超特進クラス専用の食堂は、城のそれよりも少しメニューが豊富で豪勢なものも増えていた。

なんでもダンジョンでの探索という作業を考えた時、腹もちや健康状態を良くするために必要だったらしい。

勿論、味も良く、かなり得した気分になれた。

そんなちょっと豪勢なメニューをリザの奢りで食べた俺たちは、しばらく休憩した後、再び、円卓のある部屋に戻っていた。

「リザさん。午後からはもう一度、俺たちで二代目魔王のダンジョンに潜るって事で大丈夫ですか?」

「うん、オッケーだよ。私は仕事を昨日のうちに仕上げちゃったから時間はあるし」

「ソフィアもそれで良いか? 体力面の心配とかあれば、ここで休んでいて構わないんだが」

「私も大丈夫ですよ、クロノさん。ご飯を食べたらしっかり回復しましたからね」

ソフィアもリザも準備は万端のようだ。

「それは良かった。午後は成果を見つけたいところだなあ」

「いやいや、クロノは十分、午前中だけでも成果出せてると思うよ?」

リザはそう言ってくれるが、稼ぎ的な意味での成果は出ているかもしれないが、奴隷をどうこうする成果は得られなかったのだ。

午後は、手掛かりくらいはつかみたいと思う。

……休憩中に歴代魔王が作ったという魔王のダンジョンに置かれている宝のデータ表は覗かせて貰ったけどな……。

結局、奴隷解除が出来る道具の名称が『打ち消しのタクト』だということしか分からなかった。

だから、置かれている場所は足と手で探らなければならない。

一応、昔にもぐっていた人が持ってきた情報などを合わせてマップは作られているが、探索しきれていない部分も当然あるわけで。特に五階層以降はほぼ空欄という有様だ。

漁り甲斐というか、マッピングのし甲斐はある。

ただ出来れば、今日も午前中から潜っているという先輩に会って、マップのアップデートなどもしたいな、と思う。

……確かサラマードという人だったっけな。

そう思って円卓に置かれた探索予定表を見たのだが、

「ん? ……リザさん。朝から二代目のダンジョンにもぐっている人って戻ってきてますかね?」

その人が返ってきた記録が書かれていなかった。

既に探索終了予定時刻からは三時間以上が経過している。

俺の言葉を聞いたリザは、予定表を見て首をかしげた。

「え? あ、本当だ。戻ってきてないね」

「書き忘れとかですかね?」

「いや、魔王のダンジョンから戻ってきたら自動的に記入されるから、それはないよ」

帰還記録のない予定表を目にするリザの表情は、少しだけ真剣なものになった。

「この場合はどうするんですか?」

「うん、手が空いている人が探索ついでに捜索することになるね。大半が、ダンジョン探索に夢中になって時間を忘れているだけなんだけど、怪我をして動けなくなっていることもあり得るからね。魔王のダンジョンは、ああ見えて危ないし」

「そうですね。私もクロノさんとリザちゃんがいなければ傷を負っているくらいには、厳しい環境でしたし」

確かにキノコの襲撃は木の棒で切り抜ける事は出来ていたけれど、あの物量が最初から押し寄せて来たのだ。

奥に行けば、あれ以上の脅威があってもおかしくは無い。

「となると、俺たちが潜って、その人を探すってことになるんですかね」

「そうだね。あくまで主目的は探索で良いけれど……出来れば見つけてくれると嬉しいかな。多分何事もないから私が叱るだけになると思うけどね」

「まあ、そうですね」

サラマードと言う人は、少なくとも俺たちよりも深い地点まで潜っているわけで。

色々な情報を持っているだろう。

だとしたら、何事もなかったのだとしても、探索するついでに出会って情報交換しておきたい人でもある。

「それじゃあ、目標は遺産の探索と人の捜索ということで。そんな感じで良いかな、ソフィア」

「はい、私は問題ないというか、初心者ですので! クロノさんに付いていきますよ!」

俺も俺で初心者なので過度な期待はしないでほしいのだが、とりあえず目標設定は出来た。

「それじゃ、道具の準備とかが済んだら行きましょうか。リザさん。ソフィア」

「うん、レッツゴーだよ、クロノ! ソフィアちゃん」

「は、はい、了解です!」

そうして俺たちは、再び二代目魔王のダンジョンに入ていった。

魔王のお宝だけじゃなく、人を探すために。