やはり、おかしい。

 空中からは見えるのは巨大な樹木。

 枝は広く展開していて緑が良く映えている。

 それが、おかしい。

 エリアポータルからその様子が見えていなかったからだ。

 高さがあるからと言って、ここまで鮮やかな緑を見逃すだろうか?

 シンクロセンスまで使ってスパッタの目で確認してある。

 見えているのが、おかしい。

 確認する手段がまだ残っている。

 実際に木登りをしてみる事だ。

 コール・モンスターでもセンス・マジックでも異常は感じられないが、お供はどうする?

 樹木の幹を移動、となると蛇身のストランドや清姫、それに半人半蜘蛛のモジュラスなんだが。

 残念。

 清姫とモジュラスはポータルガードに残してある。

 それに空中位置の召喚モンスター達に周囲を警戒させながら登ってみても不都合は無い。

 布陣はこのままでいい。

 木登りそのものは大丈夫か?

 エリアポータルにそびえるこの巨木の表面は凹凸が多い。

 瘤もあれば皮の割れ目も多い。

 登るのに不都合は無さそうなのだが。

 問題があるとしたら時間だ。

 時刻は午後3時50分。

 登るにしても時間が掛かるであろう事は間違いない。

 それでも構わない。

 落ちたら?

 レビテーションがある。

 登攀用に道具は?

 ロープ、それに怒りのツルハシ程度しかないが。

 それで十分。

 基本は木登りなのだ。

 明日の朝から登る事にしてもいいけど、気になる。

 経験値稼ぎの合間の寄り道?

 そうですね。

 寄り道なのだろう。

 気になってしまったのだから仕方ない。

 登った先がどうなっているのか、見てみたくなってしまった。

 何か仕掛けがあるのか?

 確かめましょう。

 エリアポータル外から見た感じだと、大きいとはいえ夕食時までに登りきれる筈だ。

 そう長い寄り道にならない、と思う。

 落ちなかったら、ですけどね。

《これまでの行動経験で【登攀】がレベルアップしました!》

 普通だ。

 普通に木登りだ。

 それにまだエリアポータル扱いであるらしく、メニューが使えるようです。

 まだログアウトはしませんけど。

 当然のように魔物とは遭遇しない。

 精霊の宿木、となってますけど精霊が現れる様子は無い。

 妖精の類も無い。

 思い違いなのだろうか?

 いや。

 見上げても、緑が茂る枝は見えない。

 幹しかないのだ。

 やはりおかしい。

 そこそこ、登っていると思うのだが。

 困惑するばかりだ。

 何かの仕掛け?

 だが仕掛けだとしても、何が目的なのかが分からない。

 これって何?

 変化が、あった。

 周囲に霧?

 雲であったのかもしれない。

 少し登るとその霧の層を抜けたのだが、周囲に違和感。

 召喚モンスター達が、いない。

 おい!

 どこかに行ったのか、と思ったがシンクロセンスにも引っ掛からない。

 まさか、と思ってサモン・モンスターで確認したが、召喚可能になっていたのだ!

 いつの間にか、強制的に帰還扱いになっていたらしい。

 ステータス異常も無さそうだ。

 これ、どういう意味かな?

 空を飛んで追従するのはダメって事ですか?

 だが、より重要なのはこれが何かの仕掛けである点が明確になった事だ。

 まだエリアポータルのメニューも使える。

 見上げても幹しか見えません。

 空中を飛んでの移動はダメ、という事かな?

 大き目の窪みに到達した所で念のために召喚モンスターを呼んでおこう。

 召喚するのは、こうだ。

 ジェリコとリグを召喚します。

 スライム形状で貼り付いたまま移動が可能だ。

 それにストランド、ペプチド。

 壁面でも行動が可能だ。

 枠が余るけど、どうする?

 いいか、これで。

 それにしてもこの木登り、まだまだ時間が掛かりそうだ。

 時刻は午後4時20分です。

 本当に夕食までに確認が可能なんだろうか?

《これまでの行動経験で【登攀】がレベルアップしました!》

 時刻は?

 午後6時30分だ。

 大き目の窪みがあったので休憩にします。

 夕食は携帯食で済ませよう。

 ところで、樹上からは夕焼け空が見えます。

 実に見応えがある。

 これだけでもここまで登ってきた価値があったかもしれない。

 山登りを趣味にする気持ちが分かったような気がします。

 違うだろ?

