日々の暮らしと付き合ってきて、そこに埋没する幸せを今ほど、意識したことはない。トレーニング用器具のあいだの通路をうろついていて、急に昨日やそれ以外の日を懐かしく感じる。おっと、前方からタンクトップのガリマッチョの男性が歩んできて、衝突しそうになりさっと右に寄った拍子に器具につまづきずっこけそうになり、その男性に腕を掴まれ、けがを免れた。

「ありがとうございます」

「……」

「あの、手を放してもらってもいいですか?」

「……」