俺とルカが情報を整理している間、精霊王はモーフィに乗っていた。

そして、頭の上にシギショアラを乗せて、俺の腕をつかんでいた。

そんな、精霊王を見てユリーナが言う。

「全然関係ないのだけど……。精霊王が寒そうに見えるのだわ」

精霊王は全裸に王冠をつけているだけ。

外見は羽を除けば、真っ白い肌のエルフの幼女にそっくりなのだ。

この季節に全裸だと寒そうに見える。

「精霊王、寒いですか?」

『否定』

「氷雪の精霊王ですものね」

俺がそういうと、精霊王はうんうんと頷いた。

『肯定』

「さすが、精霊王、寒さに強いのですね」

「ぴい」

精霊王は、どこか自慢げだ。

ユリーナは丁寧に精霊王に頭を下げる。

「精霊王さま。まことに失礼ながら、肌に触れてもよろしいでしょうか?」

『許可』

「それでは失礼して……」

ユリーナは精霊王に触れる。

「体温が低いのだわ」

「氷の精霊王だからな」

『上昇可能』

「体温は自由に変化させることができるのですか?」

『肯定』

ユリーナが精霊王に触れているのを見て、ルカがうずうずし始めた。

「わ、私も触りたいわ。精霊王いいかしら」

『許可』

「ありがとう」

ルカも精霊王を触りはじめた。

学者としての好奇心なのだろう。

「確かに少しひんやりしているわね」

「そうなんだー」

クルスは精霊王の頭を撫でた。

断りもなく撫でているが、特に精霊王は気分を害した気配はない。

ユリーナが恐る恐るといった感じで精霊王に話しかける。

「精霊王さま。失礼ながら衣服を贈らせていただいてもよろしいでしょうか?」

『許可』

精霊王に許可をもらったユリーナは、鞄から可愛らしい服を取り出した。

明らかにユリーナが着るには小さすぎる衣服だ。

それをユリーナは精霊王に着せる。

ユリーナは背中の羽を出すために、いろいろ工夫していた。

「どうでしょう。精霊王さま。きつくないですか?」

『感謝』

ユリーナにもらった服が気に入ったようだ。

モーフィの背の上に立って、くるくる回ったりしている。

「ユリーナ、その服どうしたんだ?」

「なんでもいいのだわ」

なぜかユリーナは言いたくないらしい。

いぶかしんでいると、クルスが言う。

「あの服って、ユリーナのお人形に着せるやつでしょ? よかったの?」

「か、構わないのだわ」

ユリーナは顔を真っ赤にしていた。

「そうなんだー」

クルスは笑顔で精霊王の頭を撫でる。

どうやら、ユリーナはお人形遊びをしているらしい。

意外と可愛らしいところもあるものだ。

そんなことを考えていると、精霊王が俺の腕を引っ張った。

『あるふれっどら』

「どうしました?」

『我。服着た』

そういって、モーフィの背の上で一度くるりと回った。

「そうですね。似合っていますよ」

「ぴぃ!」

精霊王は嬉しそうに鳴いた。

それから精霊王は楽しそうにモーフィとシギと遊んでいた。

それを見てコレットが混ざりたくなったようだ。

「せいれいおー。コレットと遊ぼう」

「ぴぃ」

精霊王とコレット、モーフィ、シギショアラが遊び始めた。

その様子を見て、ミレットやヴィヴィも精霊王への警戒を解いたようだ。

「おやつですよー」

ミレットがお菓子を持ってきた。

「ぴい『感謝』」

精霊王は、おいしそうにお菓子を食べた。

しばらく遊んだ後、突然すくっと精霊王は立ち上がる。

そして俺の方へとくる。

『我帰還』

「もうお帰りになられるのですか?」

『肯定』

ルカは残念そうだ。

「折角だから泊まっていけば、よろしいのに」

『精霊力必要』

「巨大な精霊石でもないと長い間留まるのは難しいということですか?」

『肯定』

精霊力が足りないのなら、引き留めることはできない。

「精霊王、また、お呼びしても?」

『許可』

「ありがとうございます」

『あるふれっどら。いつでも我呼ぶ』

「はい、また呼ばせていただきます」

精霊王はにっと笑うと、精霊界へと帰っていった。

帰った後、ユリーナが言う。

「かわいい子なのだわ」

「そうだな」

ユリーナは可愛いものに目がないのかもしれない。

ルカが気合を入れて言う。

「さて! 精霊王からお聞きした情報をもとにまた情報収集のやり直しよ」

「明日、ぼくが魔導士ギルドにお願いしておくね」

「クルスに任せるわ」

「教会でも大急ぎで情報収集させるのだわ」

「ユリーナもありがとうね」

クルスにお礼を言われて、ユリーナは嬉しそうにしていた。

「気にしなくてもいいのだわ!」

情報収集となると、ルカとユリーナ、それに魔導士ギルドに頼り切りだ。

「俺も情報収集を手伝えればいいのだが」

「個人でやるのは限界があるから仕方ないわよ」

「それはそうなのだが」

俺は大人しく、衛兵業務をこなすしかないだろう。

次の日から、衛兵業務のかたわら弟子たちと獣たちに魔法を教える日々に戻った。

弟子たちは相変わらず筋がいい。

フェムもモーフィも真面目に魔力弾の威力向上に取り組んでいた。

シギは魔法体操を一生懸命やっていた。

ヴィヴィも弟子たちに魔法陣のことを教えてくれるようになった。

代わりに俺はヴィヴィに戦闘魔法のコツを教えた。

新たな情報がもたらされたのは、さらに一週間後のことだった。