The Story of Drifted Girls in Different World ~The Adventure of Miko~
Uther Mayjor Final Attack 2
「ご主人様!!しっかりしてください!!」
リンドブルムを退けたユーナだが、その亡骸よりも、自分の主人の安否を心配していた。その心配も杞憂に終わり、美湖は目を覚ました。
「あれ、ユーナちゃん、おはよう。」
「おはよう、じゃないですよ!すごく心配したんですからね...」
美湖が目を覚まし、緊張の糸が切れたのかユーナは、美湖の胸に顔をうずめて泣き出してしまった。美湖は、彼女の頭に手をやりながら、
「そっか、僕、あの龍に電撃を食らって...。ってボスはどうしたの?」
「ご心配なく。ユーナさんが討伐してくれましたぜ。いや~、あれはすごい迫力でした。」
アリサが、指をさしてある場所を指す。そこには、討伐したリンドブルムの残した魔石とドロップアイテムが集められていた。ユーナが、美湖にかかりきりの間にほかのメンバーが集めておいてくれたようだ。
「そっか。みんなありがとう。心配かけちゃったね。ユーナちゃんもごめんね。僕のためにあいつを討伐してくれて。」
「いえ、ご主人様が無事なら、私はそれだけで十分です。」
ユーナは、両目に涙を浮かべながらも、花が咲いたような笑顔を見せた。
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それから一行は、美湖が素材を魔札に封じて、次の階層、28階層に向かう。28階層は、先ほどとは打って変わり、灼熱の砂漠地帯だった。
「うわ~暑いね。僕とユーナちゃんは、武器が冷気を帯びてるからましだけど、ほかのみんなは...」
美湖がポーチから『きれいな布』を出して汗を拭きながら、メンバーを見渡すと、
「あ...熱い...」
「溶けますぅ。私溶けちゃいますぅ。」
「この暑さはやばい、階層主の前に干からびちまう。」
みんなが、死にそうな顔をしている。
「みんな、死にそうな顔してるね。僕の近くに寄って。」
美湖が、全員を周囲に近寄らせる。『氷剣・アルマス』を鞘から抜く。それだけで、周囲の温度が少しし下がった。そして剣に魔力を流し込むと、放っていた冷気がさらに強くなり周囲を冷やしていく。
「ああ、涼しい。」
「美湖さん、最高ですわ。」
「美湖殿、感謝する。」
みんな、涼しそうにしていた。美湖はそのまま、ユーナに先頭を頼み、階層主のエリアまで一直線に進んでいった。
「はぁ、やっと着いた。もう魔力が少ししかないよ。」
美湖は、『氷剣・アルマス』に流していた魔力を一度止める。そして、ポーチから『ランク1マナポーション』を取り出し、一気に飲み干していく。彼女の口の中に、ミントのようなさわやかな味わいが広がる。
「は~、おいしい。さて、MPも回復したし、みんな、準備はいい?」
美湖に言われて、全員が準備完了の合図を返す。そして、美湖を先頭に階層主のエリアに入っていった。
28階層の主は、全身を砂に覆われた巨大な龍種だった。美湖は、すぐに鑑定をかける。
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サンドドラグーン
LV 30
AT 800
DF 1000
MA 200
MD 300
SP 300
IN 900
HP 5000/5000
MP 3200/3200
スキル
咆哮 (30/50)
砂弾 (35/50)
砂塵旋風 (MAX)
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と出ていた。
「ねぇ、また龍種なんですけど...」
「ご主人様、運がいいのか、悪いのかわかりませんね。」
「とりあえず、倒しましょうや。考えんのはそのあとってことで。」
アリサが『エルフィン・アーチ』に矢をつがえ、放つ。その矢は、「サンドドラグーン」の翼の付け根を吹き飛ばしたのだが、次の瞬間、砂が盛り上がり、翼が生えてきた。
「おお、自己修復機能持ちか。どうしようか?」
美湖がその状態を見て、思案顔になる。そこにレイクが意見を言う。
「おそらくですが、この魔物はスライムと同じような体の構造ではないでしょうか?」
「ん?レイク殿、どういうことだ?」
「おそらくは、奴の体内のどこかに核のような部分があるんでしょう。それを破壊しない限り、延々と修復し続ける。もしくは、美湖さん、少し鑑定で奴を見てもらえませんか?」
レイクに言われ、再び鑑定を発動させる美湖。そこに表示されたステータスは、
