Reincarnation Monarch

Episode 732: Behind the Forest

「……ない……どこにも遺体なんてない……」

アジオが鬱蒼とした林の中で疲れ切った表情を浮かべながら呟いた。

すると側にいたロデムルも同様に疲れた顔で、自らの周囲の穴ぼこだらけの地面を見ながら応じた。

「はい。アジオ様の仰る通り、カルミス様の遺体などどこにも埋まっていないようです」

「……参ったな……どういうことなんだろうか、これは……」

アジオが途方に暮れた顔で独りごちると、ロデムルがふと思いついたように問うた。

「アジオ様、先ほどより大分時が経っておりますが、今も形代は回転するのでしょうか?」

ロデムルに言われ、アジオは懐から形代を取り出し、掌の上に置いてみた。

すると、

「……あっ!回転しない!ロデムルさん、林の奥です。矢印は林の奥を指し示しています!……でも何ででしょうか?先ほどは確かにこの辺りで回転したはずなのに……」

「はい。それはわたくしも確かに見ました。間違いなく形代は先ほどこの場で回転したはず……なのに今、形代は矢印でもって林の奥を指し示しています。これは一体……」

「まあでもとにかく、林の奥へ行ってみましょう。もしかして先ほどのは何かの不具合だったのかもしれませんし。たとえばこの林には何らかの磁場か何かが発生していて、それが形代を狂わせてしまったとか……」

するとロデムルが、即座にアジオの推測を退けた。

「いえ、それですとなぜ今は形代が回転しないのかの説明がつきません。もし仮にアジオ様の仰るようにこの林に磁場が発生しているのだとしたならば、今も同じはずです。ですが今は回転せずに矢印が林の奥を指し示しています。これは明らかに矛盾だと思われます」

「う~ん……まあたしかに……でも他に思いつかないんですよね~……ロデムルさん、何か思いつきます?」

するとロデムルが目を伏せ、厳しい表情と鳴って考え込んだ。

そしてしばしの時が過ぎ、ロデムルがふと顔を上げた。

「アジオ様、おそらくですがこの林の奥へ進んだところでお三方の姿を捉えることは出来ないかと存じます」

「それは一体どういう意味です?たとえばこの形代がおかしくなってしまったから矢印の方向へ進んでも意味がないということですか?」

するとロデムルが大きく首を横に振った。

「いえ、違います。形代がおかしくなってしまったとは思っておりません」

「ではどういう意味で言ったのですか?」

「はい。この矢印の先をこのまま進んでもお三方はいないだろうと思ったのです。つまり、この地面の上にはいないだろうという意味でございます」

「……するとやはり……」

アジオはそう言って自らの足下を眺めた。

するとロデムルはほんのわずかに笑みを零しながら首を横に振った。

「いえ、埋まっているわけではありません。ですがやはりお三方は地面の下におられるかと……」

アジオは初め、ロデムルが言っている意味を理解出来なかった。

だが次第にロデムルの考えていることがアジオにも判ってきた。

「……そうか!地下だ!この地面の下に地下道があるってことか!?」

ロデムルは今度は大きく相好を崩し、暖かな笑みを零すのであった。