――‶ザ・ワイルド〟との戦闘から1週間が経過した。その間にはいろいろなことがあった。

まずはあの仮面の男が消えた後、王国軍が駆けつけてきて‶ザ・ワイルド〟の残党たちを全員捕縛したのだが、後日事情徴収をしても誰一人として‶闇ギルド〟のことを口にしなかった。と言うよりも、‶ザ・ワイルド〟が‶闇ギルド〟と取引していることすら知らなかったそうだ。

どうやら、‶闇ギルド〟は情報の流出を防ぐため取引相手のトップやリーダーにしか取引のことは伝えないようにしているそうだ。そしてトロンは口封じのために仮面の男に殺害された。

次に颯太は倒れた日からわずか2日で意識を取り戻したのだ。

リーナは‶ザ・ワイルド〟が乱獲したミスリルのゴーレムの残骸を回収してそれを依頼人に渡して依頼を達成させていたのである。

そして颯太が目覚めた後に颯太のいる病室で感謝状受賞式が開かれた。

けが人の颯太からしたらこれはいい迷惑なのかもしれない。

颯太は病院を退院した後すぐに学長室に呼び出しを受けた。

「やあ! 颯太君、久しいのう!」

レージス学長はを老人のくせに若々しい挨拶をした。

「何のようだ? 俺はまだ自宅で安静にしとかなきゃなんねーんだけど」

「まあまあ、それはすまんかったのう! じゃけどこの情報はお前さんに絶対に伝えておくべきだと思ってな!」

颯太はレージス学長の言葉を聞いて真剣な表情になった。

「そいつはいったい何なんだ?」

「ああ、わしがお前さんに伝えたいことは魔獣界の魔獣のパワーアップの仕方じゃ!」

「パワーアップの仕方?」

颯太は一瞬レージス学長が何が言いたいのか理解できなかった。

「魔獣界の魔獣はパワーアップの仕方として大きく3種類に分けられているんじゃ」

「…………」

「1つ目は‶合体(ユニオン)〟じゃ! お前さんもそんな魔獣と戦ったことがあるじゃろ?」

「ソウチョーウルフか……」

颯太の頭になかには合宿所に移動中に襲ってきたオオカミの魔獣が浮かんできた。

「‶合体(ユニオン)〟は3体の同じ種類の魔獣が1つの姿にン化する現象じゃ。1つになった魔獣の戦闘力は3体のときの戦闘力の倍以上になるといわれている恐ろしいパワーアップじゃ!」

「確かにあの狼もめちゃくちゃ魔力が上がっていたな!」

「そして2つ目は‶捕食(プリデイション)〟じゃ! これもお前さんは見たことあるじゃろ?」

レージス学長の言葉に颯太はうんうんと頷いていた。

「‶捕食(プリデイション)〟はある魔獣が自分と近い実力を持つ魔獣を捕食することでパワーアップをする現象のことじゃ! 戦闘力の上がり方は‶合体(ユニオン)〟に劣るのじゃが、厄介なのは捕食した魔獣が捕食された魔獣の特徴や技を引き継ぐことができるということじゃ!」

(コカトリスがバジリスクを捕食して毒攻撃が使えるようになったのもそれが原因か…………)

颯太は腕を組んで魔獣との戦闘を思い出しながら話を聞いていた。

「最後の3つ目は多分お前さんも見たことがないと思うんじゃ」

「へー、いったいどんなパワーアップなんだ?」

颯太は興味深々にレージス学長を見つめていた。

「‶転(リーイン)生(カーネーション)〟‼‼」

「リーインカーネーション?」

颯太は聞いたことのない言葉につい声に出していってしまった。

「これは魔獣が死にかけたとき覚醒する現象じゃ! これはデータにないからどれだけ強くなるのかは不明なんじゃ!」

「なーるほどねぇ……」

颯太は再び腕を組んで頷いていた。

「話は以上か? 俺はちょっと用事があるから帰らせてもらう!」

「気をつけてな! 新しい情報が入ってきたらまたお前さんに伝えるけんまた来るんじゃぞー!」

「分かったー!」

颯太は軽快に返事をして走って学長室を退出した。

――魔獣界

「よう! お前が新しい‶幹部補佐に〟就任したってやつか?」

腕が合計6本あって、顔が3つある10メートルを超える巨大な魔獣が2メートルを超える鋭い爪と鉄で顎を矯正している魔獣を見下しながら言った。

「はい、私は新しく就任したタイショーウルフでございます!」

「そんなにかしこまるなよ! 俺もお前と同じ‶幹部補佐〟なんだからさ!」

3面と6本腕の巨大魔獣は明るくそう言った。

「それで? もうレオメタル様には挨拶しにいったのか?」

「これからしようと思っています。それと同時に、お願いを聞いてもらいたいのです」

「うほほう? それは一体どんなお願いなのかな? って言えるわけないか! ウッホッホッホー!」

巨大魔獣は高らかに笑いながら立ち去った。

タイショーウルフは巨大魔獣と別れると目の色を変えた。

「今に見てろよ! ‶龍斬り〟!!! そして楽しみにしてろよ! てめえの首が飛ぶところを!」

タイショーウルフは強靭な鉤爪で壁を突き刺して怒りを露わにし、レオメタルのいる部屋へ歩いていった。