 目的を見失ってはいけません。

 さすがに、おかしい。

 ここまで時間を掛けて、結構スルスルと登って来ているのにまだ幹が上へと続いている。

 まずい。

 夜になってしまうと確認が難しくなる。

 まだエリアポータルのメニューは使える。

 まさかと思うが、このペースだと木登りの途中ででログアウトする事になるのか?

 まさか、ね。

 何にしても登り続けるだけだ。

 ここまで登ってしまったらもう後退する事は出来ない。

 前進あるのみ。

 木登りだから前進後退は違うな。

 登る、か。

 さもなくば登るかだ。

 降りる選択肢は無い。

 始めた事は区切れる所まで、進めたいものです。

《これまでの行動経験で【耐寒】がレベルアップしました!》

《これまでの行動経験で【登攀】がレベルアップしました!》

 時刻は?

 午後9時20分です。

 いいペースで木登りは出来ていると思えるんだが。

 ホーリー・ライトの呪文を継ぎ足さずに効果が切れるのを待つ。

 見事な夜空が見えた。

 寒いけど。

 風はそう酷くないのに、寒い。

 高度はかなりあるからだろう。

 星空も全天が見えている訳ではない。

 幹側の空は見えない。

 半天でもその夜空は観賞するのに十分な価値があっただろう。

 センス・マジックを使う。

 僅かにだが、この巨木に魔力が感じられるようになってきている。

 これも根元の方では無かった事だ。

 何かが変わりつつあるんだろうか?

 良く分かりませんけど。

 では、再開しましょう。

 木登りの続きだ。

 最初、それは星のように見えた。

 でも違う。

 人魂、だったのだ。

 慎重に、ゆっくりと登って行く。

 こんな足場で何かと戦わされるなんて無理ですって!

 だが、その人魂は消えてしまった。

 次の瞬間。

 周囲が明るくなった?

《天空にもまた世界がある》

《だが心せよ》

《世界はどこまでも広く、そして悪意に満ちているのだ》

 周囲に人魂が幾つも浮いている。

 だが驚愕すべきなのは照らされている存在。

 地面だ。

 地面があるの?

 人魂が消えて行く。

 ホーリー・ライトが照らすだけになったが、地面は変わらずそこにあった。

 ストランドを偵察で行かせてみます。

 ちゃんと、地面のようなのだが。

 何かに惑わされているんだろうか?

 それでもいい。

 一気に落とされる事を覚悟で地面に立ってみましょうか。

 うん。

 普通に地面だ。

 そして広域マップで確認したんだが、こんなの初めてだ。

 N9u1マップ、となってます。

 広域マップの表示は2枚重ねになっていて切り替える形になるようだ。

 N9u1マップのエリアポータル名は、神霊の宿木。

 えっと、これって別世界?

 周囲は夜。

 N9マップと同様に森。

 少し、様子を見てみますか?

 時刻は午後11時になろうとしていた。

 戦闘をして来なかったからMPバーにも余裕は多少ある。

 布陣はどうする?

 探索重視で組んでおこう。

 ヴォルフ、ナインテイル、テロメア、フローリン、キュアノスにしてみました。

 呪文で強化はしておいて、と。

 何がいるのかは把握しておきましょう。

 アークエンジェル ???

 天使 討伐対象 アクティブ

 戦闘位置:空中、地上 ???

 エンジェルナイト ???

 天使 討伐対象 アクティブ

 戦闘位置:空中、地上 ???

 エンジェル Lv.8

 天使 討伐対象 アクティブ

 戦闘位置:空中、地上 ???

 オレでも発見は早かった。

 森の中で輝くその姿は実に目立っていたからだ。

 それだけに心構えが違っている。

 アークエンジェルが1名。

 エンジェルナイトが2名。

 エンジェルは7名。

「降魔闘法!」「メディテート!」「ブレス!」「インテリジェンス・アタック!」

 そう言えば、天使系統を相手に戦うのは初かね?

(((((六芒封印!)))))

((((七星封印!))))

 歌が聞こえる前に【呪文融合】で先手が取れた。

 だがレジストしたのが、いる。

 合唱する歌声は荘厳で美しいが、オレ達には祝福にならない。

(メイズ・フォレスト!)

 ククリ刀を腰の後ろから抜き放ちながら、呪文を使う。

 まだ歌っている奴は?

 状態異常に陥っていない奴だ。

 レジストしていたであろうエンジェルナイトにククリ刀を投げ付ける。

 直撃。

 それでいてこっちの位置を把握していないようだが。

 見えている奴がいる。

 お前だ!

 アークエンジェル!

