VRMMO Summoner Hajimemashita
Twenty-sixth one, too. Believe me, hold on.
「イったぁ!ぶっとんだぁ!弾けとんだぁ!!くひっ。我らが神に逆らうからこうなるのですぅ!何も成すことも無く死んでぇ!我らが神の元にも行けず、永遠地獄を彷徨うのだぁ!ふひ、ふははははははは「だぁれが死んだって?」はははは、はぁん?」
光線技なのに何故か大爆発を起こして巻き起こった粉塵の向こうで好き勝手言ってくれた神父に一言文句を言うと、粉塵が晴れた向こうで両手を高く広げた神父がシャフ度で振り向いてた。いや、普通に怖いんですけど。クレアの教育に悪いからさっさと潰そう。
「き、キサマ……なんだその角はぁ!!お前はキツネ獣人じゃなかったのかぁ!!はっ、さてはワタシを騙したのですねぇ!この卑怯者がぁ!!」
「……いろいろ言いたいことはあるが……お前にだけは卑怯者と言われる筋合いはないな」
『メェ~』
ふぃ~。詠唱が終わったからやっと喋れるぜ。奥義の詠唱長すぎるんだよ。まぁ、奥義だしな。初手より奥義にてつかまつる方がおかしいのか。でも必要な事だったんだよ。信条的に。相手への敬意はゼロなのであしからず。
「ワタシの”暁光”を喰らって無傷……それにその角、辺りに漂う金の粒子……くひっ。分かりましたよぉ?あなたヤギ獣人ですねぇ?血が極めて濃いヤギ獣人は”金剛”と言う特殊スキルを覚えるらしいですねぇ?”金剛”の発動中は物理魔法の抵抗が著しく上がるとかぁ?
で・も。代わりに身動きを取ることが出来なぁい!つ・ま・り。あなたを無視して周りのザコを先に始末すればいいだけのことぉ!くひっ。そこで仁王立ちしたまま仲間がなぶりになる様をジックリ楽しむがよいですよぉ!」
「話が長い。セリフが早い。抑揚が変。二人称がコロコロ変わり過ぎとか色々ツッコミたいことはあるが……お前とダラダラ会話をするつもりは無いからな。致命的な思い違いを1つだけ訂正しておこう」
なんかクネックネと体を捩らせながら何一つ合ってない推理を垂れ流す黒神父。
若干面白い気がしないでもないが、それ以上にキモイからさっさと消毒してしまおう。
「俺が使ってるのは”金剛”じゃない。このスキルの名前は、金剛―――」
一番防御力の高い仁王立ちの姿から両手を解いて足に力を込める。”金剛”ならばこの時点でスキル効果が切れてしまうが、俺の場合は金剛が切れる事はなく、むしろ俺の体から金色の粒子の様なものが吹き出し、その粒子を伝う様に雷が奔った瞬間……俺の体がかき消えた。
「―――迅雷だッ!」
『メェ!』
「ごぶるぁ!!?」
俺の渾身のショルダータックルを胸に喰らった神父が俺がぶつかった運動エネルギーを全て受け取って壁に激突した。
金剛迅雷は防御力をめっちゃ上げる金剛の効果に加え、移動速度もメチャクチャ上げて最硬の弾丸になって相手に突っ込む脳筋技だ。
こうやって書くと超便利な技で全然脳筋要素無いじゃんって思うが……この技ね。移動速度がメチャクチャ上がるの。自分の姿がかき消えるぐらい上がるの。つまり何が言いたいかと言うと……自分でも制御できねえ!走りだそうとしたときにはもうぶつかってるというね。雷速ダメだわ。人間の速度じゃねぇ。
なにせアイギスに制御を手伝ってもらったのに、出来たのは真っすぐ走る……というかむしろ転がって肩から神父に突っ込むぐらい。そんなのでも金剛の防御力上昇効果で反動ダメージは無し。金剛が無ければ自分の速さに耐えられずミンチよりひでぇ状態になってた可能性もビレ存……
「ぐふっ。ま、まさかこ、このワタシが負ける……とでも思っていたわけですかぁ?くひっ。確かにアナァタの防御力も速度も攻撃力も素晴らしぃ!だがそれだけなのですぅ。ふひひ。ざぁんねぇんですがワタシにあなたの攻撃はとどかなぁい!ワタシにはこの絶対防御の十字架があるのですからぁ!あぁ我が神よぉ!あなた様の愛はいつもワタシを守ってくださるぅ!」
なぜそこで愛!?
とツッコム気力すら失せるね。大の大人が十字架を手に号泣していると。
にしても、金剛迅雷で損傷軽微かぁ……俺がぶつかった胸に十字架を仕舞っていたのが幸いしたのかな?
