The Road to One Day Be the Strongest
Lesson 1: Dreams and Reality
夢を、見ていた。
業火に焼かれ、紅蓮に燃え盛る街並み。
崩れ去る家に、泣きじゃくる小さな少年。
そして、天高く浮かび上がる『異形』。
まるでこの世の負の感情を全て掻き合わせたような『負』の塊は、ギロリと体中に浮かび上がる無数の瞳を少年へと向け、そして――
☆☆☆
――ぽつり、と頬に雫が弾ける。
いつもとは明らかに異なるその感覚に沈んでいた意識が一気に表層へと浮かび上がり、眉根を寄せ、呻き声をあげながらも、まだ寝させろと言ってくる瞼に鞭を打ち、何とか目を開いて上体を起こす。
の、だったが。
「……はっ?」
あり得ない現状に、限界まで目を見開いた。
なにせそこに広がっていたのは紛うことなき『洞窟』。
先ほどまで家で昼寝してたはずなのに、気が付いたら洞窟に居たのだ。
「……って、いやホントにどういうことだよ……」
言いながら頭を抱えて立ち上がると、改めて周囲を見渡してみる。
そこは……うん、やっぱり洞窟だ。
おかしな点と言えば、周囲を囲むように広がっている大きな空間の中、壁や床にへばりついている青く光るコケの数々。明らかに日本……というか、そもそも地球でも見なかったような幻想的な光景に――なんでかな、嫌な予感が溢れ出してきた。
「……おいおいおい、ありえないでしょ。……え、いや嘘だよね?」
言いながら両手で頭を抱えると、溢れ出る冷や汗が頬を伝っていくのも無視し、必死になって現状を理解し始めようと頭を回す。
なんだ、僕さっきまで何やってた? どうやってここに来た?
というか、ここ何処だ……?
そう、思考を巡らせて――
「……というか、僕の名前ってなんだっけ」
そもそも、大前提から思い出せなかった。
☆☆☆
――さて。
なんだかいきなり出鼻をくじかれてしまったようだが、基本的に名前と現状、そして何がどうなってこうなって、そんでもって今に繋がっているのか以外はおおむね記憶に残ってるみたいだ。
日本に住む大学生、名前は不明。歳は十九。
趣味は……正直パッと思いつかないくらいには灰色な人生送ってきた僕だけれど、それでも強いてあげるとすれば読書だろうか。あ、最近アレだ、流行りの『ラノベ』ってのも読み始めた。
そんでもって彼女はいない、友達もあんまいない。両親も既に他界してる。
まあ、『顔見知り』程度ならそれなりにはいるが、それでもまともに話したことがあるやつらなんてそれこそ……ま、これ以上はできれば察してほしいもので。
今日はその数少ない友人たちがアパートに遊びに来るっていうんで、ちょいと掃除のついでに漫画を読んでたらいつの間にかスリーピングナイト。
そんで起きて見たら――これである。
「いやどうなってんだよ……」
うん、意味がわからん。
可能性なら『夢見てる』とか『拉致られた』とかいろいろ想像つくが、そもそもこれが夢だったらVR技術とかまず要らないし、拉致られるようなほど何か恨み買ってるとかは……ないよな? たぶんないと思いたい、切実に。
「そしたらアレか? 異世界転移、ってやつかもしかして」
さっそく最近見知った情報を使ってみる。
最近流行りの『トラックにはねられ異世界転生』。他にも最近はちょっと捻った感じの作品が次々と出てきているわけだが、現状をソレに当てはめてみると『昼寝してたら異世界転生』って感じだろうか。
ま、いずれにしても意味不明。
馬鹿馬鹿しさここに極まれるような考え。
もう失笑すら出てきそうな勢いでひらひらと手を振りながら、そういえば『お約束』的なセリフがあったなと思い出す。
「ああ、そうだそうだ。異世界転移だったらそれこそ、『ステータス』とか言ったら名前とか表示されんの、か……ねぇ?」
ステータス、と。
自分の能力値がそのまま数値にして現れる的なその言葉。
それを半笑いのままテキトーに口にした僕は――けれども、言ってて途中で驚きに目を見開き、硬直した。というのも。
「ば、ばば、ば……はっ? え、う、嘘ぉ……?」
僕の目の前には、なんかステータスっぽい奴が現れていた。