(((((((((フォース・ブラスト!)))))))))

 攻撃範囲優先で喰らわせる。

 ダメージは?

 喰らっているようだがそう大きくは無い。

 ほう、これは楽しめそうだ。

 光の槍が幾つも周囲の樹木を貫通して襲って来ている。

 おお!

 豪快!

 だがその狙いは雑だ。

 こっちを確実に見えているのはアークエンジェルだけだが、こいつは歌っていない。

 矢を放っては来るけどね。

 横合いからエンジェルナイト。

 こいつは剣を持っている。

 その刃に宿る魔力が尋常じゃない。

 問答無用で突いて来る所を腕を取った。

 そのまま跳び関節を仕掛ける。

 一気に、折る。

 地表に墜落して一緒に転がるけど気にしない。

 森の中を飛び回られるよりは遥かにマシだ。

(ブラックベルト・ラッピング!)

 アークエンジェルを封じに行く。

 闇の帯でグルグル巻きになった所でテロメアに頭を殴られてました。

 うん。

 でもエンジェルナイトはオレの獲物ですから!

 立ち上がったエンジェルナイトの手に剣は無い。

 HPバーはジリジリと回復している。

 放置するつもりは無い。

 一気に距離を詰め、側頭部にトンファーを撃ち込む。

 何と、頭を振って避けられたが次の攻撃はまともに入っていた、

 前蹴り。

 しかも股間だ。

 どうもこのエンジェルナイトは男性っぽいようだ。

 しかも美男子。

 さぞかしモテる事だろう。

 死ね。

 死んでいい。

 それでも仕留めきれていなかった。

 裸絞めにしてから首を捻ってどうにか仕留めたが。

 エンジェルナイトはもう1名、いたよね?

 いた。

 メイズ・フォレストの影響で周囲が見えていないようだ。

 フローリンの攻撃が一方的に加えられている。

 おお?

 オレにも、やらせろ!

 天使達の姿はかなり減ってしまっている。

 オレの獲物は残しておいてね?

《只今の戦闘勝利で【ダッシュ】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【耐久走】がレベルアップしました!》

 最後に残った天使はテロメアとフローリンの餌食に。

 どう見てもこっちが悪役だ。

 わりかし、本気でそう思えます。

 アイテムは何か残るか、と思ったら魔水晶だけでした。

 感覚がおかしい。

 既に基準が魔結晶になっているからだ。

 最近、インフレ度合いが激しい?

 如意宝珠が魔石を生んでも感動が少なくなっている。

 悪い意味で陳腐化している。

 有難味が薄くなるのは、危険だ。

 自重しましょう。

 では、少し天使の皆さんを狩ってみましょうか?

 コール・モンスターを使おう。

 位置だけは確認出来るが、寄っては来ない。

 でもわりかし、数がいるようだ。

 これは襲えって事ですね?

 きっとそうだ。

 天のお告げだ。

 メイズ・フォレストの使い心地はもっと確認しておきたい。

 では、狩ろう。

 双角猛蛇の投槍も使いましょうかね?

 アポーツの呪文も併用すべきだ。

 相手は空中にいる。

 工夫は大事ですからね?

《只今の戦闘勝利で【禁呪】がレベルアップしました!》

《【禁呪】呪文のイビル・アイを取得しました!》

《【禁呪】呪文のマインド・クラッシュを取得しました!》

《只今の戦闘勝利で【隠蔽】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【気配遮断】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【無音詠唱】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【詠唱破棄】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【耐混乱】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『フローリン』がレベルアップしました!》

《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》

 天使を連続で狩り続けているんですが。

 天罰はあるんだろうか?

 英霊神をあれだけ屠っておいてアレだけど。

 ここにも英霊神みたいな存在がいるのかな?

 いて欲しい。

 オレの判定で言えばこのN9u1マップ、難易度でN9マップと同等だろう。

 こっちの方が出現する編成が単純な分、対策が楽だ。

 個別に言えばアークエンジェルが厄介だけどね。

 特に歌だ。

 対策はしてあっても怖い。

 何が起きるのか分からないのだから当然だ。

 【耐混乱】が上がっている、という事はそういう攻撃が少なくとも存在している訳です。

 それだけで済むとも思えない。

 歌の曲調が変わると気になってしまいます。

 フローリンのステータス値で既に上昇しているのは筋力値でした。

 もう1点のステータスアップには生命力を指定しましょう。

 フローリン クレイジーバットLv30→Lv31(↑1)

 器用値 47

 敏捷値 65

 知力値 22

 筋力値 35(↑1)

