「えっ!? 何か問題でもありました?」

「え……え?? えーと…… シリウス様の魔物討伐履歴からギルドポイントを付与したところ、Dランクまで引き上げられました。本当はそれ以上のポイントが溜まっていたのですが、一度に上げられるランクは二段階までと決まっておりまして…… ところで六年前にAランクの魔物を討伐していると履歴にあるのですが…… あれ、ギルド石壊れたかな……?」

なるほど。あの魔石、ギルド石か、は過去の魔物討伐履歴が閲覧できるようになってるのか、ハイテクだな。

しかし子どもの頃から隠れて魔物を狩っていたから、それがバレるってのは結構問題な気がする。

「あー…… 六歳の頃、偶然村に現れたゴブリンロードをたまたま倒したんですよ。まぁ、気にしないでください!」

「たまたま……? ゴブリンロードってたまたまで倒せるものなんですかね……?」

「ラッキーで倒せちゃいましたね」

「倒せちゃいましたって…… シリウスさんって一体何者…… ゴホンッ。い、いえ、分かりました! 詮索はいたしません! それではこちら身分証のお返しと、発行したギルドカードになります。冒険者ギルドにある素材売却カウンターと預金カウンターを利用される際にはこちらのカードを提示して下さい。売却費はギルドカードに振り込まれますので、現金にしたい場合は預金カウンターから引き出して下さい。また、ギルド内の飲食代やギルド公認の武器防具屋、道具屋、宿屋などではギルドカードでの支払いも可能です。何かご不明な点等ございますか?」

なるほど、ギルドカードはキャッシュカード兼クレジットカードのような感じなんだな。

しかしこの世界、科学的には未発達だと思っていたけど、魔術や魔道具のお陰かこういうところは異常にハイテクだな。

「ありがとうございます。魔物の解体もお願いできると聞いたのですが、解体と売却を同時に頼む場合も素材売却カウンターに持っていけばよろしいのでしょうか?」

「はい、素材売却カウンターから解体所にご案内する形となります」

「なるほど、分かりました。あと、こちらにオリヴァーさんって方はいらっしゃいますか? 以前に冒険者ギルドを紹介してくださったので、ご挨拶しておきたいのですが」

「えっ! ギルドマスターのお知り合いだったんですか!? わ、分かりました、呼んできます!」

セリアさんは驚いた表情を浮かべ、とてとてと受付の奥に走っていく。

ていうか、オリヴァーさん、偉い人っぽいとは思っていたがまさかギルドマスターだったとは……

セリアさんを待っていると、ギルド内のざわめきが耳に入ってくる。

「アステール…… どこかで聞き覚えがねぇか?」

「確か【雷神】がアステールとか言わなかったか……?」

「【雷神】って、十年ちょっと前に引退したあの?」

「【天剣】との子どもが出来て、二人とも引退したとかいう噂を聞いたことあるぞ」

「……おい、あの小僧、十二歳って言ってたよな…… まさか……」

「よく見ると小僧が下げているあの細い剣、刀とか言って【天剣】が使っていた記憶があるぞ!」

「さっきゴルディを痺れさせたのって、雷魔術だったよな?」

「刀と雷魔術…… おい…… やっぱり……」

所々しか聞こえないが、【雷神】とか【天剣】とか何の話だろうか?

そうこうしている内に、すぐにオリヴァーさんとセリアさんがやってきた。

「シリウス君、久しぶりじゃのう。早速冒険者ギルドに来てくれたんじゃな、ありがとう。ミラ君とレグルス君は元気かね?」

「「「やっぱり【雷神】と【天剣】の息子だーーー!!!」」」

ギルド内のおっさん達が急に叫び、吃驚する。

【雷神】と【天剣】の息子? どういう意味…… まさか、父さんと母さんのこと……?

思いがけず両親の厨二な二つ名を知ってしまい、笑ってしまう。

「え、えぇ…… 元気すぎるくらいですよ」

「ほっほ、それは良かった。冒険者学校の入学試験まで後三日じゃが…… まぁ、シリウス君なら何の問題もないじゃろ。頑張るんじゃぞ」

「はは、それならいいんですけどね…… ありがとうございます、頑張ります!」

「また気軽に会いに来るんじゃぞ。ではの」

手のひらをひらひらさせながら、オリヴァーさんは去っていった。

「シリウス様は今度の冒険者学校の入学試験を受けられるんですね。頑張ってください!」

ニッコリと微笑みながらガッツポーズをするセリアさん。

「僕はまだ子どもですし、様付けなんてしないでください! 敬語もいりませんし」

「そうですか? それではこれからシリウス君って呼ばせてもらいますね」

そう言ってウインクしてくるセリアさん、あざとかわいいです。

冒険者登録が済んだので、今度は山越えで溜まった魔物の素材を売却するために売却カウンターに向おうと思って振り返ると、ゴルディが復活して立ち塞がっていた。

「……小僧、いや、シリウス…… さっきは、悪かった!! 酔っ払っていたとは言え、お前の実力も見抜けず、予想以上にやるからってムキになっちまった。しかも、恩人の息子に手を上げるなんて…… 本当にすまなかった。頼りねぇ先輩かも知れないが、何かあったら聞いてくれや。これでもBランク冒険者だからよ」

「気になさらないでください。ただあまり酒に吞まれすぎないように気をつけた方がいいと思いますよ。ゴルディさんは両親のことをご存知で?」

「違いねぇ、今日は飲みすぎた! 若い頃に無謀にも格上のダンジョンに挑んじまってな、怪我をして引き返せないわ食料も尽きるわで死を覚悟した時に、お前の両親に助けられたんだ。それから、俺も若い冒険者を助けられるような男になりたいって思ったもんだ。結果、調子に乗ってその息子に諌められてんじゃ世話ねぇけどな……」

「僕なんてまだ子どもですし、冒険者なんて無謀だって思われても仕方ないと思いますけどね」

「その発言が子どもじゃねぇけどな……」

まぁ中身は元おっさ…… お兄さんだからな、さもありなん。