Reincarnation Monarch

Episode One Thousand Two Hundred Forty-One: Zero State

「どういうことだ?あれはガイウスの本当の実力ではないと?」

カルラがギョッとした顔をして、アウグロスに問い質した。

アウグロスは溜息混じりに首を横に振ると、仕方ないといった表情を浮かべて言ったのだった。

「そうだ。彼の本来の力はあんなものではない。あれはあくまでフラットな状態での力なのだからな」

「フラットな状態?それはどういう意味なのだ?」

カルラが慌て気味に問うと、アウグロスが右手を顎の下に置いて考え込んだ。

「……そうだな。説明するのは少し難しいのだが……あの無意識の状態というのは、言ってみれば彼にとってはゼロ状態なのだ」

「……ゼロ状態……わたしには言っている意味が判らないが?」

「そうか、難しいか……つまり彼の意識がある状態とは、ゼロ状態にすら辿り着かないマイナス状態ということなのだが……」

「マイナス状態?これまでのガイウスの状態が?意識のあった時はすべてマイナス状態だったと?」

「そうだ。意識を失って始めてゼロ状態まで戻ったということさ」

カルラはデルキアたちと顔を見合わせて驚いた。

だがアウグロスはそんな彼女たちを尻目に、ガイウスに関する説明を続けた。

「つまりは彼の意識がある時には、或る種の足枷が掛けられているために、ゼロより下のマイナス状態だったというわけさ」

するとカルラたちが、皆一様に驚きの表情を浮かべた。

そして三人を代表するかのようにカルラが呟いたのであった。

「……そういうことか……足枷とは……記憶に掛けられた鍵のことだな?」

するとアウグロスが、意外にもゆっくりとした動作で首を横に振った。

「いや、それも一つの足枷ではあるが、もっと直接的なものもある」

「直接的な?それはどういう……」

アウグロスは笑みを浮かべ、静かな口調で言ったのだった。

「そのままさ。能力そのものに制限が掛けられているのさ」

「どういうことだ?制限が掛けられているとは……一体どのように……」

「無意識時の彼のオーラを見ただろう?あれを彼の意識がある時に見たことは?」

「……ないかな……」

「そうだろう。あのオーラを普段は封じられているのさ」

「……そういうことか……」

「そうだ。あのオーラを放出しつつ、無限の魔法総量でもって繰り出す魔法の威力たるや……想像してみるが良い」

するとようやくカルラが納得の表情を浮かべた。

「そうか。オーラと魔法は別物。どちらか一方ではなく、同時に……」

するとアウグロスの笑みが深まった。

「そうだ。それこそが本来のガイウス・シュナイダーの実力なのだ。それに……」

アウグロスはそこで、勿体ぶるように言葉をわざわざ区切るのであった。