Rice for Enoch’s Second Expeditionary Unit

Insertion Urgas's Second Troop Observation Diary

 〇月×日

 アートさんとリヒテンベルガー魔法兵がいなくなると聞いて、驚きました。

 アートさんは第二部隊の清涼剤で、ルードティンク隊長に怒られている時も、いつもかばってくれました。

 アートさんは本当に、いいお姉さん……じゃなくて、いいお兄さんでした。

 悲しいです。

 リヒテンベルガー魔法兵はあまり打ち解けることはできませんでしたが、リスリス衛生兵やベルリー副隊長にとって、妹のような存在だったことでしょう。

 女性同士、共に辛い遠征を耐え抜く絆のようなものを感じることがありました。きっと、リスリス衛生兵やベルリー副隊長は、寂しいに違いありません。

 新しい隊員は、良い人だったらいいと思っていますが……癖が強い人が来そうで恐ろしいです。

 〇月△日

 新しい隊員は、リスリス衛生兵と同じフォレ・エルフでした。

 銀色の長い髪を一つに結んだ、長身のイケメンです。名前はランスさんです。

 正統派のエルフという感じで、「我は森に住む、神聖なるエルフである」と今にも喋りそうな印象でした。

 しかし、性格は案外気さくというか、見た目に反してノリが軽いというか……。

 この前も、「都会の暮らしを知ったら、森には戻れねえな。森暮らしはクソだ」とか言っていました。

 エルフのイメージが、ガラガラと崩れていきます。

 入隊してから一年間、エルフのイメージを崩さないでいたリスリス衛生兵は、本当にすごいと思いました。

 □月▽日

 スラちゃんさんがすごい特技を覚えたそうです。

 体の中に空気を吸い込み、まんまるの体になります。そこから、空中浮遊を開始するようです。

 ガルさんがスラちゃんさんを持つと、僅かに体が浮きました。

 将来、もっと大きくなって、ガルさんと一緒に空を飛ぶことを夢見ているのだとか。

 □月〇日

 見習い騎士達の入隊式に参加してきました。

 歓迎パーティーで、「山賊だ!!」という叫びが聞こえ、緊張した雰囲気になったのですが、山賊はおらず、単にルードティンク隊長を山賊と見間違えただけだったようです。

 まあ、「山賊だ!」という叫びを聞いた途端、「きっとルードティンク隊長のことだろうな」と思ったのですが。

 山賊騒ぎのおかげで、お肉を得ることができました。

 なんというか、山賊……じゃなくてルードティンク隊長に感謝です。

 △月〇日

 今日、アートさんが差し入れを持って遊びにきてくれました。

 休日に、クッキーを焼いてくれたそうです。アートさんのクッキーは世界一おいしいというのが、リスリス衛生兵と話し合った結果です。

 久々に会ったアートさんは、髪が伸びていました。もう、遠征に行かなくてもいいので、再び伸ばし始めたのだとか。

 遠征中はお風呂に入れないので、手入れが大変そうでしたからね。

 ちなみに、アートさんは遠征中、お風呂に入れない日はいい香りがする液体を髪の毛にすり込んでいました。なんという美意識!

 △月×日

 ランスさんは、メイドさんからめちゃくちゃモテモテなんだそうです。

 『金のアート』さん、『銀のランス』さんと言われるくらいで。

 毎日メイドさんから声をかけられて、ちやほやされていて羨ましい。

 ちなみに俺は、下っ端のウルガスと呼ばれていることを知っています。

 この呼び名、酷くないですか?

 △月△日

 今日はベルリー副隊長がメイドさん達にモテモテの場に出くわしました。

 ちなみに、ベルリー副隊長は『白百合の君』と呼ばれているんだとか。

 なぜ、白百合なのかというと、ベルリー副隊長がメイドさん達の休憩室の差し入れに白百合の花束を持ってきたからだそうな。

 それでみんな、「きゃーすてきー!」となったらしい。

 たぶん、俺が同じことをしても、「その花束は拾得物ですか?」なんて聞かれるに違いない。

 ベルリー副隊長のように、花束を贈ることが似合う男になりたかった。

 いや、ベルリー副隊長は女性ですけれど。

 △月▽日

 リヒテンベルガー元魔法兵と、みんなで仕事帰りに食事に行きました。

「第二部隊のみんなに、逢いたかったの」なんて言っていましたが、視線は完全に幻獣のアメリアさんとステラさん、エスメラルダさんのほうにありました。

 相変わらずの幻獣好きっぷりです。

 しかし、元気そうでよかったなと。

 ◇月◇日

 訓練でバテていたら、アルブムチャンさんがやってきて、木の実をくれました。

 なんでも『ツカレテイテ、可哀想ダカラ、アルブムチャンノ木ノ実、食ベテイイヨ』とのこと。

 アルブムチャンさん、とっても優しい。

 感動していたら、思いがけない展開に。

 アルブムチャンさんはリスリス衛生兵のほうへ駆け寄って、『パンケーキノ娘ェ、オ腹空イタ』と訴えていました。

 リスリス衛生兵は「朝、木の実をあげたでしょう」と返します。

 アルブムチャンさんは、木の実はウルガスがお腹を空かせていたのであげたと主張。

 それを聞いたリスリス衛生兵は、仕方がないと言って、持っていたドライフルーツ入りのケーキをアルブムチャンさんに与えていました。

 いや、俺もケーキがよかったんだけれど……。

 こうやって、世は上手く渡っていくんだなと、アルブムチャンさんから勉強させてもらいました。

 俺も今度、真似してみようと思います。