Shinario-dōri ni Taijō Shita no ni, Imasara Nan no Goyōdesu ka?
That's about it for the joke.
「冗談はこれくらいにして」
「へっ?」
冗談だったのか? とポカンとするルーフェスをあえて無視して、コーティ様はいちはやくテーブルについて、ナイフとフォークを優雅に手にする。
「せっかくの料理が冷めてしまいますから、そろそろ食事にしましょうか。ここの宿の料理は、なかなか美味ですよ」
にっこりと笑うコーティ様の様子に、ルーフェスは目をぱちぱちと瞬かせることしかできない。
私から見たら、ルーフェスは我が弟ながらとてもしっかりしている子だと思うのだけれど、コーティ様にかかるとこうして簡単にあしらわれてしまう。
道中でも、よくこんな光景を目にしたけれど、さすがに年の功というか、経験値が違うといったところなのだろう。
「そうですね、朝からの情報収集で色々分かったことがあると先ほどおっしゃっていましたし、私もコーティ様のお話を聞きたいですわ」
ルーフェスの体調も随分と回復しているようだし、そうなってくると気になるのは調査内容と、レオさんのことだもの。ここは一刻も早くお話をお聞きしたい。
私がテーブルについたのを見て、ルーフェスもしぶしぶテーブルについた。その足取りは昨日とは比較にならないほどしっかりとしていて、それだけで私は随分と安心できる。
「良かった、昨日より随分と体調が回復したようだわ」
「当たり前だよ。しっかり眠れさえすれば、あんなには疲弊しない。食欲もちゃんとあるよ」
食事を口に運ぶ顔は、もういつものルーフェスで、昨日までのような弱々しさは感じられない。表情にも、いつもの挑むような色が見え隠れしていた。
「良かった、それでは私が朝からの調査で得た情報を共有しましょう。お二人とも、それが一番気がかりでしょうからね」
コーティ様はさすがに仕事が早い。一言でいうと、そんな調査内容だった。
なんせコーティ様はたった半日の調査で、この町でレオさんがいつこの町に到着し、現在どの宿屋を利用しているのかだけでなく、この町に危険な商組織があるかどうかまで、あっさりと調べ上げて来ていたのだから。
「それでは、商組織などはないということなのですね?」
「ええ。八百屋、果物屋、薬屋、乾物屋、雑貨屋……そういった、この小さな町に相応しい、善良な商人ばかりでした。そもそも百人規模の街ですから、あったとしてもさほど大きなものではないだろうとは想定していたのです」
「ただ、人数は小規模でも、利益のためには人を殺すこともなんとも思っちゃいないような輩が集まってる場合もあるからね、多分それを心配していたんでしょ?」
「その通りです。ですから、その危険がないことが確認できただけで午前中の成果としては十二分だと思っています」
「良かった……」
思わず、心の底からの声がでた。
とりあえず、レオさんが危ない目に遭うということはない、それが分かっただけで安心感が格段に違うんですもの。