり大きめのバッグの上に、手に持っていた雑巾を無造作に置いた。

「すみません。脅かすつもりはなかったのですが、先生があまりにも一心不乱になにかをされていたので……」

ガイウスがそう言うと、ボロネズはハッとした表情を一瞬見せ、次いで軽く苦笑いを浮かべた。

「あーそうか。いやー僕はどうも一つのことに夢中になると我を忘れて一心不乱に打ち込んでしまう癖があってね。いやーすまんすまん」

「先生なにをそんなに夢中になっていらっしゃったんですか?」

ガイウスは改めてボロネズに尋ねた。

「あーこれだよ。ここの壁のところがさっきまで黒く汚れていたんだよ。実は僕は極度の綺麗好きでね。そういった汚れを見るとそのままにしておけないんだよ。ところがこの汚れというのがかなり頑固でね。悪戦苦闘していたってわけさ」

ボロネズが指し示した壁は、水布巾で拭いたためか水分を含んで周りの壁と違って色が濃くなっていたものの、汚れ自体はほとんど洗い落とされていた。

「そうでしたか。汚れが……なるほど言われてみれば、まだほんの少し黒い染みみたいなものが残っていますね?」

「あーそうなんだよ。何度拭いてもとれやしないんだ。まったく誰がこんなところを汚すんだか。困ったものだよ」

ボロネズはぶつくさと文句を言ったが、ガイウスもまたぶつくさと声にならない声で何ごとかを呟いていた。

そしてしばらく後、ガイウスの顔がいきなりパーッと晴れやかなものに変わった。

「なるほどね。そういうからくりだったのか」

ガイウスはまた一つ事件の真相に近づいたと確信したのであった。