Reincarnation Monarch
Story one thousand five hundred and sixty-first, why did you come?
「ところで、ファルスはどうなったの?」
ガイウスが、音もなく横たわるファルスを見下ろしながら言った。
「気絶しておるだけじゃ。じきに目を覚ますじゃろうて」
「だろうと思ったよ。で、目が覚めたらどうするの?」
エルがガイウスの発言を鼻で笑った。
「知らんよ。目が覚めた頃にはわしらはここにいないのだからな」
ガイウスは微笑んだ。
「そうだね。じゃあ、行こうか?」
「うむ、行こう」
ガイウスはエルと連れだって歩き出しながら、平然とした顔でもって問いかけた。
「ところでさ、俺がこの世界に来てはいけない理由ってなに?」
エルは、この問いを予想していたのか、こちらも顔色を変えずに答えた。
「正直なところは、わからん。本当だぞ?本当にわしらは聞かされておらんのだからな」
「ふ~ん……誰に聞かされていたの?」
「決まっておろう?神々じゃ」
ガイウスは何度も細かくうなずきながら、さらに問いかけた。
「神々ね……当然ルキフェルやイリスもその中に入っているよね?」
「そうじゃな。ただ……」
エルが難しい顔となって言いよどんだ。
ガイウスはそこで初めて横を向いて、エルを見つめた。
「ただって何?」
「うむ……ルキフェル様は以前、過去世においてお前をこの世界に招き入れたのだよな?」
「ああ。そうだね。それを考えると、少しおかしいね?」
「うむ……」
エルがさらに難しい顔をして考え込んだ。
ガイウスは過去世の記憶を辿り、おもむろに口を開いた。
「……確かに俺は過去世においてこの世界に来たことがある。それは間違いない。ただ……」
今度はガイウスが言いよどんだ。
エルはそれを急かさず、ガイウスが口を開くのを待った。
すると、考えをまとめたガイウスが再び口を開いた。
「ただ、その理由を思い出せない。俺はなぜこの世界に来たのか……」
ガイウスが遠くを見つめて再び考え込んだ。
エルは静かに隣を歩き、待った。
だがガイウスは口をつぐんだままであった。
すると、ついにルキフェルの城を出てしまった。
エルは仕方なくガイウスに問いかけた。
「どうする?」
するとようやくガイウスが口を開いた。
「決まってるさ。イリスの城へ行こう」
「そうじゃな。そこにユリアがいる可能性が、一番高いのじゃからな」
ガイウスはうなずき、ふわっと身体を浮かせると、爆発的な勢いでもって飛んだ。
エルは特に表情を変えることなく、同じように身体を浮かせると、後を追うように飛んでいったのであった。