Reincarnation Monarch

Lesson one thousand five hundred and nineteen, grumpy.

「……消えたか……」

カルラはそう言って沈鬱な表情でうつむいた。

ガイウスは腰に手をやり、両足を少しだけ開き気味に立って周囲を見回した。

「……ああ、なんにもないよ……」

ガイウスは両手を胸の前で組み、考えた。

「……アウグロスは、その立方体の建物の中に入らないと天界へは行けないって言ったのだよね?」

「そうだ。だがその建物の中には入れなかったがな……」

「だけど今は、中に入れないどころか、その建物自体が無いと……」

「どうやらそのようだ」

「となると……困ったね。天界へ通ずる道どころか元の場所へ帰れる保証すらないんでしょ?」

「それはわからん。一応どちらの方角へ行けばいいかはわかるつもりだが……実際行ってみないとわからんな。なにせ目印となるものがない」

「確かに、見渡す限り何にもないね。ただのだだっ広い平原だ。となると……」

ガイウスが片眉をピンと跳ね上げ、何か考え込んだ。

「どうした?何か気になることでもあったか?」

カルラの問いに、ガイウスが考えをまとめながら答えた。

「うん……よくもこれだけ目印も何もないところまで、アウグロスは案内できたなと思ってさ。だってそうだろ?何時間も歩き通しだったんだろ?それなのに正確に、少なくともここまではカルラを案内したっていうのが不思議でさ……」

「ふむ、言われてみれば確かにそうか……」

「歩いている時は疑問に思わなかった?」

「そうだな。特には思わなかったな」

するとガイウスが肩をすぼめた。

「それはあれだね、カルラがアウグロスをかなり高く評価していたからだね」

するとカルラが、心外そうに片眉を跳ね上げて不快感を露わにした。

「それはわたしの目が狂っていたと言っているのだな?」

「そうは言ってないさ。ただ……少し買いかぶりすぎなんじゃないかと思ってさ」

「ふん、何とでも言え」

カルラはそう言うと、かなり不機嫌に顔を背けた。

ガイウスは再度肩をすぼめた。

「まあそう怒らないでよ。なにせ俺たちは迷子なんだ。二人して協力しないことには、ここから逃れられないぜ?」

ガイウスはそう言うと、再び周囲を見回した。

だが当然のことながら、景色には何の変化も無かった。

「……いくら腹が空かないとはいえ、こんなところにいつまでも居るわけにはいかないんだけどな……」

ガイウスはそう呟くと、大きな溜息を吐くのであった。