「マリカナさん、両方の頬に蚊でも止まっていましたか? くすくす」

「メーリアさんって、確かお付き合いしている方が?」

 目を丸くしたメーリアさんはコホンと咳をしてからこう言う。焦ってる焦ってる。

「いえ、ただの噂ですわ。それは、まあ、お人の悪い、マリカナさん」

「確か許嫁とか??」

 口をポカンと開け、閉め、歯ぎしりしながら、こちらを睥睨する、メーリアさん。あの噂って本当なのね? でもあの恰幅のいいのと……なんだかかわいそうね。