まぁ、金剛迅雷に攻撃力の底上げ効果は無いしね。タネはあの黒い十字架らしいが……言わなきゃバレなかったのに何故自分から口にするのだろうか?自慢したかったのかな?
「その十字架が俺の攻撃を防いでいるんだろ?なら……そいつの防御力を超える一撃で粉砕すればいいだけのこと!」
『メェエエ!!』
金剛迅雷発動!今度はゆっくり……落ち着いて……よし神父の前までなんとか到着。実は歩くのが一番難しいんじゃないか?
「歯ぁ食いしばれや!!」
「ひ、ひぃぃ!」
頑張ってゆっくり歩いたが、金剛迅雷で強制的に引き上げられた移動速度の所為で、神父的には一瞬で目の前に現れた様に見えたのだろう。ひざまづいて十字架を掲げた格好のまま、俺へと十字架を差し出すように自分と俺の間に十字架を持ってきた。金剛迅雷中は曲がると転ぶから十字架を正面突破するしかないが、むしろ上等。真正面からぶち抜いてやる!
バーサーク発動!金剛迅雷で高めた防御力を攻撃力に変換!
爆雷発動!高め切った攻撃力の全てを握りしめて十字架をぶん殴る!!
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
『メェェェェェェェ!!』
ピシッ、パキ……
俺の拳が十字架へと接近した瞬間十字架から黒いエネルギーシールドの様な物が発生し、一瞬俺の拳と拮抗するが……すぐにシールドに深い罅が刻まれた。
「ば、バカな!?我が神から授けられた絶対防御が破れるなどありえないぃ!ありえてなるものかぁ!」
「知るもんかぁぁぁ!ぶちぬけぇぇぇ!!」
『メェェェ!!』
パリン……と儚い音を残して十字架がポリゴンになって砕け散り、金剛迅雷に後押しされている俺はかなり勢いを削られながらも神父の頬を全力でぶん殴り抜く。
これは誘拐されて宙づりにされたアリスちゃんの分だぁ!爆雷起爆ぅぅぅぅ!!
「そげぶっ!?」
「ぐわぁっ!」
『メェエ!?』
神父の頬にめり込んだ俺の右ストレートが爆発。神父は真横に吹っ飛び、バーサークで防御力が低下していた俺も爆雷の反動で吹っ飛ぶ。
おおぅ。割とあっぶねぇ。一撃でHPが7割消し飛んだぞ。アイギスもバーサークを使う時は気を付けろよ?
まぁ、アイギスは俺よりも魔力が低くて体力が高いから、爆雷の威力が低くてHPの最大値が高いって事だし被害は小さいかもだけどね。ただ、アイギスの本職は盾役だから防御力低下は普通にやめて欲しいけど。
「い、いやだぁ。負けたくないぃ。死にたくなぃぃ!はっ!そうだぁ。ワタシには人質が居るぅ!ワタシに手を出せばアリス嬢を―――」
「―――アリスなら俺の腕で寝てるけど?」
「ホー!」
「きゅい!」
神父が天井から吊るされているアリスへと目を向けた瞬間。影から飛び出したミズキと純粋な体術で気配を消していたボーパルが空中で交差し、アリスを拘束していたリボンを両方切断。爆雷の反動で偶々アリスの真下に吹っ飛んでいた俺の腕の中に落ちてきた。
ナイスタイミングだぜ2人とも!かっちょいい!
「さて、これで俺の仕事は完了かな」
『メェ~』
共鳴召喚の制限時間はもうちょっとあるけど、MPが尽きちゃったしね。俺の出番はこれにて終了だ。
「はっ。そ、そうですぅ。アリス嬢を取り戻しぃ、ワタシを殴り飛ばしたぁ。あ、アナタの目的は全て達成したと言ってもいぃ!なんならワタシの宝具も付けるぅ!だから早く帰ってくれぇ!!」
「はぁ?何言ってんだ?」
俺がアリスをお姫様だっこで抱えて、神父に背を向けてクレアとイナリの所へと歩を進めると、神父がまた意味の分からない勘違いを口にしだしたので、思わず足を止めて振り返ってしまった。
「終わりなのは俺の我が儘を、だ。もふもふ幼女を誘拐したテメェには久しぶりにキレちまってなぁ……俺のこの手で一発ぶん殴るまでお膳立てだけをお願いして、手は出さないでいて貰ったんだ。つまり……」
「つ、つまりぃ……?」
ぶん殴られた上にほっぺたが爆発したからか、理解力の乏しい神父にも分かりやすいように首から上だけで後ろを振り返った姿勢でニンマリと微笑んでみせる。
「こっから先は総力戦で行かせてもらう」
「きゅい!」
「ホー!」
「コーン!」
「……にゃ」
「……あれ?もしかしてあたしも何か言う流れ?えぇっと……が、頑張るわよ~?」
……クレア……かっこつけてんだから気が抜けるような声出さないで……