Reincarnation Monarch

Lesson one thousand five hundred two.

「そうか。ではいよいよと言うことだな?」

覚悟を決めた様な顔で言うカルラであったが、アウグロスは笑みを零しながら首を横に振った。

「いや、まだまだ先だ」

肩すかしを食らったカルラは、肩をすくめた。

「そうか……なるほど、色々と面倒臭いようだな?」

「そういうことだ。まだ当分はかかると思ってくれ」

カルラは仕方なさげにもう一度肩をすくめた。

「わかった」

カルラの同意を得、アウグロスが再び歩き出した。

「では参るとしよう」

カルラはその後を無言で追った。

そして階段へと辿り着くと、しっかりとした足取りでゆっくりと上がっていくのであった。

「……当分かかると言っていたが、それにしてもまだなのか?」

階段を上り始めてからおよそ五分ほど経った頃、さすがにカルラが重い口を開いて尋ねた。

アウグロスは振り返りもせず答えた。

「まだだな。そうさな……後三十分くらいだろうか」

カルラは思わず目を回した。

「まだそんなに掛かるのか!?……ならば、飛行魔法を使わないか?」

カルラがそこで当然ともいえる提案をした。

するとアウグロスがそこで初めて足を止めて振り返った。

「いや、ここでは魔法は使えない」

「使えない!?それはどういうことだ?」

「文字通りの意味だ」

「……何故使えないのだ?」

「わからぬ。だがここでは魔法は無効となるのだ。疑うのならばやってみるといい」

アウグロスに言われ、カルラが何かしら念じ始めた。

「では……飛ぶぞ?」

カルラは言うや、わずかに上を見上げた。

だがカルラの足は階段を踏みしめたままであった。

カルラは驚きの表情を浮かべた。

「……どうやら本当のようだな……」

「納得したかね?」

するとカルラが不本意そうに答えた。

「せざるを得んな」

諦念の表情となったカルラに対し、アウグロスが微笑んだ。

「理屈はわからぬが、こればかりは仕方ないのだ。諦めて歩くしかない」

「わかった。で、後三十分くらいだったかな?」

「そうだ。大体だがそれくらいだったと思う」

「そうか……以前とは異なり、身体が若返っていて良かったよ。でなければ身体が悲鳴を上げただろうからな」

カルラは苦笑を漏らしながら言った。

アウグロスはそれに微笑みで返した。

「そうだったな。だがそれはわたしも同じだよ。このガイウス・シュナイダーの若い肉体のおかげで、ずいぶんと楽なものだ」

二人はしばらくの間、共に笑い合うのであった。