Three years after D Genesis Dungeon

§ 188 Beginning of Reservation 3/12 (tue)

天皇陛下の一連の退位儀式の走りとなる「退位及びその期日奉告の儀」が、皇居内の宮中三殿で行われたその日の午前中、俺たちの事務所の呼び鈴が鳴った。

ちらりと事務所の時計を見上げると、10時30分を少し過ぎたところだった。

「誰だ? まだ午前中だぞ?」

「先輩。どこかの漫画編集部みたいな発言はやめてくださいよ」

「だって、昨夜遅かったじゃん」

昨夜、午前様になった俺たちは、そのままダンジョン内の出来事について鳴瀬さんに報告し、ついでにモデレートの指針についての打ち合わせをした。

それが終わったころには、「ニッポンの朝をスマイルに!」が標語になっているTV番組が始まろうとする時刻だった。

そのまま仮眠して、さっき鳴瀬さんを送り出したところだった。

どうやらついに三好の部屋に着替えをワンセットキープするようになったらしい。きちんと別の服に着替えていた。

三好がいつもよりは重い腰を上げて、事務所のドアを開けると、血相を変えた翠さんが腰に手を当てて憮然と立っていた。

「梓」

「あ、翠先輩。どうしました?」

「どうしましたじゃないよ! ずっと連絡していたのに!」

「まあ、昨日はちょっといろいろとありまして……」

「色々ってなぁ……まあいい、例のSMDとDカードチェッカーなんだが――」

「あ、予約、どうでした?」

SMDとDカードチェッカーは、どちらも3月11日の月曜日から予約がスタートした。

本来は、3月頭からの予定だったのだが、帰還石だの会談の準備だのでべらぼうに多忙だったので、翌週明けに延期したのだ。

システムを立ち上げてしまえば、後はどうせ常磐に丸投げだったし、丁度、代々木の10層へ潜るタイミングだったので、あまり意識していなかったというのが本当のところだ。

「どうもこうもあるか! すでにバックオーダーが1年分たまってるぞ!」

「はえ?」

SMDの生産は、言ってみれば工場制手工業、マニュファクチュアというやつだ。

月産台数など知れたものだが、なにしろ探索者の、それも一部か研究者くらいにしか需要がない商品だ。一瞬はもてはやされるだろうが、総数は出ないと考えていた。

なにしろ個人で買うには単価がそれなりに高い。結局、簡易版でも35万円、フルスペック版はオプションにもよるが、280万~なのだ。

当初予定よりも少し高額になったのは、投資額を需要予測で割った結果だ。

「最初の8秒でオーダーが殺到してるな」

翠さんが、オーダーのログを図示したものを提示しながらそう言った。

「……初めの10分間だけ、予測スケーリングにしておいて正解でした」

SWS(サマゾン・ウェッブ・サービス)のオートスケーリングは1分間隔だ。

秒単位でアクセスが跳ね上がる事態には対応できない。

「しかし、8秒で予定台数に達するってのは……」

「その後もぱらぱらとキャンセルされたものの購入があるみたいですけどね」

大抵の予約システムは、必要項目をすべて入力した後で注文が実行される。

長々と個人情報を入力させられた挙句、売り切れましたなんて言われるとものすごく腹が立つし、まるで個人情報を引き抜くために、おいしい餌をぶら下げているようにすら見える。

本当にそれが目的のサイトもないとは言えないが……

ともかくそんなシステムはクソだ。

先に欲しいものを選択した段階で、仮注文扱いにすればいいだけなのだ。そこで個数を入力させてもいいし、仮注文はひとつのみの扱いにしてもいい。

そこで売り切れが表示されるなら、個人情報はまだ入力していないわけだし、諦めもつくというものだ。

途中で入力をやめた場合は、キャンセル扱いにすればいいだけだ。

注文にキャンセルは必ず付いて回るわけで、結局はそれと同じことだ。キャンセルまでの時間が短い分、こちらの方がずっとましだとも言える。

特に、今回は入力内容が多かったため、長々と入力した後に物がなくなっているなどと言うことのないように、注文ページにアクセスして希望の機種を選んだ瞬間、SMDの場合は、仮注文扱いで注文数を+1する管理を行った。各種オプションも同様だ。

