馬車に揺られるパトリック。

隣にはソーナリスも乗っていて、腕を組んで嬉しそうだ。

会話しながらパーティーを思い出すパトリック。

結婚パーティーは滞りなく終わったが、ヒッポー男爵が俺に深々と頭を下げて、

「スネークス辺境伯殿、今後は絶対に貴方に逆らう事はしませんので、少しでも良いので酒を流通させて貰えないでしょうか?」

と言われたから、考えておくと言ったんだけど、そんなにうちの酒気に入ったのかな? まあ逆らわないなら回してやってもいいかな。

で、今はウチの屋敷の完成披露パーティーを兼ねた、結婚式の二次会パーティーの会場である我が屋敷に移動中である。

王城から続く馬車の列に凄まじい護衛の数。

先頭の馬車が門前に到着すると、馬車の中からヴァンペルトが降りて、門を開けさせてる。

まあ、私は2番に居たので続いて入り、屋敷の前でパーティーに来てくれた人を出迎える訳だが。

まあ、改装中でもなんやかんや言われたが、初めて見る人からは、

「何これ?」

と、聞かれたのだが心外だ。屋敷だよ!

元の屋敷を中心に四方に扇状に建て増ししたのだが、上から見るとハザードマークの3つの扇のような物が4つになった感じだ。それぞれの建物には、高い棟が有り、そこで見張りの兵が常駐する。建物自体は、地球のリーズ城をイメージして作らせた。

「これ屋敷じゃ無くて、城じゃね?」

ウェインが細かい事を言ってるが無視だ無視!

さて、中央の本館から入ってもらうのだが、毎度の事ながら、ぴーちゃんの注意をクドイほどしたのは言うまでもない。

まあ、ウチと親しい家が多いし、1度以上見ている家は、充分理解していたので、特に問題無かったのだ。

ぴーちゃんに関しては!

玄関ホールに全員が入ると、スルスルとぴーちゃん登場!

皆がザワザワするのだが、ぴーちゃん見た事あるはずだよね?

「なあ、パット?」

ウェインが小さな声で聞く。

「ん?」

「あそこに飛んでるの…何?」

ウェインの視線の先には、2メートルほどの生き物が2匹。

「ん? ああ! プーと、ペーの事?」

「ぷーとぺーが何の事か分からんが、多分その事だ」

「ただのワイバーンだよ?」

「アホかっ!  ただのワイバーンだよ? じゃねーよっ! 周り見ろよ! ほぼ皆んな固まってるじゃねーか! 固まってるだけならいい方だ! 倒れてる人もいるじゃねーか! 先に説明しとけよ!」

「ごめん、忘れてた」

「普通忘れるか⁉︎ てか、なんでワイバーンが屋敷の中に居るんだよ! 有りえねえだろ!」

「ん? ウェイン君よ、俺の特技って何か覚えてるか?」

「存在感が薄い事!」

「他には?」

「ドSな訓練する事!」

「納得いかないが、他には?」

「残虐な事!」

「それもイマイチ納得いかないが、他には?」

「ん? まだあったか?」

「お前、ぴーちゃんの存在忘れてないか?」

「あ! 魔物使い!」

「それ。いやさぁ、この間の軍事行進の時に倒したワイバーンいただろ?」

「ああ、あの5匹な…」

「アレ解体してた奴らが、ワイバーンの腹の中に卵を2つ見つけてな」

「ちょっと待て、まさか…」

「本当は食べようと思って持って帰ったんだよ。そしたらぴーちゃんに取られてな、そのまま温め出しちゃったんだよ」

「取られるっておまえ…」

「だって卵割ろうとしたら、凄い勢いで来てさ、あっという間に持っていったんだよ。手も無いのに器用に体使ってさ」

「で、孵ったのか…」

「うん、たった10日で」

「早くないか?」

「俺もそう思う。でだ、孵化する直前にぴーちゃんに呼ばれてな。見てたら殻が割れて中から顔出してさぁ。最初に見た俺を親だと思ったらしくて懐かれてさぁ」

「頭痛くなってきた…」

「餌やったらどんどんデカくなってよ。今じゃあの通りさ」

「うん、理由は分かった。だがな? 皆が正気に戻ってきて騒ぎ出したわけだが、この状況どうするつもりだ?」

「えっと、どうしよう?」

「知るか!」