Tondemo Skill de Isekai Hourou Meshi
Lesson 199, two-thirds and one-third.
影の戦士(シャドウウォーリア)の面々とともにみんなで冒険者ギルドに入ると、すぐにギルドマスターのヨーランさんがやってきた。
「おや? もう終わったのかのう?」
「ええ。きっちり殲滅してきましたぜ。とは言っても俺らはほとんど仕事してませんがね」
アロンツォさんがそう言って苦笑い。
ほとんどフェルたちが倒しちゃったからね。
「買取お願いしたいんですけど、数が多いんですよね」
影の戦士(シャドウウォーリア)の面々はアイテムボックス持ちじゃないから、全部買い取りに出すってことだったんだよね。
俺としても、明日までに解体してもらえる分については肉にしてもらいたいし。
「そうか。そいじゃ倉庫に行くかのう」
俺たちはヨーランさんの後について倉庫に向かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「お、今日は何ですかね?」
俺たちが倉庫に入ると、ホレスさんがいてそう聞いてきた。
ちょうど解体が終わったところのようで、手を拭いている。
「アロンツォさんもみなさんも、さっき話し合ったとおりでいいですかね?」
街に帰ってくる間に、俺と影の戦士(シャドウウォーリア)の面々でアイテムボックスに入ってるオークの分け方や依頼報酬の分け方については話し合いが付いていた。
「ああ、いいぞ。お前らもいいよな?」
アロンツォさんがそう他のメンバーに聞く。
「ああ、もちろんだ。もらい過ぎなくらいだからな」
「これで文句言ったら罰が当たるぜ」
「ホントだよな」
クレメントさんとマチアスさんとアーネストさんがそう答えた。
「ホレスさん、明日の朝までにどれくらいのオークを解体できますか?」
そうホレスさんに聞くと「がんばって15だな」と返ってきた。
「それでは、この15匹をお願いします。それでですね、肉は私に、それ以外は買取をお願いしたいんですけど、その買取代金の支払はこちらの影の戦士(シャドウウォーリア)の皆さんにお支払願います。話し合いでそうなりましたんで」
アイテムボックスからオークを15匹取り出しながら、ホレスさんにそう伝える。
「肉はムコーダさんで、それ以外の買取代金の支払いは影の戦士(シャドウウォーリア)へってことだな。分かった」
俺が出したオークを検分しながらホレスさんがそう言った。
俺と影の戦士(シャドウウォーリア)の面々とで話し合って決めたことは次のとおりのことだ。
まずは俺としては肉がほしいから、とりあえず明日の朝までに解体できる分は解体してもらいたい。
その分については、肉は俺の方で、その他の買取代金は影の戦士(シャドウウォーリア)へということ。
残りのオークについては、最初は等分に俺と影の戦士(シャドウウォーリア)で半々に分けようとしたんだけど、それはできないって影の戦士(シャドウウォーリア)の面々に突っぱねられた。
「ほとんど仕事してねぇのにそんなにもらえねぇよ」
影の戦士(シャドウウォーリア)の4人とも口々にそう言った。
それで話し合った結果、俺が3分の2で影の戦士(シャドウウォーリア)が3分の1に決まった。
それでも影の戦士(シャドウウォーリア)の面々は「俺たちのもらい分が多すぎる」ってボヤいてたけどね。
俺としてもフェルのおかげで金はそれこそ使い切れないほどあるからさ。
それより肉の方がうちとしては大事だし。
その肉にしたってオークの数が多過ぎたからこうしてもらったんだけど。
「あ、みなさんの分の3分の1はここで全部買取してもらうってことでしたよね?」
「ああ。俺たちの中にアイテムボックス持ちはいないし、今のところマジックバッグもないからな」
