Reincarnation Monarch

Episode 251 Sunset

1

ガイウスは商店街をゆっくりとした足取りで歩きながら、つらつらとダロスについて考えた。

ガイウスはそれまで、ダロスの憂鬱は不治の病だと聞かされていた。

それ故に、先程からの活気ある光景も、あくまで局地的な現象であろうと思い込んでいた。

だが今の女性の話しでは、どうもそうではないらしい。

ガイウスはあらためて街の様子をぐるっと眺め、今の話しをぐっと飲み込んたのであった。

「あ、そういえば王様の名前聞くの忘れた」

ガイウスは、あのダロスの憂鬱を脱さんとする英雄の名を聞きそびれたことを後悔した。

だがそれは、ダロスの人であったら誰でも知っていることであるため、知ろうと思えばすぐに知れることだと、思い直した。

「まあ、いいか」

そうしてガイウスは、しばしの間、街の探索をぶらぶらとするのであった。

2

「さすがに夜ともなると、人通りもかなり減るな……」

ガイウスは、宵闇に青黒く塗られた街並みを行き交う人々の少なさに、うら淋しい思いに少しばかり駆られた。

「さて、そろそろ戻るか……」

ガイウスは、冷たい石畳の上をコツコツとかかとを先に当てながら音を立ててリズミカルに歩いて、ホテルへと向かった。

「なかなか良い感じに涼しいな……」

ガイウスはホテルまでの道のりを、夕涼みしながら気ままに歩いた。

すると、道の先で何やらうずくまってうごめいている者の姿が目に飛び込んできた。

ガイウスは、何事かとばかりに駆け出し、その者に近づいた。

それは近づいてみると、男のようであった。

だが、酔ってでもいるのか、男は不可思議な動きをしていた。

「大丈夫か?!」

ガイウスはその男の様子に、尋常ならざるものを感じ取り、声を掛けた。

だが返事がなかったため、ガイウスは思わずその者の背に手を掛けた。

すると、突然男の背中がバックリと割れた。

そして、手を掛けていたガイウスの左腕に、ガブリと齧り付いたのであった。

「くっ!!」

ガイウスはすかさず左腕を引き抜こうとした。

だが腕には、男の背中に現れたサメのような鋭い歯がいくつも食い込んでいた。

「クソっ!」

ガイウスはそれでも引き抜かなければ埒が明かないとばかりに、必死になって引き抜いた。

「ぐはっ!!」

するとガイウスの左腕はなんとか引き抜けたものの、夥しい血の量によって真っ赤に塗られていたのであった。