Shinario-dōri ni Taijō Shita no ni, Imasara Nan no Goyōdesu ka?
Just give me back my jewels.
「どう見ても王都で採れる宝石、メルセリエですよね。この町に大量にあるのはおかしい」
「なにがおかしい。王都から来た行商人から買い取ったんだ。問題ないだろう」
ガルア様が憤慨したその時、聞いた事のないダミ声が、上のほうから聞こえて来た。
「おいおい、にーちゃん。いつまでかかってるんだぁ? 外が騒がしいって出てったっきり戻って来やしねえ。こっちも忙しいんだがなぁ」
炭鉱前の山小屋から、のしのしと歩いて来るのは、、岩のような筋肉をもった屈強なお爺さんだった。
レオさんが「すみません」と謝っているところを見るに、きっとレオさんと商談中だったのだろう。
……ということは、商談中だったと言うのに、レオさんは騒ぎを聞きつけてかけつけてくれたのね。そう思うと、その気遣いにほんわかと胸が暖かくなる。
その時点では、騒ぎを起こしているのが私だとも分かっていなかった筈。
商談で訪れた勝手も分からぬ町で、見も知らない相手のもめ事を仲裁しようと飛び出してきてくれたのだろう。
レオさんの親切心には、頭が下がる。
思えばレオさんは最初に会った時から、明るく話しかけて、冗談を言っては笑わせてくれた。いつだってそんな優しさに救われていたんだもの。
あれは、本当に嬉しかった……。
こんな時だというのに、なぜか出会ったばかりの頃のことが思い出されて、少しほっこりしてしまう。
そんなレオさんだから、この短期間ですっかりこちらの鉱山のお爺さんとも仲良くなっていたみたい。気安い様子で話しかけながら、鉱山のお爺さんがズンズンこちらに近づいて来る。
そして、その足が途中ピタリと止まった。
「おー、なんだお前らもいたのか。買い付けに来たのか?」
なんと、鉱山のお爺さんがリナリアさんたちに向かって、親し気に手を上げる。
リナリアさんたちは、一瞬気まずげな顔をしたけれど、それは本当に瞬間で、すぐにいつもの輝くような笑顔で相手に手を振り返す。
「こんにちはー! よろしくお願いします!」
「おう、今日が最後だって言ってたなぁ、粒のいいのを揃えてるぜ、たんまり買ってくんな!」
「あ……上客が減るって言ってたのは、まさか」
鉱山のお爺さんの言葉に、レオさんが反応する。
お爺さんは悪びれなく人のよさそうな笑みを浮かべて、事情を話してくれた。
「そうそう、この二人がここ数カ月、がっつり買い付けてくれてたんだがなぁ、もっとデカい街に拠点を変えるっていうからよ。こっちも新しい客を探さねえと、って思ってたところだったんさ」
「拠点を変える……」
「なによ、当然でしょう。宝石の需要が高い港町に拠点を移すのよ。なにか問題ある?」
フン、と鼻を鳴らしてリナリアさんが右手を差し出した。
「さあ、さっさと宝石を返して。私がお金を出して買ったものよ、アンタたちに取り上げられる謂れなんかないんだから」