こうすることで、入力に時間がかかったとしても、1台だけは確保できるということになる。大きな不満は出ないと信じたい。

「各種研究所や、上位探索者は当然として、他にはスポーツ関連や芸能関連の組織からの引き合いが多いな」

「意外と広がってるんですね」

「以前、寿司屋で会った、彼女周辺が震源だろ?」

御劔さんのことか。

確かに、斎藤さんや不破君の影響は大きいだろうな。

「じゃあ、今は予約停止の状態ですか?」

「キャンセルが出るか、販売数の枠を増やさない限り、そうだな」

三好はログの分析を、あれこれと確認しながら、その傾向を調べていた。

「凄いですねぇ。安くないのに」

「何を他人事みたいに。SMDはそれでいいが、問題はDカードチェッカーなんだよ」

「え?」

タブレットから顔を上げた三好は、翠さんの言葉の意味が良くわからないといった体で、首を傾げた。

なにしろ、Dカードチェッカーの高機能版は現時点でも月産1万台の枠を確保してあると聞いていた。

ところが、話は全然別のところから始まった。

「お前、あれ、仮の値段のまま修正してないだろう」

翠は呆れたようにそういうと、予約サイトの金額項目部分を指し示した。

「あ! ……そういえば、ルエミスターの価格を張り付けたままだ!」

それを設定した当時は、きちんとしたEMSの見積もりも出ていなかったし、需要もはっきりしなかったため価格を決められず、今回入試用に用意した単純所持チェッカーは部品代から見て3万くらいでいいけれど、パーティを組んでいるかどうかなどの付加情報を調べる機能を付けたものはどうしようかなと悩んだ挙句、もとのSMD-EASYの予価をダミーで張り付けたままにして、そのまま忘れていたらしかった。

「それって――」

「29,800円と、198,000円です! うわー、ぼりすぎですよ!!」

JDAから依頼された機器の10万円でもボッタクリも甚だしかったのだ。その2倍ともなると、もはや言わずもがなというやつだろう。

こりゃ、価格を改定しないと売れませんね……と落ち込んだ三好を見て、翠さんがかぶりを振った。

「2分で完売した」

「はえ?」

「か・ん・ば・い・した」

「2分で?」

「そうだ」

「1年分が?」

「そうだ」

中島がEMSに渡りをつけたのはいいが、ロットの問題もあって、高機能版は月1万台生産のラインのはずだ。

それが2分で完売? 12万台が?

「あとな。高機能版のキャンセル待ちのバックオーダーが、昨日1日で、620万台たまってるぞ」

「はえ?」

三好が3度目の変な声を出して呆けた後、我に返ると言った。

「ちょ、待ってください? 間違えたイチキュッパ設定のまま販売したチェッカーのバックオーダーが620万台?!」

「そうだ」

「それって、――1兆2276億円ってことじゃ」

20×620から1%を引いて、桁をあわせた三好が目を回しながら言った。

「なに、今年のTOYOTAの3月期決算は売上高が30兆円に届きそうらしいから、それに比べればどってことはないだろ」

翠がことさらこともなげに言ったが、TOYOTAとDパワーズでは利益率が違う。会社運営のコストがまるで違うからだ。それに商品単価も大きく異なる。

もっとも、それ以前に、出来立ての小規模事業者を、世界ランキングでもトップグループの大会社と比べるのはいかがなものだろうか。

「せんぱぁい。どうしましょう?」

オーブの時は受け取るだけだったから、現実感のない大金でも、ただの数字だと思えばよかったが、今回は商取引なのだ。

「どうもこうもあるか。まずは生産ラインをどうにかしないと、年12万台じゃ、その注文をさばくだけで半世紀かかるぞ」

EMSの生産ラインを、月100万台に拡張することは可能かもしれないが、必要な部品の数を確保するのは並大抵ではないだろう。

単なる趣味人の中島さんでは、絶対に無理だ。ヘタすりゃ、グルーポンがやった、どっかのおせち料理の二の舞だ。

「EMSの担当者に連絡をつけて、部品の確保に協力してもらえるかどうかを聞け。あとは中島さんのツテも一応聞いてみろ」

「それって、商品を届ける方向に努力するってことですか?」

現時点ではあくまでもキャンセル待ちが主体だ。だから全部をカットしても、法的な問題に発展したりはしないだろう。

だが――

「あのな、三好。それが商売をする会社の、社会的な責任ってものだろう」

「先輩がまっとうなことを言った!」

「お前な……」

驚くところがそこかよ!

