パトリックからの報告を聞き、謁見の間で王は頭を抱えていた。

「なあ、パトリックよ…」

「はい、陛下?」

「確かに攻撃許可を出したのはワシだ。それを利用してスタインのやつが、他の貴族を巻き込むだろうなとも思っていた。だがなぁ、この数おかしくないか?」

「たった20家ですが?」

「どこが ’たった‘ だ! 潰すなら一声かけろと言っただろうが!」

「いや陛下が、上手く凌げとおっしゃったから、向かって来るのは潰して良いのかと思いまして」

「お前、どんだけ嫌われてんの? なあ? 平民に落ちたスタインに唆されてホイホイ乗る貴族が20とか、嫌われ過ぎじゃない? お前何したの?」

「我が領地をコソコソ探っていた間者を始末しただけですが?」

「それでこんな嫌われるか?」

「あとは、間者を送ってきた貴族の領地には、我が領地産の酒は売らなかったり、チェスも売って無かったかな? そのせいで商人がその領地から離れたとか聞いたような気もしますが、些細な事ですし…」

「アホか! 商人消えたら領地運営出来んだろうが!」

「そんな事、私の知った事では無いので」

「潰された貴族が治めていた領地の運営は、王家がすることになるんだぞ? こっちの身になれ!」

「どうせ、新たに男爵でもボコボコ増やして任せるのでしょ?」

「それでもだ! ここ最近、お前がらみで何家消えたか知ってるか?」

「さて? とんと記憶に御座いません」

「約50だ! ほとんどは男爵だったが、子爵や伯爵、侯爵はまあ、うちも関係あるから仕方ないが、お前、兵士だけじゃなく、貴族からも死神呼ばわりされてるからな!」

「ええー!」

「ええーじゃないわい! はぁ、もういい! 帰れ、あ、ソナには会ってから帰れよ」

「はい、陛下。では失礼します」

パトリックが去った後、王は隣で困り顔の宰相に、

「なあ、どうするよこれ」

と、ぼやく。

「陛下、流石に貴族の数が減り過ぎです。直轄領の運営にも人が足りませんし、急ぎ前回の北部併合の件で、手柄が有る者に領地を任せるべきかと」

「だよなぁ。聞いたか? パトリックのやつ、毒まで使ったらしいぞ。どれだけ容赦無いんだよ」

「らしいですな、あの男らしいと言えばそうなのでしょうが、子供は奴隷としてですが、生かしたらしいので、そこはまだ温情があるのかと」

「あれ、うちの娘の嫁ぎ先って、頭痛くなってきた…」

「ソーナリス殿下に、婚約を解消するとか言えますか?」

「無理‼︎ ベタ惚れだから! そんなこと言ったら、パトリックが使った毒を手に入れて、俺の食事に盛りそうだもん!」

「では、諦めたほうがよろしいかと。上手くコントロールする手段を考えたほうが、建設的かと」

「コントロールできるのか? アレ」

「まあ、それはさておき、スネークス伯爵には旧ウェスティン領を任せて辺境伯にするのがよろしいかと。あそこの兵は精強ですので、帝国に対する戦力として申し分無いですし」

「アボットにも山岳地域を任せて北と西を守らせるか。あの2家は情報交換もスムーズだしなぁ」

「後は転封と爵位の変更で乗り切りますか。騎士爵、準男爵の男爵への変更の数にもよりますが」

「手柄のあった者のリストアップを急げ。このままだと治安の悪化もあり得る」

「直ちに!」