ゴゴゴと雷鳴音が響く。ついと顎を上げ窓を見つめる。陽光が薄らぎ、不穏な天気に様変わりしている。しかし、今日は雨は降らないと新聞にあったのにな。薄暗くなった外の道は活気を失ったような静けさで満たされたようだ。子供の頃、雨が降ってそれでも遊んでいたらお母様にとがめられたなあ。「あなたは貴族なのよ。自尊心と自負心をもちなさい」と。どうにもこうにも雨に対する憧憬。楽しみになる雨音。雨の音がピアノ奏者が奏でる旋律が退屈をまぎらわせてくれる。ポツポツ、ポツ。ザー。粋な雨のとりはからい。一種のアートだと思った。勉強中にも耳を楽しませてくれた。すねをもまれている。そこは痛くないなあ。ちょっとつりそうな気もするけど。天井を見ていて点灯している照明の、降り注ぐ光に目がちりちりと焼けた。