オークの3分の1といってもかなりの数になるが、影の戦士(シャドウウォーリア)の面々には保存方法がない。
だからネイホフの冒険者ギルドですべて買取してもらうつもりだとのことだった。
「そういうことなんで、ホレスさん、かなりの数になりますけど出して大丈夫ですか?」
「影の戦士(シャドウウォーリア)の取り分のオークはうちで買取ってことか?」
「ああ。お願いする」
ホレスさんに案内されて倉庫の空いた場所にオークを出していく。
今回のオークの集落殲滅で俺たちが得たのは、オークジェネラル×6、オークリーダー×18、オーク×179だ。
その中からオーク15匹を差し引いた3分の1に当たるオークジェネラル×2、オークリーダー×6、オーク×54を影の戦士(シャドウウォーリア)の分、残りは俺の分となった。
「えーと、これが影の戦士(シャドウウォーリア)の分です。オークジェネラル×2、オークリーダー×6、オーク×54ですね。アロンツォさんたちも確認してくださいね」
「さっきムコーダさんが出してるときに確認したから間違いねぇよ」
「ああ、俺たちも確認してたから間違いねぇ」
数に間違いはないようだね。
「俺たちはネイホフにあと4、5日は滞在する予定だから、ムコーダさんに渡す分を優先してくれ」
アロンツォさんがホレスさんに向かってそう言った。
「分かった。それじゃ、ムコーダさんは明日の朝には渡せるようにしておくから取りに来てくれ」
「分かりました」
明日この街を出る前にここに来て肉を回収だな。
「買取の話は終わったかのう?」
買取の話が終わったところを見計らってヨーランさんがそう言った。
「ムコーダさんが明日にはこの街を離れるってことじゃったから、この場で報酬を支払うからのう。ほんで今回の依頼の報酬じゃが金貨180枚じゃ。影の戦士(シャドウウォーリア)もいるから金貨で用意したが、それでいいかのう?」
影の戦士(シャドウウォーリア)の面々もいるし、それなら確かに金貨の方がいいかも。
「はい、大丈夫です。みなさんも大丈夫ですか?」
「普通は金貨じゃねぇのか?」
マチアスさんが不思議そうな顔をしてそう聞いてくる。
「あのですね、金貨だと多過ぎて重いんで今までは大金貨で支払ってもらってたりしたんです」
俺がそう言うと、影の戦士(シャドウウォーリア)の面々が驚いた顔をして「さすがAランクは違うな」とか言い合っていた。
「そいじゃ、これな」
ヨーランさんが金貨の入った麻袋を俺の前に置いた。
「それじゃ、金貨180枚の3分の1ってことで金貨60枚が影の戦士(シャドウウォーリア)の分ということで」
俺は麻袋の中から金貨60枚を数えてアロンツォさんに渡した。
「何か悪いな。俺たちの出番ほとんどなかったってのにこんなにもらっちまって」
「いえいえ、それを言うなら俺だってほとんど出番なしでしたからね。というか、それはいつものことなんですけど。フェルたち強いですから」
そう言って倉庫の隅で寝ているフェルたちを見る。
「ああ。あの強さは反則だな。さすがフェンリルというところか」
「アロンツォ、フェンリルだけじゃねぇぜ。あのちっこいドラゴンも強かったぞ」
「クレメント、それを言うならあのスライムもめちゃくちゃ強いぜ。スライムがあれほど強いとは思わなかったぜ」
アロンツォさんとクレメントさんとマチアスさんがそう言い合う。
「要はムコーダさんとこの従魔はどれも強いってことだろ」
アーネストさんがそう言うと「違いねぇ」とアロンツォさんとクレメントさんとマチアスさん。
「それじゃ、明日は早めにこの街を離れる予定なんで、この辺で帰らせてもらいますね」
「おう。俺らは一足先にエイヴリングのダンジョンに挑んでるぞ」
「はい。エイヴリングでお会いしたときはまたいろいろ教えてください」
こうして俺たちは影の戦士(シャドウウォーリア)の面々と別れ冒険者ギルドを後にした。