「あの、あの。素敵なドレスを贈っていただき、ありがとうございました」

つっかえながらもなんとかお礼を言えたのに、レオさんは私を凝視したまま、口をパクパクと開けたり閉めたりしている。

どうしよう。

まるでルーフェスみたいな反応だわ。

急激に不安が高まっていくのを感じる。レオさんを見つめていた顔は、自信のなさと比例して、次第に俯き、ついに床しか見えなくなってしまった。

どうしよう。

沈黙が怖い。ああもう、部屋に戻ってしまいたい。でも、さすがにそれは無理だわ。内心引きこもりたくなるのをぐっとこらえて、私は一生懸命に口を動かした。

「あ、あの。とても可愛らしいドレスだったので、私、とても嬉しくて……」

なにか話さなければと思うのに、気の利いた言葉が出てこない。こんなとき、グレースリア様ならきっと、優雅にお礼の言葉を告げられるだろうに。いいえ、もしかしたらユーモアを交えた会話で場を和やかにしてしまうことだってできるかも。

ふがいなさに涙がじんわりと滲んだときだった。

「……可愛い」

レオさんのほうから、押し殺したような小さな声が聞こえてきて、私は恐る恐る顔を上げる。

「可愛い、想像以上に可愛い」

「…………!」

私を見つめたまま、レオさんははっきりとそう口にした。思わず横のシャーリーを見たら、「うむ」とでも言いたげに深く頷いている。

いまの、いまの、聞き間違いじゃないよね?

「めっちゃ女神」

私の不安を取り払うように、レオさんが嬉しそうに笑ってくれた。目尻が下がって、心底嬉しそうに見える。

よ……よかった。あのお顔はきっと、本当に嬉しいときの笑顔だわ。

今度は安心しすぎて体の力が抜けていく。

ああ、今日はもう、気持ちの上がり下がりが激しすぎて身が持たないのだけれど。

「おっと失礼、つい心の声が」

照れくさそうに笑って、レオさんが手を差し出してくれた。

「クリスティアーヌ嬢、本当に、言葉を失うほど可憐で綺麗だ。……ああ、語彙力がないのをこんなに悔やんだことはないよ。言葉を尽くして可愛いとか美しいとか全力で讃えたいのに、いまの気持ちを表せる言葉が思いつかない」

レオさんらしい物言いに、緊張の糸がスルスルとほどけていくのが感じられる。

歯の浮くような美辞麗句を並べられても、赤面する自分しか想像できないから、レオさんのくだけた反応がむしろありがたい。

おかげで天国と地獄をいったりきたりしているような激しい気持ちの乱高下もすっかり収まって、私はようやく笑顔になれた。

「ちょ……笑顔が眩しすぎる」

またもなにかレオさんが呟いているけれど、私の心臓はもう不安を訴えたりはしない。レオさんが差し伸べてくれた大きな手に、私もそっと手を添える。

レオさんがパートナーで、私、本当に幸せだ。