もちろんそれからカーラは毎日うちで働いてくれることになった。

元気で気っ風がいいから、うちの常連さんたちにもあっという間に可愛がられるようになって安心だ。クリスの友達だってのも可愛がられる理由の一つなんだろうね。

平日だけじゃなくって土・日も働いてくれるし、クリスと二人揃う日なんか、店に入りきらないんじゃないかってくらい客が多くてさらに繁盛するから、あたしも厨房にこもりっきりってことも多くなった。

本当にありがたいことだ。

そんなある日のこと。今日はクリスも来ている週に一度の大忙しの日なもんだから、あたし達は朝から大忙しでクルクルと動き回っていた。常連達もわきまえたもんで、簡単なものを頼んでクリスやカーラとひといき話しては満足して帰って行く。

回転が速くって助かるよ、ほんとに。

そうありがたく思いながら料理を作っていたら、急に店の中がわあっと賑やかになった。何事かと思って厨房から身を乗り出して見てみれば、そこには意外な顔が二つならんでいる。

「オーズさん! コーティさん! お二人が一緒にお見えになるなんて珍しいですね」

クリスも目を丸くしてるってことは、本当にこの二人が揃ってってのは稀少なことなんだろう。それにしても違和感が凄いねぇ。

オーズは屈強な冒険者たちでもビビるくらいにガタイのいいひげ面の武器屋の親父、一緒に連れ立ってる……クリスがコーティと呼んだ男は、虫にも悲鳴を上げそうな色白でなよやかな印象だ。強いて言うなら魔術師のセルバにちょっと似てる感じだろうね。

「コーティがよぉ、クリスが働いてる店に行ったことがねぇなんていうから、連れてきてやったのさ」

「すみませんね、突然」

豪快に笑うオーズの横で、コーティは苦笑している。おおかた無理矢理引っ張ってこられたんだろう。

「ここにゃあ冒険者も商人も、下町の色んな層の人間がたむろしてるからなぁ。市井官のアンタも顔見せといたほうがいいと思ってなぁ」

「あ、確かにそうですね。このところはホラ、学生さんも多くなったんです」

「本当ですね……」

ゆったりと周囲を見渡すコーティ。でも今、市井官って言ってなかったかい?

「市井官って、まさか」

「はい! 私の上司になる方です」

「こう見えて、切れ者だし腕もたつんだぜ」

オーズとクリスにそう紹介されて、あたしも慌てて頭を下げた。「クリスをよろしくお願いします」ってさ。あたしはクリスの親じゃないけど、やっぱり可愛いし心配だ。この子が仕事場で少しでも楽しく働けるように、印象はよくしておきたい。

「おっ! 新顔が増えてるじゃねーか。繁盛してるんだなぁ」

オーズがカーラに目をとめて、そう褒めてくれた。せっかくいい娘に入ってもらったんだ、カーラも紹介しておこう。