Reincarnation Monarch
Lesson 225: Nosebleeding
デルキアは一気に速度を緩めた。
だがデルキアは知らなかったのだ。
ガイウスが自分の真後ろ、足裏すぐのところにいることを。
故にデルキアにとっても想定外であった。
両者が空中で激突する羽目になるとは。
しかもデルキアの足裏が、ガイウスの顔面に見事なまでにヒットすることなど、考えてもみなかったことなのであった。
「ぐぶっ!」
ガイウスは突然迫り来るデルキアの足裏を避けきれず、口中から鈍い音を発するとともに勢いよく吹き飛んだ。
ガイウスは、そのあまりの衝撃に意識を失いかけるも、なんとか踏みとどまって態勢を整えた。
そこへ、デルキアの声が飛んできた。
「すまん!すぐ後ろにいるとは気づかなんだ!」
ガイウスはまだ顔面蹴打の衝撃に、目をパチクリとさせながらも、なんとか手を振って謝罪に応じた。
「あ、ああ。なんとか、大丈夫……」
ガイウスはふらつきながらも、なんとか中空で静止した。
デルキアは赤く染まったガイウスの顔を覗き込んだ。
「本当に大丈夫か?わたしが言えた義理ではないが、顔面が凄いことになっているぞ?」
ガイウスは右手で自らの鼻のあたりを触ってみた。
「……血だ。鼻血が出ているのか?」
「うむ。ド派手にな」
ガイウスは上を向いて鼻血が止まるのを、待つしかなかった。
「……ああ、参った……」
ガイウスが思わず愚痴った。
するとデルキアが、不思議そうに尋ねた。
「それにしても、お前なんでわたしの足の先になんてところにいたんだ?」
ガイウスは上を向きながら、スリップストリームの説明をデルキアにし始めた。
デルキアはふむふむと感心しながら、その説明に聞き入った。
「ほう、そんなことが起きるのか。それは知らなかった」
デルキアはアゴに手をやり、何度もうなずいた。
だがそこでガイウスが、あることを忘れていたことに気づいた。
「あ!そう言えばドーブはどうした?」
デルキアも、そう言えばと、ドーブのことを思い出した。
「……置いてきぼりにしたかな?……」
「……したね……」
「そのうち、追いついてくるかな?」
「一応方角はわかっているはずだから、大丈夫だと思うけど……」
「ふむ、そうだな……」
デルキアはそう言いつつも、かなりまずいことをしたという表情を浮かべて、彼方の方角を見やるのであった。