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サンドドラグーン
LV 30
AT 800
DF 1000
MA 200
MD 300
SP 300
IN 900
HP 5000/5000
MP 3000/3200
スキル
咆哮 (30/50)
砂弾 (35/50)
砂塵旋風 (MAX)
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「あれ、MPが減ってる。でも、あいつ魔法とか使ってないよね!?」
美湖が驚いてみんなに報告する。
「やはり、あの修復はスキルではなく、あの魔物本来の体質なんでしょう。そして、MPがある限り自己修復し続けることができる。なら、私たちのすることは決まってます。」
「そうですわね。手数で奴の体を削り、MPを空にしてしまえばいいのですわ。」
エリザが答えをまとめる。
「よーし、そういうことなら前衛の僕たちはタンクに徹するから、アリサちゃん、レイクさん、スーリンちゃん、エリザさんは遠距離攻撃で、奴の体を削ってください。行きますよ!!」
そうして、美湖、ユーナ、ユリカ、エイルの4人が「サンドドラグーン」に向かっていき、注意を引き付ける。アリサ、レイク、スーリン、エリザはそれぞれ四方に散り、次々と矢や、魔法を打ち込んでいく。削られた場所はすぐに再生していくが、それにより攻撃の対象が4人に向くと、
「お前の相手は、僕たちだよ!!」
美湖たちが、斬撃を加えて注意を強引に自分に向けさせる。しびれを切らして、咆哮を上げようものなら、エイルの闇魔法が口の中に放り込まれる。注意がエイルに向き、攻撃を放てば、ユーナや、ユリカがそれを剣ではじき、四方から遠距離攻撃が撃ち込まれる。砂弾をはけば、美湖の『封札』により魔札に吸収され不発に終わる。そして、再生が行われなくなったところで、美湖が再び鑑定を発動させる。
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サンドドラグーン
LV 30
AT 800
DF 1000
MA 200
MD 300
SP 300
IN 900
HP 3800/5000
MP 0/3200
スキル
咆哮 (30/50)
砂弾 (35/50)
砂塵旋風 (MAX)
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「よし、MPが尽きた!みんな、ここから一気に仕留めるよ!!」
美湖の合図で、全員が攻撃を加えていく。美湖が足を切り裂き、ユーナが翼を切り落とす。ユリカは尾を切り離し、エイルが鋭い突きを放つ。アリサ、レイクは矢を雨のように降らせ、スーリンとエリザは魔法を連射する。5分もしないうちにすべての部位が破壊され、『サンドドラグーン』は討伐された。
「よし、これで28階層終了!!」
「「「「「「「やった~~~!!」」」」」」」
全員が勝鬨を上げる。そして、魔石とドロップアイテムを魔札に封じ、次の階層、29階層に向かう。
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29階層は、再び灼熱の世界だった。しかし、砂漠ではなく、溶岩あふれ出す火山地帯だったが。
「今度も暑い~~~!」
全員の気持ちを美湖が代弁した。
「ご主人様、一刻も早く階層主のエリアに行きましょう。これでは、全員干からびてしまいます。」
ユーナの案で、全員が階層主のエリアに向かうことに賛成した。マグマで通れない場所は、エリザの『流水魔法』でマグマを岩石に変え、即席の近道を作り出していた。
階層主のエリアに到達した一行だが、先に階層主に挑んでいるパーティーがいた。26階層で、美湖たちよりも先に階層主に挑んでいた『紅蒼の対剣』だった。対する階層主は、三つの首を持つ獣、地獄の番犬としておそれられる『ケルベロス』だった。しかし、戦況は芳しくなかった。『紅蒼の対剣』のうちの一人が大けがをして後方に退いている。もう一人も満身創痍で、攻撃を受け流すのが精いっぱいの様子だった。
「みんな、助けるよ。」
美湖の静かな一言に、しかし誰も文句を言わなかった。美湖は一人階層主のエリアに近づき、魔札をかざして、
「『封札』。」
スキルを発動させる。眼が眩むほどの光が生まれ、周囲にいるすべての視界を一時的にうばう。そして、障壁を封じると、
「全員、突撃!!」
メンバーに指示を出し、自身も『氷剣・アルマス』を抜き、『ケルベロス』に向かっていった。