Tate no Yuusha no Nariagari (WN)
catalyst
「そうですな。虎男の方が肉体的には亜人ですが精神は人に近く、虎娘は心が亜人との話ですぞ」
この理屈だと虎娘の方がお義父さんの魅力に……最初の世界の虎娘化するはずですな?
「私は尚文様のお姿が変わっていると聞いても輪郭しかわからないので……」
「なるほど、目が見えないからこそ外見の変化の影響を受けていないという事ですか」
「こんな事の考察をされてもな……」
「元から尚文様に関して気になりますが、あまり踏み込みすぎるとご迷惑になりそうですし、ここで失礼させて頂きますわ」
ここで引き下がってはいけませんわ! と、最初の世界の虎娘が抗議しているような気がしますが、虎娘はそのまま一礼して去って行きましたぞ。
「それで……何か進展あった?」
「ラフえもんさんがガエリオンさんを探しに出て、リーシアさんが魔法に使った触媒を調べています。元康さんが尚文さんをガエリオンさんに会わせたくないと言ってますね」
「サディナ達の様子から親しい奴らが最も危険なのは間違いないかもしれないな」
「錬もね。ルナちゃんにすり替えを行ったのがばれたら追ってくるんじゃない?」
ひぃいい……錬を連れてるとあのルナちゃんが来るのですかな?
「錬、しばらくルナちゃんの飢えが満たされるまで生贄となるのですぞ」
「ふざけるな元康! むしろお前が行ってこい! フィロリアル好きなお前なら平気だろ!」
「ひぃいい!」
「元康くんが珍しく悲鳴を上げてる……病んだ子が苦手って本当なんだなぁ……」
「病んだフィロリアルとなるとより強調されるというところでしょうか」
あのルナちゃんはあの時のフィーロたんと纏う空気が似てて苦手なのですぞ。
どうしたら良いのですかな?
「とりあえずガエリオンさんが来たら僕が応対しましょう。元康さんではガエリオンさんと話が通じるかわからないですから」
などと話していると外から声が聞こえてきましたな。
「なおふみ達が開拓生物の姿に成って戻れないって聞いたなの」
「うん」
ここで樹が挙手して家から出て行きますぞ。
「ああ、ガエリオンさん。尚文さんをサディナさんたちが見た所我を忘れたのであなたが尚文さんを見たら何処かへ攫っていってしまう可能性があります。なので僕が事情を話しますね」
「その声、弓の勇者なの? 随分と奇妙な状態なの、ともかくわかったなの」
などと樹が話をしていると助手が家に入ってきましたぞ。
そして助手は俺たちをマジマジと見つめますぞ。
「盾の勇者に魅力効果……?」
助手はお義父さんを見て首を傾げておりましたな。
「ウィンディアちゃんには効果ない感じかな?」
「たぶん?」
「何処まで信じられるかわからないですよ。それでウィンディアさん。何か知っている事はありませんか?」
「私は無いけどちょっと調べさせて」
助手はそのまま俺達の触診をしていきますぞ。
「魔物……のような、なんか違うような……? 掛かっている魔法は……んー……」
触診を終えた助手はライバルの元へと戻って行きましたぞ。
入れ替わりに樹が家の中へと入ってきました。
「ガエリオンさんに魔法で調べて貰ったのですがよくわからないとの話でした」
「役に立ちませんな!」
いざって時に役に立たないドラゴンですぞ。
「ただ、おそらく勇者が使用する正式な魔法の類だろうとおっしゃっていて、触媒が怪しいとリーシアさんの方へと行くそうです」
との話でどんどん村の中がざわめき始めましたぞ。
それから対して時間が掛からないうちにリースカが触媒を持ってやってきました。
俺と樹が家から出て話をすることになりましたな。
「槍の勇者……随分とかわいらしい姿になっちまったなの」
ライバルが俺を見るなり口を押えて馬鹿にするように言いましたぞ。
