『先生……助けて、先生……』

バッと体を起こす。

今はフィーと交代で軽く睡眠をとることにしている。そして、今はちょうど俺の番だったのだが……アリスの声が聞こえてきたのだ。

いや、聞こえてきたという表現は正しくないのかもしれない。

それは俺の頭の中に直接響いたような……そんな感覚。もちろん、すぐにフィーに確認をとる。

「フィー、聞こえたか?」

「え……なにが? 急に起きてきたと思ったら、どうしたの?」

「やはりそうか……」

そして、フィーにいま起きた現象について説明することにした。別にこれは初めてのことではない。この地下空間に降りてくる直前にも、アリスの声は聞こえていたのだ。

その声が聞こえるのは俺だけ。一方で、フィーのやつは聞こえていない。

これは何かあると考えるのが妥当だろう。

「そっか。なるほどね。もしかして、アリス王女がエルに直接呼びかけているとか? 手段はちょっとわからないけど」

「そうだな。声も、俺に助けを求めるものだった。そう考えるのは、妥当かもしれない。ただ呟いている言葉を拾っているとは考えにくいしな」

「そうね。さて、次は私が寝るわね」

「あぁ。ほら、俺の膝を使うといい」

「う……じゃ、じゃあ……失礼して」

仮眠とるといっても、ここには寝具などありはしない。俺も仮眠を取るときは、フィーの膝を借りていた。

ということで交代になるので、素直にフィーに膝に頭を乗せるように促す。

すると、彼女の頭が膝に乗ると……そのままじっと動かなくなる。しばらくすると、フィーの寝息が聞こえてくる。

すぅ、すぅ、と寝息を立てているがよっぽど疲れていたのだろう。こんな状況だ。疲れが溜まるのも仕方がないだろう。俺も仮眠を取ることになって、すぐに寝たしな。

そして、一人で改めてこの状況を整理する。

まずはアリスがどこにいるかだ。この地下空間にいるのは間違い無いと思っている。それは、あの声が近くなっている感覚があるからだ。聞こえる間隔も近くなっている。

それは、あの青い光と同様だった。あの光に近づくと、アリスの声が聞こえる。

いや、そう考えると……もしかして、あの光はアリスそのものなのか……?

と、そうした瞬間にその光が急に瞬くように輝き始める。

「光が……」

その眩い光は、さらに勢いを増していく。俺は慌てて、フィーの体を揺する。

「フィー、おい。フィー」

「ん……もうそんな時間……? 早く無い」

「あれを見ろ」

「え……? なんかめっちゃ光ってるけど」

「行ってみよう」

「ちょ!? エルっ!!?」

俺は何かに駆り立てられるかのように、その光に向かって駆け出すのだった。