次にマサルが気がついたのはノームの集落の入り口だった。2本の木の棒の間にオオトカゲの皮を張った簡易的な担架(たんか)はマサルが避難時に病人や怪我人がいた場合に避難に使う時にと作った物だ。それに乗せられ四人の獣人の手によって集落へと帰還している最中だった。

「降ろしてくれ、1人で立つよ…。」

そう良いながら切っていた額や身体にヒールをかけていく。

「いいから乗っておけ!戦いに役に立たなかったんだ、これくらいさせろ!」

怒られてしまった。

「でも格好悪いじゃんか…せっかくの凱旋が担架の上なんてさ…。」

「1人で勝手に戦いにいった罰だ!確かにオレたちは足手まといかも知れん、だがな囮や時間稼ぎくらいの役にはたつのだぞ!」

苦笑混じりに言ってみたが更に怒られてしまった。

「だから連れて行かなかったんだけどね…囮や時間稼ぎの為に命を捨てる覚悟なんか要らないんだよ。必要なのは何が何でも生きて帰る覚悟だけさ。」

「そう言っても1人で戦って死にかけたヤツの台詞じゃあ説得力がないからな。取り敢えず黙って休んでろ!」

それ以上言っても仕方ないし疲れたのでお言葉に甘えさせて貰って少し休む事にしよう。…目を閉じて担架で規則正しく揺れながらじっとしていると眠くなってきて…あぁ…おやすみなさい…。

と完全に眠りに落ちかけた時、いきなりボディブローが炸裂した!

「ぶわはっ!??何だよいきなり!?」

「おはよう、無事にあの熊は倒せたの?」

もちろん犯人はアデリナだ。せっかくの戦士たちの心遣いが台無しである…ほら、戦士たちがドン引きしてるじゃないですか!

「あぁ、一応生きて倒せたよ…実はなあいつら番(つがい)でな、2匹いたんだ。1体を倒したらもう1匹出てきて倒したのが雌で後から出て来たのが雄なのかぁ…ってぼんやり一瞬考えてたらやっぱり本気(ガチ)で怒ってて殺されかけた。」

全員絶句である…あんなデカい熊が2匹もいたなんて思いたくもないよね。俺も会いたくなかった。

「そうだったマサル…その魔熊の死体はどうなってる?一応何人かの狩人でマサルのいた場所の辺りを探させているんだが見付かってないみたいなんだ…何か急に死体が消えたとか何とか言ってるヤツもいるがあのクラスの魔獣となると素材の価値は計り知れないからな。」

獣人の戦士が申し訳なさそうに言う…名前なんだっけこの人…。それよりも、やべっ!2匹ともアイテムボックスの中だから探しても絶対出て来ないんだけど…。

「じゃあ、狩人たちは帰還させてくれ…実は特殊なスキルを持っててな…死体は2匹とも俺が持ってる…。」

流石に森で見付からない探し物をさせ続けるのは可哀想過ぎる…さっきまで熊がいたから他の生き物はいないだろうけど危険も勿論ないわけではないだろうし、早く帰って貰った方が良い。

「ねぇ、早く見せてよ!その辺りにぱぱっと出しちゃって!」

大興奮しているアデリナは放置しておこう。

「じゃあ、俺は少し寝るよ…今回は本気で疲れたからな。」

「ちょっと!獲物のお披露目は!?」

「皆が帰ってきて一息ついてからな…そんなに焦らなくても死んでる熊は逃げはしないさ。アデリナはご飯の準備しといてくれよな…ほら、これなら出してやろう!雌の熊が食べてた馬だ!ちょっと頭は半分くらいないけどな♪」

雄の熊から逃げる時に雌の熊の回収と一緒にどうやら無意識で拾ってきたらしい…なかなか気合いの入った貧乏根性過ぎて自分が自分で笑える。

「食べれるの?」

「知らん…っていうか食べるのか…いつ殺したのか分からないから解体して素材だけにしとけば?あっ、ちょっと待って…。」

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【アサルトサバンナホース】

魔素が異常に溜まって変異した馬が進化した変異種。鋼鉄より固く鋭い角を持ち見付けた敵対生物や獲物を突き刺して殺す。肉食。

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「肉食って…えっと角以外は好きにしていいや…アデリナ、こいつ肉食だからそんなに旨くないと思うぞ?」

「了解、角だけ返せば良いのね♪…にしても馬の癖に肉食とか…こんなに可愛い顔してヤバいヤツなのね。」

頭半分喰われてる馬の顔みて可愛いって…いや、考えたら敗けだ…考えるな!考えるんじゃないマサル!寝床に帰って寝よう…もう疲れたって言い訳しながら寝て忘れてしまおう。

本当に疲れきっていたマサルが目覚めたのは丸1日が過ぎてからだった。