さて、人の目処はたった。次は物だ。
とりあえず馬車が必要である。
パトリックは、馬車が必要な時は、軍からレンタルしていた。
早速発注する。
馬車と言えば馬も必要である。
馬が居るなら、厩舎も必要だ。
どんどんお金が飛んでいく。
元子爵邸なので、一応厩舎も有ったのだが、借金子爵だった為、老朽化した厩舎を直す費用は無かったらしく、かなりボロい。
取り壊して新築する。
次に屋敷を改築。
屋敷の方は、特に問題無かったのだが、1つ不満があった。
「広い風呂に浸かりたい」
前世の記憶が、ここでワガママを言った。
この世界、風呂桶というものが無かった。
平民は、濡れタオルで体を拭くだけ。
貴族や軍隊でようやくシャワー程度。
シャワーも、浴室まがいの部屋の天井に、穴の空いた桶が有り、そこからお湯が落ちてくる感じだ。
これでも魔道具で、水を溜めると、自動で冷水が温水になり、コックを操作する事で、水を出したり止めたりする物なのだが、パトリックには不満であった。
魔道具職人を屋敷に呼ぶ。
いわゆるドワーフ。
物作りに長けた種族である。
「で、ここをこういう風に、石で桶のデカイのを作って、お湯を溜めて浸かるように、こっちには、上からお湯が落ちるやつ、で、こっちに体を洗うようの場所を!」
パトリックの説明に、ドワーフの男が、
「お湯の中に浸かるのか? その発想は無かった」
と、何やら考え出した。
「これ、特許取ってる?」
と聞かれ、
「特許? そんなのあるの?」
と、聞き返す。
この世界、いわゆる神が存在する。
会ったことはないが。
で、知識の神が存在するらしい。あと、商業ギルドも。どうやらお酒の販売も、商業ギルドを通しているようで、マージンを取られているようだ。まあ、仕方ない。ただし、発案者の作った物を、発案者が直売する分には問題ないとの事。
神殿にて、知識の神に祈り、相応の金貨を納めると、特許を与えてくれるらしい。
特許のシステムは、地球と同じである。
良い事を聞いたと、パトリックはすぐに教会に赴く。
で、酒の作り方から蒸留器やなにやら、風呂の件、ついでにチェスまで申請する。
金貨20枚取られた。
が、また儲かる商品が増えた。
チェスは、王都で瞬く間に流行った。
元々、リバーシやトランプ、井戸の手押しポンプもこの世界に有った。
ただ、板状で戦争の様な戦いのゲームは無かった。
木工職人を雇って、ガンガン作らせた。
貴族様に、高級な石製の物も作った。
もちろん王にも献上した。
そして、お祝いとして、ディクソン侯爵家にも送った。
遊び方の説明書を付けて。