本当のところ、そんな責任は、実際にはないだろうが、これらはほとんどすべてが試験対策用であることは明らかだ。

この世から試験をなくすことはできない以上、その試験から不正をなくすことは、試験というものの性質から言っても急務であることは間違いない。

この機器なしでは、ほぼ防ぐことが出来ない不正――それをなんとかするのは、パーティシステムを掘り起こしてしまった俺たちの義務であるのかもしれない。

「周知期間を置くべきだったかなぁ……」

「先輩がなにを考えているかはわかりますけど、周知期間を置いたところで、対策がありませんからどうにもなりませんよ」

それは全くその通りだ。

冷静に考えれば、たった1か月ちょっとで、ここまで形にした俺たちをほめてほしいくらいだ。いや、俺たちっていうか三好と中島さんなんだけどな。

◇◇◇◇◇◇◇◇

フランスのCOS(特殊作戦司令部)に作られたダンジョン攻略組織CD(コマンデ・ドンジョン)のリュトゥノーコロネル(*1)(中佐)アルテュール=ブーランジェは、明治通りを恵比寿から三田方向へと進む車に乗っていた。

外苑西通りを越えてすぐの、ニュー山王ホテルの向こう側の狭い路地を左折すると、すぐ右手にモダンで格好いい建物が現れる。思わず写真を撮りたくなるステキ建築物だが、ここは撮影禁止。

それがフランス大使館だ。入り口の建物は小さいが、正面からは見えない裏手には広大な庭と大使の公邸が建っている。

すぐそばには、ドイツ大使館や、欧州連合の代表部も存在していた。

車の後部座席から降りたブーランジェ中佐は、これから追及されるであろう内容について、思わずため息を吐いた。

あの3人が失われて、泣きたいのは現場(われわれ)なのだ。

彼らが消息を絶った場所は、どういうわけかJDAが知らせてきた。

探索者が、フランス製のポーターの残骸を見つけたそうだが、世界でもトップに近いパーティが、言ってしまえばたかだかゾンビとスケルトンに殺されるとはとても思えない。

そこで何かがあったことは確実だ。

夜の10層は特別で、イギリスも中国も大変な目にあったという噂だけが聞こえてきていたが、何が特別なのかは行ってみなければわからない。

ポーター内のブラックボックスを回収できれば、それらも明らかになるだろう。

「それにしても面倒な」

ブーランジェ中佐は、人知れずそう吐き出した。

ダンジョンは、人の痕跡をすぐに失わせる。ともかくすぐにでも実地で調査を行う必要があるにもかかわらず、日本でのプロジェクトの責任者だった彼は、お偉いさんたちのために大使館まで呼び出しを食らっているのだ。

一応、別のチームを先遣隊として送り出してはいたが、自分の目で調査したかった彼は、少し憤慨していた。

廊下を歩いているとバタバタとあわただしく活動している人間が多い。

まさか自分たちの関係者なのか? と、そのうちの一人を捉まえて尋ねてみると、彼はオーディオビジュアルの担当官だった。

どうやら、夕方からアンスティチュ・フランセ東京で、「映画/批評月間~フランス映画の現在をめぐって~」と銘打たれたイベントの試写会があるらしく、その監督のクレール・ドゥニのアテンドで、関係者が忙しくしているらしかった。

「ハイ・ライフ、ね」

そこに貼られていたポスターを見た彼は、上流階級で、ジュリエット・ビノシュが相手をしてくれるような世界にゃ、どうせ縁がないと鼻を鳴らした。

彼は、タイトルを見て映画の中身を誤解したのだ。

とにもかくにも報告会と言う名のつるし上げをどうにか切り抜けなければ。

彼は、最終的には、意味のよくわからない、この命令を持ってきた上官にすべてを押し付けるつもりになっていた。

◇◇◇◇◇◇◇◇

掲示板:【だんつくちゃん!?】代々ダン 1558【って、本物なの?!】

......

103:名もない探索者

しかし、まさかダンツクちゃんからレスが付くなんてなぁ……あれって本物?

104:名もない探索者

なわけあるか。

105:名もない探索者

ここはぜひ、「私は、ダンジョンの向こうからやってきた、だんつくちゃんなのだ!」って言ってほしかった!

106:名もない探索者

いやでもさ、なりきりにしたってなぁ。みんなに奉仕するために来たってなんだよ、奉仕って。

107:名もない探索者

ぐへへへへっ。ぺろぺろ。

108:名もない探索者

ヤメロwww

109:名もない探索者

ところでだんつくちゃんなのか、ダンツクちゃんなのかはっきりしろ。

110:名もない探索者

一応質問箱の記述は、だんつくちゃん。ちゃんが敬称だと考えた連中が、ダンツクちゃんを混在して使ってる。

111:名もない探索者

ダンツク=チャンという謎の中国人だという線は?