 生命力 35(↑1)

 精神力 22

 スキル

 噛付き 飛翔 反響定位 遠視 回避 奇襲 隠蔽

 追跡 監視 吸血 猛毒 暗闇 混乱 麻痺 忘却

 高周波 毒耐性 耐即死 耐暗闇

 時刻はもう午後11時50分。

 ここまでにしておこう。

 夜だと周囲の様子がまるで確認出来ない。

 それにテレポートでいつでも来れるのであれば急ぐ事も無いのだ。

 新しい呪文も拾ったけど検証は明日以降だな。

 覚えていたら、ですけど。

 テレポートでN9u1マップのエリアポータル、神霊の宿木に跳んでみよう。

 その確認が出来たら召魔の森に跳んでログアウトしようかね?

 明日はサキさんの所に顔を出さないと。

 鞍馬はサイズが変わってしまっている。

 測定し直し、ですね。

 ついでだ。

 召喚モンスターに追加もしておこう。

 狙うのはヒッポカムポス。

 ホースとドルフィンが要る。

 クラスチェンジを2段階進めたらウォーホースとマギドルフィンに。

 そしてフューズ・モンスターズで誕生となるのだが。

 問題はヒッポカムポスの海中装備かな?

 駿河と野々村は間に合わせで済ませていたみたいで参考にならなかったし。

 その相談もしておくべきだろう。

 他に追加はどうしましょう?

 召喚モンスターが多くなり過ぎても困る。

 ポータルガードに配備可能な数も増えているのも悩ましい。

 増やすべきか?

 まあ少し時間を掛けて、悩もう。

 急ぐ事はないのだ。

《ポータルガードにより配備の召喚モンスター『バンドル』がレベルアップしました!》

《『バンドル』のステータスを確認して下さい》

《ポータルガードにより配備の召喚モンスター『守屋』がレベルアップしました!》

《『守屋』のステータスを確認して下さい》

《ポータルガードにより配備の召喚モンスター『スーラジ』がレベルアップしました!》

《『スーラジ』のステータスを確認して下さい》

《ポータルガードにより配備の召喚モンスター『久重』がレベルアップしました!》

《『久重』のステータスを確認して下さい》

《フレンド登録者からメッセージがあります》

 ログインしました。

 時刻は午前5時30分だ。

 今日は最初にサキさんの所に行く予定です。

 数日の間はこの時間にはいる、という事は聞いていました。

 早速、行こう。

 ついでに朝食も買い食いで。

 たまには外食もいい。

 バンドル ヒュドラLv20→Lv21(↑1)

 器用値 30

 敏捷値 43(↑1)

 知力値 18

 筋力値 42

 生命力 51(↑1)

 精神力 18

 スキル

 噛付き 巻付 受け 回避 水棲 匂い感知 熱感知

 気配遮断 威嚇 奇襲 自己回復[大] ブレス 猛毒

 毒耐性

 守屋 バイオロイドLv20→Lv21(↑1)

 器用値 65(↑1)

 敏捷値 26

 知力値 36

 筋力値 24

 生命力 25(↑1)

 精神力 24

 スキル

 手斧 弓 受け 回避 木工 石工 農作 造林 牧畜 調教

 醸造 物理抵抗[小] 魔法抵抗[中] 自己修復[中] MP回復増加[小]

 光属性 火属性 土属性 水属性 木属性

 スーラジ バイオロイドLv20→Lv21(↑1)

 器用値 65

 敏捷値 29

 知力値 35(↑1)

 筋力値 23

 生命力 23

 精神力 24(↑1)

 スキル

 手斧 弓 受け 回避 料理 木工 石工 牧畜 農作 調教 縫製

 物理抵抗[小] 魔法抵抗[中] 自己修復[中] MP回復増加[小] 光属性

 闇属性 水属性 土属性 木属性

 久重 デウス・エクス・マキナLv6→Lv7(↑1)

 器用値 64(↑1)

 敏捷値 36

 知力値 42

 筋力値 26

 生命力 26

 精神力 30(↑1)

 スキル

 剣 両手槍 槌 手斧 弓 小盾 回避 受け 料理 石工

 造林 木工 農作 物理抵抗[中] 魔法抵抗[中] 自己修復[大]

 時空属性 光属性 闇属性 土属性 水属性

 確認は終了だ。

 拠点メニューでは最外郭の建設はまだ途上であるようだ。

 変化は無い。

 ポータルガードの面々の入れ替えはどうするか?