「うるさいですぞ! ブリューナクしてやりますかな! そもそもあれだけ普段有能アピールして解決出来ないのはどういう事なのですかな!」
「弓の勇者に人の姿になる魔法を掛けようとしたら聖武器の防御機能で弾かれたなの」
「武器が認めた魔法って事なんでしょうけど、なんでこんな事に……」
「とにかく、ちょっと調べた所だとこの触媒、四聖教会から貰ったものだってわかったなの」
「はい。どうやら勇者たちにと送られた教会に残されていた逸品だそうですぅ」
リースカが倉庫の管理票を片手に言いますぞ。
「ガエリオンが魔法で深く調べた所、勇者にしか扱えない勇者文字に使われる魔力が判明してるなの」
「過去の遺物って事なんでしょうけど……そういえばこの触媒……」
樹が触媒をまじまじと確認しますぞ。
はて……? なぜか俺も見覚えがあるような気がしますぞ。
「ルナさんは来てませんね。錬さん、ちょっと来てください」
「なんだ?」
錬が呼ばれて家から出てきますぞ。
おや? 家の中ではモグラが裁縫をしておりますぞ。
ルナちゃんの飢えを解決させるために錬をモデルにぬいぐるみを作っているのですな。
キールのぬいぐるみは確かにモグラが作っていたので良い方法かもしれないですぞ。
俺も手伝いますぞ。
「二人とも大丈夫?」
「はい。どうにか……落ち着いてます」
「うん。勇者様、かわいいです」
「ぬいぐるみを作って売れば人気が出そうです」
「イミアちゃん……」
仲良さそうですな。
「あー……キールそっくりなの。なるほどなの。イヌルト着ぐるみは模様違いでキールになるなの」
ライバルが錬の姿に納得するように頷きましたぞ。
「だからキールって誰だ。なんか聞いた覚えがあるが」
「この村にいるはずの奴なの。ただ、このループじゃ見つからない奴なの」
「……」
ライバルの返答に錬は黙りましたぞ。
確かにキールは探しても見つかりませんですからな……他のループだとすぐに見つかるのですがいないのですぞ。
「話は戻すけど、人間が使うポリモーフという魔法は時間経過や解除魔法、他に戦闘行為をするだけでも解除されるくらい不安定な魔法なはずなの」
「では僕たちも戦闘行為、運動すれば魔法が解けると?」
樹の疑問にライバルは首を横に振りますぞ。
「だけど今の勇者たちに掛かっている魔法は非常に安定しているなの」
「困りますよ。勇者揃って開拓生物に変身してしまいましたって何の冗談ですか!」
「だからガエリオン達が調べてるなの……うーん」
ライバルとリースカが触媒に使われた機材を調べておりますぞ。
「錬さん。この触媒に見覚え無いですか? 僕もパッと出てこなくて気づかなかったのですが、元康さんも覚えがあるらしいんですよ」
「ん?」
「何か知ってるなの?」
「ちょっと借りますね。逆に尚文さんにも確認してもらいましょう」
樹がライバルとリースカから触媒となった道具を持ってお義父さんの元へ行きますぞ。
「あ、三人とも話は終わった?」
「いえ、ところで尚文さん。この道具は、僕たちが使うまで覚えがありませんよね?」
「え? まあ……こんな触媒があるんだなーって感じで覚えなんて無いんじゃない?」
お義父さんの返答にやはりと樹は答えましたぞ。
んー……俺も何か見た覚えがあるのですが何なのか出てきませんぞ。
「おそらく魔力触媒として便利だからと本来とは別の用途で使われていた品だったという所でしょうかね」
「樹、何なんだ? 知っているなら勿体ぶらず教えてくれないか?」
「そうですぞ」
お義父さんは覚えがなく、俺と錬には覚えがあるかのような話ですぞ。
……おや? この構図、心当たりがありますぞ。
「もしやゲームをプレイしたころの話ですかな?」
「元康さんも気づきましたか、ええ……イベントアイテムとしてですが僕もやっと思い出せたんですよ」
「んん?」
錬がマジマジと樹の持つ触媒を確認しながら思い出したようにうなずき始めましたぞ。
「ああああ! わかったぞ、樹!」