112:名もない探索者

ダン=ツ=クチャンかもよ。

113:名もない探索者

ああ、俺もだんつくちゃんにご奉仕してもらいたい……

114:名もない探索者

クチャンってなんだよ。

115:名もない探索者

旧ユーゴスラビアあたりにあるだろ、クチャン。

スロベニアを独立に導いた大統領は、ミラン=クチャンだしな。

116:名もない探索者

スロベニアってどこだよ。

117:名もない探索者

旧ユーゴスラビアの北の端っこ。

イタリアとオーストリアとハンガリーの間だ。

118:名もない探索者

変態紳士の社交場はこちらですか?

119:名もない探索者

だけどさ、妙にリアルなところもあるんだよな、あれ。

120:名もない探索者

そりゃ、中の人はJDAだろ? 情報としては正確なところなんじゃないの?

121:名もない探索者

単なる空想って感じじゃないよな。あれだけ色々聞かれて矛盾がないし。

122:名もない探索者

なりきりスタイルのダンジョン情報局みたいなものか?

123:名もない探索者

しかし、あのパルサーからの距離に全部答えてたのは笑ったよな。あれってなに? 本当にその位置に惑星があるのかね?

124:名もない探索者

観測できる距離なら確認もできるけど、あれはちょっと無理だろうな。まあ、だから書いたんだともいえるが。

125:名もない天文ファン

いや、ちょっとだけ計算してみたんだけどさ。あれ、矛盾がないんだけど。

126:名もない探索者

矛盾がない?

127:名もない天文ファン

ほら、空間上の点からの距離で位置を表現するってことはさ、2点までなら球の交わる円周上のどこかってことじゃない?

128:名もない探索者

そうだな。球が届かなかったらその時点でアウトだな。

129:名もない天文ファン

で、さらに1点を加えると、ほぼ2か所に限定されるわけ。

130:名もない探索者

そらまー、その円が、たまたま新しい球の球面上にない限り、そうなるわな。

131:名もない天文ファン

その他の距離も、11個すべてで破綻しないんだよ。

132:名もない探索者

先に自分の恒星を適当に決めてから、各パルサーとの距離を作り出せばそうなるだろ。俺でもできるぞ。

133:名もない天文ファン

そうなんだけどさ、SGR1806-20が抜けてるんだよ。

提示されていたパルサーは12個なのに。作り事なら一つだけ抜くなんて変だろ?

134:名もない探索者

資料が見つからなかったとか?

135:名もない天文ファン

地球で知られている最強のマグネターだよ? それが抜けているって変だろ?

136:名もない探索者

いや、回りくどいよ、天文ファン。それがどうしたんだよ。

137:名もない天文ファン

いや、それを説明できる仮説が一つだけあるんだ。

138:名もない探索者

仮説?

139:名もない天文ファン

そう。他の11個からの距離から、ある座標が導かれたとき、その座標とSGR1806-20までの距離は、地球とSGR1806-20の距離よりもずっと近いわけ。

地球からはざっと5万光年なんだ。

140:名もない探索者

それが?

141:名もない天文ファン

マグネターが軟ガンマ線リピーターとして存在できる期間は短くて、せいぜいが1万年程度と推測されているんだよ。

142:名もない探索者

つまり、ダンツクちゃんのいる場所は、地球よりも何万光年も近いから、地球で見ているそのマグネターは、ダンツクちゃんたちが見ている同じ星よりも何万年も前の姿だってこと?

143:名もない天文ファン

その通り。

2~3万年も違えば、軟ガンマ線リピーターどころか、AXPの状態も通り越して、活動を停止している可能性があるんだ。

144:名もない探索者

AXP?

145:名もない天文ファン

Anomalous X-ray pulsarな。高エネルギーのX線パルサーで、これも短寿命だと考えられている。その長さはざっと1万年。

今のところ、軟ガンマ線リピーターの寿命が尽きるとAXPになって、さらにその寿命が尽きると活動を停止すると考えられているんだ。

146:名もない探索者

――うん、よくできた設定だね!

147:名もない探索者

ハハハハハ、だなっ!

ダンジョンくぐったら、何万光年も先の星でしたとか、乾いた笑いしか出ないぞ。ラブクラフトか?

148:名もない探索者

まだ、同時に重なっている全然別の次元の宇宙でしたとかいうほうが納得できるかも。

もう、名もない天文ファンまでが仕込みってことで!

