「やっぱり異世界なんて普通の人間には荷が重いのかなぁ…マサルさんみたいなチートじゃないと無理なんじゃないかな。」

「そんな事ないわよ。特殊な力なんてなくても誰だって特別にはなれるわよ?」

ぼやくミコトに声をかけてきたのはアイラセフィラだった。

「貴女は…………。」

「ん?あぁ、ビクティニアス姉様の妹でアイラセフィラよ。ちょっとマサルに用があって降りて来たんだけど、何やら悩める少年がいたから声をかけたの。」

「女神様!?」

マサルの周りにはどれだけの美女がいるんだと理不尽を目の当たりにして少し落ち込むも、こうしてその美女と接する機会が訪れた事に気分は上がっていく。少年の複雑な心境だ。

「で、貴方は何か凄い事がしたいと思ってるの?」

「別に凄い事がしたい訳じゃあないんだけど、同じ日本人の人がいて…比べてみると何から何まで手が届かないから悔しいっていうか何て言うか…。」

「えっと、ミコト君だっけ?貴方凄いのね?」

突然、凄いと称された事に何を言われたか分からず、目を白黒させていると、

「普通の人はマサルを見て、自分と比べて劣等感なんて持てないのよ?ヴィンターリアには彼に負けている事が悔しいなんて言う人はいないわ。だって、神の一柱だもの。ううん、その前から彼に勝ちたいなんて誰も言わなかったわ…故郷が同じってだけで、そんな大それた事を普通は思わないし、言えないわよ。それは多分、まだ貴方は何か一つくらいなら勝てるかもって思えてる証拠よ。それは凄く大変な事だし、凄く大切な事だわ。」

「何か一つくらいなら…確かに完璧な人間なんていない…一つくらいなら勝てる…いや、ビックリする様な事が出来るかも!」

何か吹っ切れたミコトはお礼を言おうとアイラセフィラに振り返る。

「ありがとうございます。何か自分にも特別が見つかるかも知れません。」

そう言って深々と頭を下げて立ち去るミコトの背中を優しい眼差しで見送るアイラセフィラ。

「産まれて来たらそれはもう誰かにとって、特別なのよ。」

そう呟くのだった。