「ほう……永続マーキング、というのか。初耳だ」

白真龍は、私の言葉を聞いて唸ります。

ちなみに、命名は私ではありません。

この技術を使った後、私のステータスに永続マーキングという技能が出現したのです。

それはつまり、今回私が使ったテクニックが、既に永続マーキングという言葉で呼ばれている既知の技術だったということです。

「それで、その永続マーキングというのはどんな力なのだ?」

白真龍が、興味深そうに話の続きを促してきます。

「はい、それはシンプルに、マーキングが永続するだけの力です」

「ほう。マーキングは様々な要因で解除されるものゆえ、長時間同じ相手をマーキングし続けるのは不可能だと認識しているが」

「ええ、基本的にはそのとおりなのです。けれど、条件を満たせばマーキングで得た情報を持ち続けることも可能なのです」

私が言うと、白真龍は目を見開き、驚きます。

「なんと……そのようなことが」

「やり方は単純で、ずっと攻撃コードを実行し続ければいいのです。すると、その攻撃コードを実行している間、マーキングで得た情報は保持され続けます」

なぜそうなるかと言えば、ファンタズムがそういう仕組みで作られているから、としか言いようがありません。

恐らく、当てた攻撃が終わらない間にマーキングがはずれないようにする仕組みなのでしょう。

「しかし、攻撃をし続けるとなると不便だ。それにあの時、お主は攻撃などしていなかったではないか」

「はい。私は攻撃していません」

私は隠し事せずに手口を打ち明けていきます。

「やっていたのはレリックです。私はあの時、手の中に2つのレリックを生み出していました。片方は自傷攻撃をするレリック。もう片方はカウンターをするレリック。この2つを、手の中の同じ場所に生み出しました。すると、自傷攻撃をしたレリックはカウンターを取られます」

自傷攻撃とは、自分自身へダメージを与える攻撃コードです。ちなみに、敵には当たらないように設定できます。

そしてこれを、レリックのカウンターで受け止めました。

「カウンターも攻撃コードの一種ですから、一度受け止めたら攻撃をしてきた相手のコードをマーキングできます。そして……そのままカウンターを発動し続ける限り、相手のコードをマーキングし続けることができるのです」

カウンターも攻撃コードの一種。それさえわかっていれば、通常の攻撃を放つ必要も無く、永続マーキングを成立させることができます。

要するに、私は自分の手のひらの中で、一瞬のうちに1つのレリックを永続マーキングしていたということです。

発動し続けているのはレリックの、しかもカウンターなので、目にも見えず目立たず誰にも気づかれません。

だから、白真龍も気づかなかったのでしょう。

「なるほど。しかし、そうして永続マーキングをしたとして、何の意味がある? お主がお主のレリックをマーキングしたところで、コード強制できるのはお主のレリックだ。我には何の影響も無い」

「……と、思うじゃないですか。けれど、実は違うのです」

私は、思った通りの勘違いを白真龍が起こしているのに、少しニヤリと笑いながら言いました。

「この話を進めるには、もう一つ前提知識を共有しなければなりません」

私は白真龍の顔を見ながら言います。

「さて、白真龍さん。マーキングとは、何の情報を記憶する技能でしょう?」

意地悪く、私はそんな質問を白真龍にぶつけてみせるのでした。