Vanguard of the Eternal Night
Three hundred and eighty.
「そんな……!? ……記憶喪失か?」
驚いたロイだったけど、それにシャーリーが申し訳なさそうにする様子を見て落ち着いた様子で聞いてくる。
「完全な記憶喪失じゃなくてどうやら俺の事だけ忘れてるみたいのなんだけど……」
ここに戻ってきてからのシャーリーの様子を見る限りではアリィの事も覚えてそうだったし他のメンバーに対しても見て特に変わった表情はしなかった。だから、俺だけの記憶が抜け落ちているのだろう。
「……ごめんなさい…………」
ロイを含め、アリィやラートも戸惑っている様子にシャーリーは申し訳なさそうに謝る。
「いやいや! シャーリーは悪くないって! つて俺が言ったら余計に困るか?」
俺は場を和まそうとしたけど、自虐的過ぎて余計に変な空気になってしまった。
どうしよう……?
「もしかしたら記憶は戻るかもしれない……そう光の精霊ルクスも言っていたからな、焦っても仕方ない。それに、ハルが記憶がなくても一緒に行動するのは嫌じゃないんだろ?」
助け船を出してくれたのはウィルだった。
そして、ウィルの問いにシャーリーは頷く。
「ならば、これからまた記憶……思い出を作ればいい」
「ウィル……」
「まぁおまえたちの関係は一旦白紙だな」
「ロイ!!」
ウィルの言葉に和んだところにロイの一言でいつものような空気が戻る。
なんだかんだでロイも気を使って場を和まそうとしてくれているのだろう。
それにシャーリーの事はもう一度惚れさせたらいいだけだ。……大丈夫かな?
「おーい、出来たぞ!!」
勢いよく扉が開いたかと思うとアドルノさんの声が部屋に響いた。