「……魔王だと? 貴様は魔物を従えてはいないでないか!」

「ほう……」

俺は首を鳴らす。

そして頭の中で魔法発動をさせた後の事象を想像しながら力ある言葉を紡ごうとした。

「ルーグレンス様! 距離を!」

「分かっています」

「【風刃】」

発動させた魔法が周囲の大木を一斉に切り倒す。

「ば、ばか……な……。無詠唱にして魔法陣展開なしでの魔法発動……だと……!?」

無数の風の刃が20メートルを超える木々を倒していく中、アルデバランが驚愕な眼差しで俺を見てきていたが、俺は構わず腕を組んだ。

「この者、やはりただの魔法師ではありませんね」

ルーグレンスが、俺の事を睨みつけてきているが、人様の体を勝手に乗っといておいて何を言っているのか。

「だまれ、寄生虫。それと魔物だが、俺の後ろ――、北の空を見てみろ。お前達なら見えると思うが」

「――な!?」

「ば、ばかな……。アルネ王国の竜山脈ドラゴンピークの協力でも得たというのか? あれだけのレッドドラゴンやワイバーンをどうやって使役しているというのだ!?」

戦慄きながらアルデバランは北の空――、妹がテイムしたドラゴンの群を見ている。

さらにユリーシャの中に寄生しているルーグレンスは、目を見開き「――ハッ!? それよりも、あの方向にはウラヌス十字軍の空中戦艦の艦隊が移動中だったはず――」と、言葉を紡いでいた。

「さて、これで理解出来たか?」

「――クッ。ルーグレンス様、この者を――」

「そうね」

アルデバランの言葉にルーグレンスは口元を歪めた。

どうやら何か考えがあるようだな……。

「ユウマと言ったかしら?」

「普通に話せ」

「そう。貴方が魔王なら私達に協力しない?」

「協力だと?」

「ええ。魔王は覚醒する前、普通の人間と変わらないの。大抵は、人間の中で暮らすから善意の心を持つ聖人として覚醒する。そして、偽善を振りかざして停滞を望むの。私達は、世界を変えなければならない。だから、私みたいな力を持つ者が必要なのだけれど……」

「……」

「貴方の性格なら魔王にピッタリ。私達に協力をしてほしいのだけれども?」

俺は大げさに両手を広げながら「世界を変えるね……」と、溜息交じりに言葉を呟く。

そして……。

「悪いが興味はないな」

「貴方だって、この世界の理不尽さを理解しているはず。元居た村に居なかったのが、その原因ではないの? ――なら、私達に協力するのも……」

「一つ勘違いしているな。俺は、俺の意志で自分の村を出た。それに、貴様らは――」

――俺の妹を狙っている。

続く言葉は、そのまま飲み込む。

俺は妹を守るために村を出た訳だ。

そして、ウラヌス教は俺の妹の意志を奪って人形にして利用すると言っていた。

さらに俺の仲間にも手を出してきた。

つまり……。

「――俺の敵だ。どんな理由があろうが、大義名分があろうが世界を救うというお題目があろうが、俺の敵ならば殲滅対象だ!」

「……アルデバラン、どうやら彼には言葉が通じないようね」

「そのようで――」

「好きに言っておけ」

肩を竦めながら答える。

それと同時にアルデバランが指を鳴らすと人間に扮装していた従属神達が黒い鎧を身に迷った狼に似た獣に変化する。

奥の方からは悲鳴が上がってくると同時に、人間の存在を現していた光点が減っていく。

「使役していた魔物を連れて来なかったのが貴様の敗因だ!」

何やらアルデバランが叫んでいたようだが、俺はすでに身体強化魔法を使って空に跳躍している。

「【探索】魔法を展開。【土壁】の魔法を発動!」

俺が発動させた魔法が、ルーグレンスが率いていた軍――、従属神と人間の兵士達を分け隔てる壁を作り出す。

一瞬で作られた壁は、人間たちに襲い掛かって従属神を上空へと吹き飛ばす。

「数は117匹。【風刃】の魔法を発動。切り裂け!」

鉄すら用意に両断する無数の風の刃が、空中に打ち上げられた従属神を一掃する。

さらに俺を中心に巨大な円を描くように土の壁を魔法で作りあげた。

地響きを立てて、俺と従属神達を封じ込めるようにサークルが形成されていく。

「貴様! 何をした!」

俺が地面の上に降り立つとアルデバランが怒り心頭と言った様子で語りかけてきた。

「何をしたかって? お前、馬鹿なのか? 敵対している相手に自分が何をしたのか一々説明する奴がいるのか?」

「き、きさま! 言うにことかいて!」

「やれやれ、俺の相手はとんだ戦闘ビギナーってことか」