Reincarnation Monarch

Chapter 496 Defendant

「ありがとうございます!」

シェスターは勢い込んで裁判長に頭を下げて礼を言った。

するとその横でコッホルが苦々しげに舌打ちをした。

シェスターはその音を聞き、頭を下げた状態で裁判長に見えないように口角を上げてニヤリと笑った。

するとそれを横から見たコッホルがさらに苦々しげに顔を歪めてもっと大きな音を出して舌打ちをしたのだった。

シェスターはその音を心地よく聞きながら頭を上げ、ルカクに対して改めて質問を再開するのだった。

「ルカクさん、全部が全部じゃないにしろ、あなたは主に架空の物語を読んでこられたんですよね?」

シェスターはルカクが強く否定できないよう慎重に言葉を選んで言った。

するとルカクは少し考える素振りを見せたあと、コクンと大きく頷いたのだった。

「はい。ほとんどはそういうものでした」

するとシェスターが念を押すように尋ねた。

「そういうものとはどういうものですか?」

するとルカクはあまり主旨が判っていないのか、不思議そうな顔をして小首を傾げた。

「えっ?どういうものって……あなたが言った架空の物語ですよ」

「架空の物語ですね?あなたは六年間、他の事もやられたでしょうが、主に沢山の読書をされていた。そしてそのほとんどが架空の物語だったと、そういうわけですね?」

「はい。そうですけど……それが何か?……」

ルカクはそこで少々不安げな表情を見せた。

しかし後ろを振り返って検事席を見ることは禁じられていたため、おどおどしながら横目で裁判官席をちらちらと見たのだった。

するとこのルカクの視線に気付いた裁判長が、ルカクに優しく声をかけた。

「証人は落ち着いて正直に質問に答えてくれれば結構です。今、この場ではあなたは証人であって被告ではないのですからね」

するとこの裁判長の発言を聞き、シェスターの眼光が鋭く輝いた。

「裁判長!今、この場ではと仰いましたがそれはつまり……別の場ではルカクさんは被告になるという意味でしょうか?」

シェスターの鋭い追求に裁判長は少々慌てた素振りを見せた。

だがそれ以上に慌てたのは、当のルカクであった。

「お、俺が被告!?な、何で俺が!!」

するとシェスターがすかさず断言した。

「無断で軍を抜け出したからです。無論それはこのヴァレンティン共和国の法ではなく、あなたの故国ローエングリン教皇国の法でということになるが、脱走兵に関してはどこの国も皆一様に似たような罪になるのではないでしょうか?少なくとも無罪ということはありえないかと思いますが?」

このシェスターの冷徹な言葉にルカクが大いに取り乱した。

「そんな馬鹿な!?俺は決して罪に問われないって聞いたぞ!?だから!!俺はここに出てきたんじゃないか!!」

ルカクは禁じられていたにも関わらず後ろを振り返ってコッホルに対して怒鳴り散らした。

するとコッホルが顔を紅潮させ、身体をプルプルと震わせながら叫び返した。

「ルカク!!黙れ!!」

するとこれにシェスターがさらなる大音声でもって噛み付いた。

「黙るのは貴様だ!!」

シェスターはコッホルを睨みつけるルカクの肩をとって反転させると、自らの顔を極限まで近づけて言った。

「ルカクさん!誰に言われた!?わたしの目を見てはっきりと答えていただこう!あなたが決して罪に問われることはないと一体誰に言われたのかを!!」

するとルカクは、目の前の鬼気迫る表情をしたシェスターに恐れをなしたのか正直に白状したのだった。

「……う、後ろにいる検事正のコッホルさんです……」

その瞬間、シェスターはルカクの顔越しにコッホルの慌てふためく姿を捉えニンマリと意地悪く微笑んだのだった。