Reincarnation Monarch

Episode One Thousand Five Hundred Ninety-Five: The Fox

「何だと?ここにはいないだと?嘘をつけ」

ガイウスが低くくぐもった声で言った。

するとイリスがガイウスの言葉の語尾を大いに笑った。

「馬鹿かお前は。なぜこのわたくしがお前如きに嘘を吐かねばならんのだ」

「何を言っていやがる。お前、ユリアを攫う時に嘘を吐いたじゃないか」

「ほう、そうだったか?覚えていないな」

「ふん、この嘘つきの女狐が!」

するとイリスが高らかに笑った。

ガイウスはイラッとした表情を見せ、さらに詰め寄った。

「何でユリアはここに居ないんだ?なら何でお前はここに居る?」

ガイウスの問いに、イリスがあごをクイッと上げ、傲然とした表情でもって言い放った。

「わたくしがここにいる理由を何故お前如きに言わねばならぬのだ?そんな義務はわたくしにはないわ」

するとガイウスが口の端をクイッと上げた。

「そうかい。じゃあ自分で考えるか……そうだな、じゃあユリアがいるのは……お前の新しい城なのかな?」

ガイウスがわざとらしく芝居口調で言った。

するとみるみるイリスの顔が変わった。

「……何故それをお前が知っている?……」

ガイウスは肩をすぼめ、またも芝居調に言ったのだった。

「さあて、なんでだったかな?よく覚えていないなあ~」

イリスは歯噛みしてガイウスを睨みつけた。

そして、ある考えに思い至り、イリスは苦々しげに言ったのだった。

「そうか……エルの奴だな?あの馬鹿者め……」

するとイリスが突如として自らが発していたオーラを収めた。

「ふん、まあいい。それならばそれで……」

オーラを収め静かになったイリスにガイウスは驚き、と同時に自らもオーラの放出を止めた。

「どうしたイリス?それならそれでって何の話しだ?」

ガイウスの問いに、イリスは答えなかった。

そして、ただつまらなそうな表情でもってため息を吐いたのだった。

ガイウスは予想外な展開に戸惑った。

「何だよ?どうしたってんだ?やるならやろうぜ」

だがそんなガイウスの挑発の言葉にも耳を貸さず、イリスは備え付けのソファーにどっかと座り込んでしまったのだった。

ガイウスは真剣に戸惑い、キョロキョロと視線をさまよわせた。

そしてガイウスはどうしたらいいか困った挙げ句に、イリスの向いにある木製の棚の上に仕方なしに腰掛けたのだった。