ユマが黒風の斬撃を放った後、斬撃が通ったところは底が見えないくらいの深い亀裂が入っていた。

その亀裂の中からゴソゴソと物音がした。ばらばらと不自然に崖が崩れ始めていて大きな足音も聞こえた。

ユマはこの音の正体はすでに分かっていた。

「やはりまだ生きていましたか。どうやら体を真っ二つにされた後に残りの全魔力を使い切って体を再生させたというところでしょうかね? しかしあなたはそのせいで魔力が尽きて‶魔獣化〟保つことが出来ませんでしたね! その証拠にあなた、透明になっているつもり化もしてませんが、姿を完全に隠し切れずにちらちらと姿が見えていますよ」

ユマがそう言ってもペロンチェはただひたすら逃げていた。それも決死の思いで。

(ハァ……ハァ……こんなところで死んでたまるか! 俺は‶エリート魔獣〟なんだ! やつもあれだけの攻撃をしたんだ! 魔力を消耗していないわけがない!だからここは何とか逃げ切って、次は透明能力を生かして背後から確実に奴を仕留める!)

ペロンチェはわずかに残っている魔力を使って透明になっているため、魔力を使った移動をすることが出来ない。そのため彼は自分の足で逃げるしかできなかった。

しかしユマはペロンチェが逃げているところを肉眼で完全にとらえていたので超速移動をしてペロンチェの真上に先回りをした。

ペロンチェは逃げることに必死になっていたためユマが真上にいることなんて全く気付いていなかった。

ユマは左手に黒いオーラを集めて黒い閃光を生成した。さすがのペロンチェもこの黒い閃光には気づいた。

「ペロロ!? 何だあの光は! ていうかなぜ俺の居場所が分かったんだ!?」

ペロンチェは一瞬足を止めて黒い閃光を眺めていたが、すぐに我に返って今度は透明にならずに全力で逃げだした。ペロンチェは透明になるために使用していた魔力を足に使用して、逃げる速度を上昇させた。

「ペロロ! あんなのくらったらひとたまりもない! 透明になっても広範囲で影響を及ぼすのであれば巻き込まれてしまうからな!」

必死になって逃げているペロンチェにユマは呆れながらも黒い閃光を拡大させていた。

「この技、颯太さんのを見よう見まねでやってみたけど、黒い力をコントロールするのがこんなに難しいなんて……」

ユマは黒い閃光をしっかりとペロンチェに狙いを定めるのに苦戦していた。

(ん? あいつもしかしてあの技を使いこなせていないんじゃねえか?)

そう察したペロンチェはジグザグ移動をしてユマを撹乱させた。

(取り乱しちゃだめですよ! もっと集中して、彼以外に気を取られちゃだめですよ……)

ユマは自分にそう言い聞かせて集中した。

「こういう時こそ敵の動きを読むんですよ。彼が次に動く方向は……右です!」

ユマはそう言って左手を右へ大きく向けた。するとドンピシャでペロンチェが右に移動していた。

「これで最後です! ‶漆黒(ベスティア・)の(ピストーラ・デル・)魔獣砲(シュヴァルツ)〟‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」

ユマは最大限までにため込んでいた黒い閃光を一気に放出した。そしてその黒い閃光はペロンチェを完全に呑み込んだ。

「ペロォォォーーーーーーーーー‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼ こ、こんなことがぁぁぁぁぁぁ‼‼‼‼‼‼‼」

ズドーーーーーーーーーーーーーーーーーン‼‼‼‼‼‼‼‼‼

黒い閃光は地面に直撃して地面には半径50メートル以上の大きな風穴があいた。そしてその穴の奥は真っ暗で何も見えなかった。しかしその風穴の中にはペロンチェの魔力が全く感じられなかった。恐らくあの魔人はユマの‶魔獣砲〟によって完全に消滅したと考えられる。