 クーチュリエ、シリウス、ジンバルを残そう。

 逢魔、極夜、雷文を連れ出す事にしました。

 で、メッセージは誰からだ?

 ゼータくんからでした。

『例のアイテムですが、自力で獲って来ないとダメみたいです。残念!』

 ありゃ。

 それは厳しい!

 どうやら駿河、野々村も深海の狩りはそう進めていなかったそうで、ゼータくんと同行するらしい。

 雑談の中でレッサードラゴン・デプスと遭遇している場所は教えてある。

 あの場所か。

 返信しておこう。

 狩り過ぎて蒼玉竜に怒られないように、ね?

 では、W5マップのエリアポータル、静かなる竹林に跳ぼう。

 同行させるのはヴォルフに逢魔、それに鞍馬とキュアノス。

 まずは鞍馬のサイズ測定からだ。

「ども」

「クラスチェンジさせて来るのが早いって!」

 サキさんはそう言うと口元を覆う布巾を外す。

 作業中の姿は給食のおばちゃん状態だが確かにサキさんだ。

 このギャップは中々、大きかったりします。

「確かに、大きくなってるわね」

「お手数掛けます」

「いいのよ。素材に余裕はあるんだし」

 未見の生産職の面々が鞍馬のサイズ測定をする様子を見ながら相談する事に。

 そう、これから追加する予定となるヒッポカムポス用の鞍だ。

「海対応の鞍、ね」

「出来ませんか?」

「同じ相談が来てるもの。ゴム製で検討しているチームもいるし」

「はあ」

 うん。

 実は知っている。

 駿河と野々村が武藤、桜、河野の所に依頼しているからだ。

 その相談にサキさんが対応している所まで聞いてました。

「槌頭水竜の皮で水中対応が出来そうなのは確認済みだけど」

「そうなんですか?」

「鱗のある表皮側じゃダメ。貴方の腰が大変な事になるわよ?」

 ああ、そうか。

 そりゃそうだ。

「試作、でいいなら作れるわね」

「ヒッポカムポスのサイズは?」

「聞いているから大丈夫」

「では追加でお願いします」

「請けたわ!」

 サキさんが何やらブツブツと呟いている。

 いや、これまでも見た事があるんだけど、何だか不気味な笑い声が聞こえているような。

 幻聴?

 いや、聞こえている。

 マッドサイエンティストに通じる何かを感じるぞ?

 今更なのかもしれませんけど。

「納期が読めないけど、いいの?」

「大丈夫です。少し時間が掛かると思いますので」

「少し、ねえ?」

 止めて!

 サキさん、その目は止めて!

 呆れられているのは十分、分かってますから!

 屋台で焼きそばを買い食い、食材を色々と買い込んだら辞去する事に。

 早速、ヒッポカムポス入手を目指すのだ!

 鞍馬はここで帰還です。

 パナールを召喚するのですけどね。

 新たな仲間も追加だ!

 スクーナー ホースLv1(New!)

 器用値  7

 敏捷値 18

 知力値  6

 筋力値 20

 生命力 23

 精神力  6

 スキル

 踏み付け 疾駆 耐久走 奔馬 蹂躙 蹴り上げ

 名前のスクーナーは帆船の一種の事ですね。

 理由は特に無い。

 適当だ。

 その姿は当然、普通に馬なのだが、茶色と白色の斑模様だ。

 見ない訳じゃないけど、少ないと思う。

 装備はどうする?

 パナールのお下がりで済ませましょう。

 かなり大きいけど、どうにか収まった。

 問題は?

 ある。

 狩り場をどこにするのか、なんですが。

 どこも厳しい。

 でも甘やかす理由にならない。

 敏捷値の低さをカバーするには呪文の支援は当然だ。

 そして機動力で少しでも優位な相手にしたい。

 英霊神の島でハードに鍛えましょう。

 無論、スクーナーにはオレが騎乗する訳だ。

 パナールは教官役で。

 オレが騎乗していなくてもパナールは強い。

 配慮すべきなのは鬼神だ。

 空中から襲って来る荒御魂に和御魂。

 地上で高い機動力を発揮する奇御魂に支援役の幸御魂。

 英霊神達よりもこっちが脅威であるだろう。

 大丈夫。

 壁呪文もある。

 呪文で分断する事も可能。

 足止めは色々と出来るのです。

 支援はオレがするべきだ。

 では、S3E6マップのエリアポータル、混沌への奈落に跳ぼう。

 ウォーホースになるまで、止まりませんから!