俺は、ディクソン侯爵邸のホールにいる。
あの後、何事もなく領都に到着。
出迎えるディクソン侯爵、侯爵夫人と使用人、ケビンとの感動の再会。
その後、感謝の言葉を受け取り、兵達と共に労いの食事会が催され、侯爵からのお礼を受け取って解散だったのだが、何故か俺だけ、侯爵につかまった。
「リグスビー少尉殿、少しよろしいか?」
こう言ってきた50過ぎの男、人が良さそうな侯爵相手に嫌とは言えない。
「改めてお礼を。ケビンだけでなく、3人無事で助けて頂き、感謝を」
そう言いながら金の短髪な頭を、軽く下げるディクソン侯爵は緑の瞳は、意志の堅そうな印象を受ける。
「いえ、御子息が無事で何よりでした。我らも任務ゆえ、あのようにお礼まで頂き感謝しております」
と、かえす。
なにせ、兵1人につき、金貨一枚、俺には10枚もくれたのだから。
日本円に換算すると、5000万円くらいの出費だろうに。
「いえいえ、息子の命には変えられません」
(侯爵なのだから、もっと偉そうにしてもいいのに。こっちはただの軍人、しかもあのリグスビー家の三男に頭下げなくても良い身分なのだから。この人、人格者だなぁ)と思う。
「息子も無事、盗賊に金を毟られるという屈辱も回避、お礼が足りない気がするのだ。でだ、リグスビー殿、もう少し何か欲しい物とかないかね? 侯爵家で出来る事は、かなりあるぞ?」
(まだくれるの? いやいや軍務中だったし!)
で、何かあげる、いやいやと遠慮するを繰り返し、ようやく落ち着いたのが、
「では、リグスビー殿が何か困った事があれば、助けるという事で」
に、落ち着いたのだった。