Reincarnation Monarch

Episode One Thousand Two Hundred and Five: Winning.

「ぐわっ!!!」

デルキア渾身の右ストレートを食らい、ガイウスはものの見事に吹っ飛んだ。

そしてアスタロト邸の豪華に敷き詰められた柔らかな絨毯の上を、何十回もくるくると回転して数十M程も転がり、ついにしこたま壁に身体を打ち付けた末に止まったのであった。

「どうだっ!!」

デルキアが勝ち誇った様に叫んだ。

するとカリンが放っていた魔法を止めて、デルキアに向かって言ったのだった。

「あんただけの手柄じゃないでしょ?わたしがこうやってあんたの分身を作っていたからガイウスを騙せたんじゃないのよ」

カリンはそう言うと、自らの傍らにいたデルキアの分身をスーッと消した。

するとガイウスを吹き飛ばした本物のデルキアが、まだ勝ち誇った表情を浮かべて言った。

「ふん!だが実際にガイウスをぶっ飛ばしたのはわたしだ」

「ちょっと待ちなさいよ。協力して勝ったんじゃないのよ。なにあんただけの功績にしてんのよ」

「うるさい。何度も言うが実際にガイウスをぶっ飛ば……」

するとカリンがデルキアの言葉を遮って叫んだ。

「うるさいのはあんたよ!わたしが注意を引いていたからあんたが飛び込めたんでしょうがっ!それを……」

すると今度はデルキアがカリンの言葉を遮って叫んだ。

「やっぱりうるさいのはお前の方だ!何と言おうとぶっ飛ばしたのはわたしなんだ。ならわたしの方が偉いに決まっているだろうに!」

「馬鹿言ってんじゃないわよ!どうしてそんな結論になるのよ!」

「うるさい!喧嘩はぶっ飛ばしたもんの勝ちなんだ!」

「馬鹿!そもそも喧嘩じゃないわよ!」

「馬鹿馬鹿うるさい!」

「馬鹿なんだからしょうがないでしょ!」

「馬鹿って言う奴が一番馬鹿なんだぞ!」

「そういう奴が本当に一番の馬鹿なのよ!」

「馬鹿って言うな!馬鹿!」

「馬鹿に馬鹿って言ってなにが悪いのよ!」

「何だとっ!やるか!?」

「いいわよ!やってやろうじゃないの!」

すると、ここでようやくぶっ飛ばされて床に寝そべっていたガイウスが立ち上がり、弱々しい声ながらも二人の間に割って入った。

「……あのう……内輪揉めの最中申し訳ないんですが……」

するとデルキアたちが二人同時に言った。

「「なによ!?」」

「……いや、あのう……いつの段階でカリンがデルキアの分身を作ったの?」

するとカリンがしょうがないといった顔付きとなってガイウスに対して説明した。

「ああ、さっきよ。さっき一回防御壁が破れたじゃない?その時あんたが必死に再構築しようと意識がわたしたちから逸れていたのよ。その時よ」

ガイウスは記憶を辿り、先程の情景を思い浮かべて納得するのであった。