Reincarnation Monarch

Episode one thousand seven hundred and seventy-five, illuminate.

「……ご冗談を、アスタロト様……」

エルはそう言うのが精一杯だった。

アスタロトは視線を外し、漆黒の部屋を眺めながら言った。

「そうかい?総毛立たせるというのは、敵意があったときの行動なんじゃないかい?」

エルは毛を逆立てたままに頭を強く振った。

「いえ!いえいえ!そのようなことは、決して!」

エルは必死に自らの毛を押さえ込もうとした。

だが、やはり上手くはいかなかった。

エルは焦り、全身からとめどなく汗が噴き出した。

「ふうん、まあいいさ。あまり君をいじめても仕方がないしね」

アスタロトはやはりエルとは視線を合わせずに言った。

エルはホッと安堵のため息を発した。

アスタロトはチラリとエルを見た。

そしてニヤリとほくそ笑んだ。

「そんなことより、ガイウスについて話をしよう」

エルは自分に向けられていた矛先が変わったことに飛びついた。

「はい!ガイウスでございますね?どのような話しをいたしましょうか?」

「そうだな……君はガイウスが好きかね?」

意外な問いに、エルが困惑の表情を浮かべた。

「は?……いえ、まあ……そうですね……嫌いではありませんが……」

アスタロトは苦笑を漏らした。

「嫌いじゃないか……では好きではないと?」

さらなるアスタロトの問いに、エルがさらに困ったような表情となった。

「……いえ、まあ、好きといえば、好きかもしれませんが……」

「それは何だい?照れてでもいるのかい?」

エルはとぼけた顔をした。

「いえ、そういうわけでも……ないですが……」

「そうは見えないがね?」

「そうですか?……まあそういう感じもないではないですが」

アスタロトが再び苦笑した。

「つまり照れているというわけだね?」

するとエルが仕方なく観念した。

「……まあ、そうなりますか」

「そうなるね」

「はあ……ではまあ、そういうことで」

アスタロトは大口を開けて笑った。

「わかった。では好きということでいいね?」

「はあ、まあそうですね」

「素直に言いたくないのかい?」

するとエルが顔を少しだけしかめた。

「それはまあ、なんの拍子に彼奴の耳に入らんともしれませんので……」

「ガイウスの耳に入るか。彼は今、死んでいるんだけどね」

エルは急に思い出したようにアッという顔をした。

「は、そういえばそうでしたな……ですが、復活させてくださるのでしょう?」