色々細かい問題は残るが、それは追々なんとかなるだろう。
問題はスネークス辺境伯領いや、スネークス王国だ。
パトリック・フォン・スネークスが独立を宣言。
それに追従するのは西の貴族達だけでなく、北の辺境伯であったアボット辺境伯家も、スネークス側に合流した。
これにより、メンタル王国の領土が4分の1ほど減った。
しかも西は麦の産地であると同時に、王国の酒を牛耳っていたし、北の山岳地方やアボット領は鉄の産地だったから、さあ大変。
一応、スネークス王国国王パトリック・フォン・スネークスと、メンタル王国国王ウィリアム・フォン・メンタルによる会談で、友好条約の締結と、酒や麦などはスネークス王国から輸出すると取り決められたが、問題は鉄である。
鉄の産地である北方のアボット辺境伯家、現スネークス王国アボット侯爵家が、スネークス王国に統合された事で、ザビーン帝国との国境沿いの北の貴族も、スネークス王国に寝返った。山岳地方のアボット領と、飛地であった元々の領地の間にあった家も、挟み撃ちされてはひとたまりも無いと、スネークス王国に降る。ザビーン帝国の脅威は減ったが、王国内の鉄の産出地の3分の1が失われたことになる。
しかも鉄は、
「ザビーン帝国との戦が想定されます、そのために武器を用意しておく必要があるので、当分の間は鉄の輸出は出来ません」
と、スネークス王国外交官から言われてしまう。
それと旧8軍のほぼ全員と、旧2軍で独身だった兵士の半分ほどがスネークス王国に亡命。
北方面軍も多数がスネークス王国に亡命。そのため王国兵の数も減ってしまった。
西方面軍など、貴族の少将である指揮官から、1番下の兵士までスネークス王国に亡命したのだ。
それにより国内貴族から、スネークス王国を戦で取り返して併合しろと話が出るが、マクレーンの反乱や、それ以前の反乱などにより、兵の弱体化は否めず、さらに精強な兵はスネークス王国に亡命してしまった事もあり、とても戦えない。
なんとか貴族を説得し、スネークス王国との戦は、友好条約締結により回避できただけマシであろう。
もし戦にでもなれば、翼竜二匹を相手にしなければならない。
大陸を焼け野原にしたという逸話の残る翼竜とだ。
それだけはウィリアム個人としても、避けたかったのだ。
現在、西の国境はコナー子爵家、現スネークス王国コナー伯爵家の元領地より西が、北は元の旧アボット伯爵領、現スネークス王国アボット侯爵領より北がスネークス王国となっている。
北と西が半分以上減ったのだ。
「お前も来たのか?」
とある兵士が、新たに亡命してきた顔馴染みに声をかける。
「あの怒鳴り声聞かないと、夜寝れないんだよ」
「お前ドMか?」
「ちがわい! そういうお前だってコッチに来てるじゃん」
「そりゃ、自分でも分かるくらいに、強くなったからなぁ。死神の下に居ればまだ強くなれるかもしれないなら、死神に付くだろ」
「まあな! それになんだかんだで給金も良いしな!」
「ちげえねえ!」
兵士達の会話に、華が咲くのだった。