Reincarnation Monarch

Episode 602, Glenn.

「いやあ、本当に不思議ですよね~。あの三人は姉妹でもなく、一体全体どうやって知り合ったのか?絶世の美女が集まる学校かなにかでもあるんですかね~?それとも仕事場かな?もしそんなところがあるんなら、僕もそんなところへ就職したいな~そうしたらどれだけ仕事が楽しいことか。きっとこんな殺風景なところとは真逆の美しい光景なんでしょうね~いやあ、本当にそんなところがあるのなら、今すぐ就職したいな~なんて思っちゃいますよね?……そう言えば僕、何か聞かれてませんでしたっけ?」

男がかなり鼻の下を伸ばしながら長広舌を披露した。

シェスターは軽く肩をすぼめて男に返答した。

「ああ、三人の美女たちの様子について聞きたいんだが?」

「ああ、そうそう、そうでしたね。様子、様子っと……うん?言われてみると三人とも何かを探しに来たって感じでもなかったような……男たちも……多分そうだったと思いますよ?……あれ?じゃあ彼らは一体何しにこの古文書館に来たんだろうか?……」

男はそう言うと腕を組み、小首をかしげて考え込んだ。

シェスターは男が芝居ではなく本気で悩んでいる様子をつぶさに捉えて、その言葉に嘘がないことを確信した。

「古文書を探すでもなく古文書館にか……なるほどこれはちょっとしたミステリーかも知れんな?」

シェスターはそう呟くと、楽しそうににやりと微笑んだ。

「ところで君はここの学芸員か何かかね?」

シェスターが遅まきながら男の身分を尋ねると、男は朗らかな笑顔を浮かべながらうなずいた。

「ええ、そうです。僕はこのタルカ古文書館で学芸員をしています、グレンです」

グレンは明るく陽気そうな雰囲気を醸し出しながら笑顔で自己紹介した。

「申し遅れた。わたしはヴァレンティン共和国の審議官、ヘルムート・シェスター。こちらは……」

シェスターはそこでロデムルをどう紹介したらいいのか少し言い淀んだ。

するとすかさずそれを悟ったロデムルが進んで自己紹介をしはじめた。

「わたしはシェスター審議官の部下のロデムルと申します。よろしくお見知りおきのほどを……」

ロデムルは、ここでわざわざシュナイダー家の名前を出すこともないと考え、無難にシェスターの部下という名乗りを上げた。

するとグレンは一拍置いて大いに驚き、少しばかり後ろにたじろいだ。

「……審議官って……凄いお偉いさんじゃないですか……ああ、いや僕、なにか失礼なこと言ってなかったですかね?……」

グレンの顔色は見る見るうちに曇り、瞬く間に青白く生気を失っていった。

そのためシェスターは慌てて右手を振ってグレンの気を落ち着かせようと試みた。

「いや、失礼なことなどなにもない。良く質問に答えてくれて大いに助かっている。どうか気を楽にして欲しい」

するとグレンはほっと一息溜息を吐き、頬を若干強張らせながらも、少しずつ生気を取り戻していったのであった。