149:名もない天文ファン

ええー? どっちも同じくらいトンデモだと思うんだけど……

まあ、仕込みでいいやw

150:名もない探索者

開き直った!

......

538:名もない探索者

これって書けてるか?

539:名もない探索者

何言ってんだお前。新しいスマホのテストか何かか?

540:名もない探索者

書けてるのかよ!?

541:名もない探索者

おちけつ。いったい何を興奮してるんだ。

542:名もない540

いいか、よく聞け。……俺は今、代々木の3層にいる。

543:名もない探索者

……

544:名もない探索者

……

545:名もない探索者

……

546:名もない探索者

……乙

547:名もない540

いや、たまたま、ポーターを見かけたから、写真にとっとこうと思ったんだよ。

548:名もない探索者

ああ、最近増えたな。ポーターの活動。

549:名もない540

だろ? いや、まあそれはどうでもいいんだ。そしたら、同期しましたって、Dropboxから通知が来て……

550:名もない探索者

お前、Wi-Fi接続時じゃなくても同期させてんの? 転送量制限にすぐに引っかからないか?

551:名もない探索者

単なる設定し忘れだよ。いつもはダンジョンに潜るときは、Wi-Fiもモバイルネットワークもオフにするんだ。

552:名もない探索者

それを忘れていたと?

553:名もない探索者

お前ら、問題はそこじゃないだろ。なんでダンジョン内からDropboxが同期できるんだよ?

554:名もない540

そう! それ!! 俺も驚いて、アンテナ確認したわけ。そしたらさ、3本立ってるんだよ!

555:名もない探索者

それで、これを3層から書いてみたって?

556:名もない540

そう。

557:名もない探索者

ダンジョン内って、別の空間なんだろ? 電波が届くわけないし。ほらもいい加減にしろよ。

558:名もない540

嘘じゃないって。嘘だと思うなら、お前らも3層に来てみろよ!

559:名もない探索者

キャリアはどこよ?

560:名もない540

ソフトバーク

561:名もない探索者

ああ、なるほど。宣伝乙。

562:名もない540

ちーがーうーっての!

563:名もない探索者

よし、確認にいってやるよ。俺は今YDカフェだから。

564:名もない探索者

お。勇者登場。1層から確認してくれよ。

565:名もない勇者

ちょっと待ってろ。

566:名もない探索者

自分で勇者ってwww

567:名もない探索者

他には、近場にいないのかな、ここ見てるやつ。

568:名もない探索者

そんなにはいないだろう。ダンジョン内じゃどうせ通信できないって思ってるだろうし。

569:名もない探索者

しかし、もしも本当なら、凄くないか? 通信量さえ気にしなければ、ダンジョン内からライブで動画が――

570:名もない探索者

ガタッ

571:名もない探索者

ガタッ。俺いますぐ、「潜ってみました」って番組作って来るわ。

572:名もない探索者

新しいYouTube番組の波が!

573:名もない探索者

時々犠牲者が……

574:名もない探索者

不謹慎だな。でもまあ今でも配信中に、後ろが火事になってたやつとかいたしなぁ……似たようなものか。

575:名もない勇者

おい……これマジか?

576:名もない探索者

お、勇者の帰還だw って、なに、もしかしてそれ1層から書いてるって設定?

577:名もない勇者

本当にアンテナ立ってるぞ。嘘だろう。ちな、俺はDOCOMO。

578:名もない探索者

おいおい、これはマジなのか? 本当にダンジョン内から接続できるようになったってことか?

579:名もない探索者

何かJDAからアナウンスがあったか? ダンジョン内に基地局建てましたとか。

580:名もない探索者

計画だけは、昔からあるけどな……現時点では、自衛隊が物量で、各階に簡易の通信基地を作って下とは有線接続してリレーしてるってのがせいぜいだろ。

581:名もない探索者

ちょっと誰かJDAに問い合わせてみろよ。

582:名もない探索者

二人が共謀してやった狂言って可能性は?

583:名もない探索者

そりゃあるかもしれないが……意味はあまりないからなぁ。4月1日とかならともかく。

584:名もない探索者

ともかく、確認できる奴は確認してみるってことで。

585:名もない探索者

そうだな。俺もちょっと行ってみるわ。

586:名もない探索者

報告を待ってるぞー。俺んちは遠いから。

......

そうして、ダンジョン内の知人に電話してみるものや、SMSや各種SNSのツール使って連絡を取ってみるものなどが少しずつ増えていき、4時間後には、世界初のダンジョン生中継チャンネルがYouTubeに開設されていた。