To Be a Power in the Shadows!
Everything's connected, but only within the limits of our assumptions.
フレイヤさんは僕のことを見ていなかった。
僕の存在には気づいているだろう。しかし彼女の視線の先にあるのは、虚空。
僕には彼女が何もないところをじっと見つめているように見えた。
でも違った。
フレイヤさんが虚空に手を伸ばすと、その手が消えた。いや、どちらかというと吸い込まれたと言った方が正しいだろうか。
彼女の手は虚空に吸い込まれて消えたのだ。
そこに、目に見えない何かがあるのだ。
フレイヤさんは僕を見た。
そして、何かを呟いた。
その呟きは聞き取れなかったけれど、彼女の口の動きで分かる。
『きて』
確かに彼女はそう言った。
彼女の身体は腕の先から何もない空間に吸い込まれていく。その間、彼女は僕とヴァイオレットさんを見つめていた。
そのままフレイヤさんは消えた。
「消えたようだ」
と、念のため僕は言った。
ヴァイオレットさんはそんなこと見ればわかるとでも言いたそうにペチペチと僕の足を叩いた。
でも僕には気になることがあったのだ。
この感覚はなんだろう、聖域で感じたものと似ているような。
聖域では魔力が吸い寄せられていた。でも、ここでは魔力は吸われていない。それどころか魔力そのものをあまり感じない。
でも、何かが吸い寄せられているような気がする。
僕はフレイヤさんが消えた虚空を観察したけど何も分からなかったからそのまま虚空にダイブした。
「とう!」
と、競泳選手の飛び込みスタイルでスタイリッシュにダイブ。
念のためシャドウモードに変装するのも忘れない。
ヴァイオレットさんは足にくっついてきた。
そして僕は光に包まれた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そこは、白い壁と、白い床と、白い天井が続く空間だった。
一定の間隔で、左右にポッドが並んでいる。
どこかの研究施設のようだった。
フレイヤさんは、ポッドの前に立ってる。
僕は手近なポッドの中を覗き込んだ。
「これは……」
ポッドの中には人の姿をした何かが入っている。それは、人と悪魔憑きとを混ぜ合わせたかのような、何かの失敗作だった。
白い髪をした女性だが、もう息はない。
隣のポッドの中身は、人としての原形をとどめていなかった。臓器の集合体だ。
隣も、その隣も。
どれも何かの失敗作で、誰も息をしていない。何かのサンプルとして保管されているかのようだ。
僕は無数にあるポッドの中を見ていくうちに、一つの共通点に気づいた。
彼女たちはおそらく全員が女性で、似ているのだ。
あるポッドは、いつか聖域で僕と戦ったオリヴィエと呼ばれていた女性に。
またあるポッドは、ヴァイオレットさんと誰かを混ぜたかのように。
隣のポッドの獣人の彼女は……。
そして、フレイヤさんが立つポッドを覗き込むと、そこにいたのはフレイヤさんと瓜二つの存在だった。
フレイヤさんはそのポッドの前で、ずっと立ちすくんでいた。
「全てが繋がったな……」
僕は意味深に呟いた。
何かすごい施設を見つけたようだったけど、それが何かよく分からなかったから、とりあえず分かっている雰囲気だけは出しておく。これが大事。
「始まりはディアボロス……そして千年を超える長き物語が始まった……だがこれは、歴史を紐解けば辿り着く簡単なことでしかない」
ピクピクと、ヴァイオレットさんが同意した。
「現在と、過去と、未来を繋ぐその先は……想定の範囲内だったようだ」
これでもかと分かっている感をアピールする。陰の実力者にとって全てが想定の範囲内、意外なことなど何一つとしてないのだ。
バサッと僕がコートをはためかせたその時、まるでノイズが走ったかのように空間が歪んだ。
「招かれざる訪問者がいると思ったら……なるほど、貴様がシャドウか」
歪んだ空間から声が聞こえてくる。
「まさかこれほど早く辿り着く者が現れるとは……もっとも、貴様は全てを知っていたようだが」
そして、一人の男が現れた。